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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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44.迷宮と鉱石



武器の試験使用を手伝ったりした次の日。

朝食にどうぞとファイのお母さんから渡されていた料理を食べて、宿として借りた家の簡単な掃除をし、待ち合わせ場所の広場へと向かう。

リズルは晩に何故かまた来てくれて今後の予定だとか他愛ない話をしたのだけど、終始珍しく難しい顔をしていた。なんだったんだろう。


庭のルスタに声を掛けると、いつでも良いとばかりに近付いてくる。促すと勝手に門を通って兄達の方へ歩いて行った。自分も庭の確認をしてルスタの後ろを歩く。

本通りに出ると既に人の行き来がそれなりにあった。職人さんは朝が早いからか昨日の昼市程ではないが賑やかだ。


「おはよう。こっちこっち」

広場に着くとファイとイルミアは既に合流していて、こちらに手を振ってきた。

「迷宮ってどこにあるんだ?」

「西門の方だ。昼飯買ってから向かおう」

「おー」

既にあちこち並んでいる屋台へ各々足を運ぶ。自分は肉と野菜の炒め物と炒り卵を木組みの容器に詰めてもらった。買うと一緒についてくる丸いパンも別途袋に入っている。挟んで食べても美味しいよ、と屋台の人が教えてくれた。後は少し干し果物を買い足した。



西門をくぐり、迷宮の管理室に届けを出す。迷宮の入り口は簡素だがしっかりとした木の門で閉ざされている。表層は潜った事のある迷宮とあまり変わらず薄暗い洞窟に似ていた。

「ファイ、聞きたい事があるんだけど」

「なんだ?」

「どうして俺達は道具を借りたの?」

管理室の職員さんは、持ってないならと何故かつるはしを貸してくれた。丁寧に整備がされていて新品の様に艶のある道具だ。

「迷宮内を見れば分かる」

「見たら此処の迷宮があってこの町があるのが分かるニャ」


表層から迷宮内へ潜った瞬間、眼前に広がるのは黒みがかった岩肌と空。地面は均された土と時々色の付いた岩が突出している。

「これを掘れってか」

「その通り! この迷宮って色んな鉱物が採れるのよ~」

「それを組合に買い取ってもらって加工された鋳塊が職人に渡るって流れだ」

「はぁ~なるほどー」

シュウ兄は話を聞きながら近くの岩につるはしを打ち込んでいる。ほどなくして塊が岩から離れて落ちてきた。

「俺達にはどれを持ち帰ったらいいか分からないよ?」

「掘ってたら持ち帰れる鉱石だけが残る。よく分からんがそういう仕組みだ」

「訳分かんねえな」

傍から聞いていてもあまり理解できないけど、どうも岩肌から掘った岩はほっとくと鉱石のみになっているのでとにかく掘ればいい、らしい。種類とかどうなっているのか聞いてみると階層により出て来る鉱石が少しずつ変わるので必要な鉱石の掘れる階層へ行くとの事。


「不足している鉱石が採れる階層が一番下なんだ。だから一旦最下層を目指す」

「分かった。先導任せるよ」

「魔物は出るから適当にあしらってね!」

一応魔物も出現するらしい。虫型やスライムが多いそう。飛んできたりする虫型はともかく鈍足なスライムは無視してもよさそうだ。

「アキは背負って行こうかな」

「よろしく……」

いつもの事ながら少し申し訳なくなるなあ。



特に難所という難所も無く、辿り着いたのは五階層。普通ならキャンプ地である階層は今までの階層と変わらない岩肌と均された地面がある。

「帰還装置って奥にあるの?」

「ああ。一番奥に小部屋がある」

「五階層が最下層の迷宮は全部こんな感じなのよ。二階層や三階層程度の浅い迷宮も案外多いし」

どうも滞在していた街を基準にしがちなんだけど、何十階層もある迷宮は割合としてはそんなに多くない様だ。比較的都市部に隣接する迷宮に多いらしく、小さな町では魔物の出現もほとんどなく、戦闘技能のない一般市民でも気軽に入れる程度の迷宮さえあるという。

「町の観光がてらに迷宮回ってみるのも面白いわよ~」

「観光かあ」

危険度の低い迷宮ならそれも楽しいのかもしれない。


「じゃあ掘るか」

「よーしやるぞ~」

皆はつるはしを持って適当に散らばる。自分はというと、実は道具がない。

「俺どうしたらいいの……?」

「アキなら魔法で掘れるんじゃないかとおもったのニャ」

「あ、そういう事」

「魔法だと掘れる範囲が分からないから何も言えないが……適宜距離を取った方が良いとは思うぞ」

「分かった」

とりあえず少し離れておいた方がよさそうなので、奥の方へ歩いて距離を取った。


岩肌に手を当てて掘る、というより崩すイメージで魔力を向けると、奥から割れる音がする。急いで岩肌から離れると岩がぼろぼろと落ちてきた。崩落に巻き込まれる可能性が頭を過ったので、掘る岩から距離を取った方が危なくないかも。

ふと、地面から突出している岩を見やる。これも鉱石が採れるのかな、と同じ様に魔力を向けると簡単に砕けた。散らばる岩の中には透明な石がちらほらと混ざっている。

「もしかしてこれ、空の魔石かな」

「珍しい物見つけたのね」

「ちょっと興味本位で生えてる岩壊したら出てきたよ」

「私もたまに掘るの飽きたら壊すわ。本当に時々だけど小さい宝石とか出て来るから」

大抵は何も出ないか、出ても鉱石くらいだけど、と付け加えてイルミアはまた採掘に戻って行った。


自分も少し離れた場所で岩肌を壊す作業に戻る。範囲とか深度とかを掴みつつ夢中になってやっていたら目の前には随分色んな鉱石が落ちていた。

これ全部拾わないといけないんだっけ。拾う作業に移行した方がよさそうだな、と鞄に拾った鉱石を入れようとしているとソウ兄が来てくれた。手に袋を持っていたのでそれに入れる為の様。

「随分採ったね」

「色々考えて試してたらいつの間にかこんなになっちゃって」

「手伝おうか」

「うん、ありがとう」

落ちている鉱石は見慣れた灰色や黒色の石や、赤銅色、白色、緑色をした物など案外様々な色の石がある。どれがどういう金属になるのか想像出来ないが多分全部加工されるんだろう。

「腹減ったな~。アキくんいっぱい掘ってんじゃん」

「気づいたら……」

「手伝うー。拾い終わったら飯にしよ~」

空腹を訴えつつシュウ兄も拾うのを手伝ってくれた。合間に時計を見ると昼をとっくに過ぎている。


「予想外に採ったんだな」

「アキ流石ねえ」

二人からも呆れと感心半々でそう言われてしまった。自分のせいで予定より早く切り上げられるかも、との事。

「どういう風に掘ったんだ?」

「最初は岩に手を当てて崩そうとして、巻き込まれるのが怖いから後は離れて掘ってた」

「なーんにも分かんないわ」

「魔法使いの話は興味深いが理解はし難いな」

「そう……」

これは自分の説明が下手くそなのもあるかもしれない。感覚的に行っている自覚はあるけど。

「とりあえずお昼ニャ。食べながら次の予定考えましょう」

「だな」

各々が買った昼食を鞄から出す。自分も買った炒め物を口に入れる。香辛料が少し使われているのかピリッとした辛さが後を引く。炒り卵は薄めの味付けで、合わせて食べるのが良いなと思う。店の人に言われた通りに丸いパンにナイフで切り込みを入れて料理を挟んで頬張る。少し水気も含んでいたがそれをパンが吸い込んでくれている。案外あっさりとしていて食べやすい。

「どうしようかニャー」

「夕方までに上がる事しか考えてなかったもんな」

「……採掘に制限がないなら予定時間まで掘っててもいいんじゃない?」

「制限なんてないわよー。だって迷宮だもの。正直際限がないわ」

確かに迷宮の岩肌は大分堀った気がしている割に目減りした様子が全くない。常に復元がなされていると考えるべきか。

「割と面白いしな」

「俺こういう作業結構好きー」

「四人がいいなら続けるか」

「そうね」

自分ももう少し魔法を試したいので頷いた。


それから夕方戻る予定の時間まで採掘に励んだのだった。

自分はひたすら魔法を使っていたので少し何かつかめた様な気がする。するだけかもしれないが。



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