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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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45.迷宮探索後


予定の時間まで鉱石掘りをして地上に戻ると、まだ空は明るいがぽつぽつと道端には明かりが灯り始めている。

管理室を訪ねると、職員さんが待っていたように自分達の方へ歩いてくる。

「鉱石持ってきましたー」

「おう、成果はどんなもんだ?」

「思ってたよりも採れたわ。種類と数は皆で確認してるから、この内容で報酬お願いしまーす」

イルミアは各石の名前と数を記載した紙を管理室の職員さんへ渡した。


戻る前に皆で石の選り分け等々を行ったのだ。人数がいれば案外早く終わる。迷宮に自分達以外の人がいないので地面いっぱいに石を広げても通行の妨げにならないのは良い事だと思った。

「借りてた道具もお返しします」

「ああ。どれどれ……特に破損なんかもなさそうだな、うん」

借用した道具は故意の破損があると修理代を支払わないといけないらしい。まあ、普通の使い方さえしていればそれも発生しないと思うが。

「じゃあこの内容で報酬を渡しておくな。もし相違があれば修正請求をするからよろしく」

「はーい」

「分かりました」

ファイもイルミアも慣れているみたいで、つつがなく手続きは終わり報酬が渡された。一旦それをイルミアが受け取って、そのまま自分達はその足で討伐者組合へ向かう。


管理室近くの空き地に待機してもらっていたルスタはやっと来たかと言うようにゆっくり自分の方へ歩いてきた。ゼーレはぶつかる勢いで飛んできた、というか普通に顔面に体がぶつかった。痛い。それを見ていたイルミアがよっぽど待ちきれなかったのねと大笑いしていた。くちばしが刺さらなくて良かった。



組合でも同様に終了の報告と、管理室での手続き完了の旨を伝えた。受付の職員さんの方でも明日朝に確認して何もなければ終了し、採取物に関しては依頼がきている分へ振り分けて納品をするらしい。鉱石については薬草同様に常に依頼がきていると。

「ま、おおよそいつもの通りなのニャ」

「そうだな」

二人にしてみると常にやっている事の様で、やはりこちらもつつがなく終了した。



自分はそのままギルドからイルミアと、昨日依頼をした店へ向かう。リツ兄はファイのお父さんの店へ依頼品の状況を確認しに、後は食事をする店を見繕って席を予約しに行ってくれた。ついでに少し買い物をするとソウ兄が言っていた。

「よーし。四人もいるし今日は飲むわよ~」

「イルミアお酒好きなの?」

「結構好きね。ファイも強いから二人の時はよく仕事終わりに飲んでるの」

アヴィとディルは逆にあまり飲まないので、四人で食事する時は控えめか飲まないらしい。アヴィは特に食べるのが好きみたいだしなあ。



店を訪ねると待っていた様に細工師さんが依頼品片手に来てくれる。

「やあ、完成したよ。着けてみて感想を聞かせて欲しい」

「分かりました」

感想聞けるかな、と思いながら上着のフードに潜むゼーレに声を掛け、テーブルに乗ってもらった。中央に小さな魔石飾りのついた細い首輪を着け飛んでもらう。特に支障はなさそうだ。細工師さんもうんうんと満足気に頷いている。自信作らしい。

「ゼーレ、どう?」

聞くと機嫌良さそうに鳴いているので気に入った様だ。

「大丈夫みたいです。ありがとうございます」

「こちらこそ。色々勉強になったよ」

使用した金属が思ったより少なかったのと、魔石を提供した事でほぼ作業費である金額を払う。ルスタの鞍一式とは比べるまでもなく安価になった。大きさも全然違うしな。


「そうそう、それで少し相談なんだけど」

「はい」

「君が魔力を込めた空の魔石を少しでもいいから融通してもらえないかい?」

「え? 何でまたそんな物を」

クレイースさんがくれた空の魔石のいくつかに、魔力は込めているので渡す事は出来る。ただ、宝石同様の価値のある物ではないからどうするべきか判断に迷う。

「宝石代わりに使う為かしら?」

「そうそう。赤の宝石は高価だけど空の魔石に赤の魔力を込めた物なら多少値を落とせるから」

「んー。それは込めた魔力分の対価も見積もってくれるの?」

「もちろん! なかなかそういう人はいないから、青の魔力の倍位って曖昧な換算になっちゃうけど」

「ですってよ」

代わりに聞いてくれたイルミアが自分の方を向く。細工師さんも簡単に手書きした見積もりをすぐに見せてくれた。

「魔力って労働力と同義なんですね」

「そりゃそうだよ。それに魔力の質って才能の分野になっちゃうしね、大事にすると良いよ」

「はい」

それから細工師さんと譲る個数と価格を少し交渉して、数枚の金貨を受け取った。

「もしゼーレちゃんの首輪に何かあったら、私かファイを通してくれたらお店に伝えるわよ」

「手直しとかあればすぐやるので遠慮なくお願いしますね~。あと魔石の取引も歓迎するから!」

地元民のイルミアかファイが対応してくれるなら頼もしい。魔石も二人経由で渡しても良いし、思わぬ需要を得たなと思う。



首輪の受け取りが終わり、待ち合わせ場所に指定してもらった広場に向かう。

「アキって将来安泰よね」

「そう?」

「薬師もやってるし、魔力だって量も質もあるでしょう? 戦闘魔法使いなら臨時で入ってもらうにも重宝されると思うし。一人でも十分やってけるわね」

「そうかなあ……」

薬師としてはまだ半人前以下だと思うけど、薬草や薬の納品実績はそれなりに評価してもらっている。今は上級の薬学知識を買った本で勉強しているところだ。本は安くはないけど手が出ない程高くもなく、自分の得た報酬の中で事足りる範囲だ。


しかし一人でやっていけると言われても、兄達と離れるつもりが今のところ頭に無かった。いずれ生活基盤が整い、互いの結婚相手がどうこうというレベルの話が出れば別々に生活するかもしれないが。

「四人も色々事情ありきで来てるもんねえ。私としては折角仲良くなったからそのまま住んで欲しいけど。宿代わりにするからニャー」

「アハハ、俺も友達が出来て嬉しいよ」


広場には既にリツ兄も来ていて、少し遅れてファイが来てくれた。

「二人には店で待ってもらってる」

「それならさっさと行きましょ! お酒おさけ~」

「シュウが先に何か食ってそうだ」

「いや……流石に大丈夫だと思うけど」

我が兄ながら自信がない。ソウ兄もいるので多分止めてくれてるだろう。

イルミアは上機嫌にファイの腕を取って歩き始めた。ほぼ引っ張られる形になっているファイはいつもの事なのかそのままイルミアに店の名前を伝えていた。

「リツ兄、剣はどうだった?」

「ああ。良い出来だった。宿戻ってから見せてやるよ」

「うん」

店に伺ったら、依頼の剣は完成していたそうで、既に細かなやり取りも終えて引き取ったとの事。リツ兄は満足そうな顔をしているので気に入ったのだろう。




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