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自分を認識しようと思う

作者: 座敷 紅音

青空。雲ひとつない晴天。ふわっと体が浮く感覚。離れていく空に近づいてくる地面。

嗚呼、私は落ちているんだ。


ドサッ


「はぁっ、はぁっ、はぁ〜…」

なんだ、夢か。いつの間にか校庭で眠ってたなんて。

屋上から飛び降りる夢とか最悪じゃん。

死んだかと思ったー。

もう昼休み終わっちゃう。教室戻らないと。

……虐められてるから、戻りたくないな…。

私は憂鬱な気分で階段を上がり、教室に入った。

私の机の上には花瓶に入ったユリの花が飾られていた。

まただ。もう慣れた。毎日毎日、教科書もノートも隠されて、毎日花を飾られている。昨日は…なんだっけ?確か菊?覚えられないくらい毎日花を置かれていた。

先生も何も注意しない。

教科書もノートもないので授業も受けられない。授業中、私はいつも窓から見える外の景色を見ている。

体育…楽しそう。私は先生にも認識されてないから体育を受けようと思っても全員に無視されて受けることが出来ない。

ある意味、今日見た夢は現実なのかもしれない。いや、実は夢の世界が現実で、この世界は夢なのかもしれない。

ありえない話だけど。


キーンコーンカーンコーン……


やっと授業が終わって放課後だ。家に帰って眠りたい。疲れた。毎日生きていくことに。


家に着いても、親から無視される。前まで優しかったのに。なんでだろう。なにか、私はしただろうか。

覚えてない。

そう、覚えていない。私は最近、記憶が曖昧だ。小さい頃のことなんて全く思い出せない。最近のことも思い出せない。

虐められた理由も、家族から無視される理由も。なんでって思うだけで原因が分からない。思い出せない。

私は、部屋のベッドで泥のように眠った。お腹も空かない。喉も乾かない。親は私に何も作ってくれないし、空腹にならないのは嬉しいけど、生きているのかわからなくなる。嗚呼、嫌だ。

こんなに生きている感覚がないのに、眠るなんて。本当に死んでるみたい。


私は、2時間ほどで目を覚ました。リビングにおりると、お母さんとお父さんが泣いていた。

なんで泣くの?泣きたいのは無視されてるこっちなんだけど。苛つく。


また部屋に戻り、朝まで眠った。


「…ん……もう朝か…」

眠ったはずなのに眠った気がしない。

毎日無視され、もう生きているのかもわからない。こんなことなら死んだ方がましだ。


登校。もう、死にたい。きっと、また花が置かているんだろう。

そう思いながら教室に入った。

今日もユリだった。

もう、いいや。

私はその花瓶をもって床に投げつけようとした。

でも、しなかった。

正確には、出来なかった。

私は花瓶を掴むことが出来なかった。


「…っ!なんで!!」


私は叫んだ。でも、その声は誰にも届いていなかった。

クラスメイトの方を叩こうと思っても、手が通り抜ける。

実態がないのだ、私という存在は。

怖くなり、家に急いで戻った。

お母さんがまた泣いていた。

いつもは苛ついてなんで泣いているのかも、泣き声も聞かないようにしていた。

でも今日は嫌な予感がして、泣き声を聞いた。


「なっ、なんで、なんであの子は自殺なんてしたの……なんであの子が死ななきゃいけっない…の……」


お母さんはそう言いながら泣いていた。

嗚呼、あの夢は現実で、私は自殺したんだ。

そっか。死ねたんだ。

幽霊として、生きているけど。

私は死んだんだ。死ぬことが出来たんだ。

あれ…私、自分の名前が思い出せない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いじめられている人の心境がすごく リアルに描かれていて、 優しくて聡明な人柄を感じました(^^♪ [一言] 僕の小説も感想くださいね。
2019/08/16 14:38 退会済み
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