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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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41.昼市



昼市の開かれている中央通りには、食材や食事よりも細工物や装身具、武器や防具類を並べたテントが多い。それもそのはずで、この町の生業は主に様々な細工物と鍛冶なのだという。アヴィとディルの住んでいる町とはまたガラリと変わった産業だ。

「ファイの家もそういえば鍛冶屋って言ってたね」

「ああ。でもうちは昼市にはほとんど出てないな」

「そうなんだ」

「ああ。店を出さずに個人的に細工物を作って出している人も多いからこういう物もあるのかって発見もあって面白いぞ」

「昼市なんて町の人は呼んでるけど、開催するの月に一度なのよ」

「へぇー」

という事は良いタイミングで町に来れた様だ。二人と話を続けつつも露店のテントの商品を見て回る。

武器や日用品の刃物類も多いが装身具、細工物も多い。細工物は後から服や武器、鞄等に着ける物で、素材も金属や布など種類に富んでいる。花を乾かして加工したものもあった。


途中途中に食べ物の屋台も挟まれているのでいつの間にか買って頬張っているシュウ兄から一口分けてもらったりした。芋を蒸して塩を振っただけの物とか、肉を一口大に切って揚げた物だとか、果物を蜜糖に絡めた物等々もらっていたらお腹いっぱいになってきた。

「食い過ぎだろ」

「だってーお腹空いたしー」

「よく入るわねえシュウのお腹」

イルミアは感心している様な呆れている様な顔をしている。


ふと横を見ると、行きがけに見た奴だろう風の精霊がひとつの露店の前にふわふわ浮かんでいる。それ以外に水の精霊が一体同じ様に浮かんでいた。思わずジッと見ているとリツ兄から軽く小突かれる。

「どうかしたか?」

「ごめん、ちょっと商品が気になって」

ファイに聞かれすかさずそう答えた。まさか精霊がいたので見てましたとか言えない。

「四人共気になる物あるなら自由に見ていいのよ? ここを抜けた先に広場があるからそこで待ち合わせましょ」

「分かった」

イルミアとファイは少し食事をとってくる、と広場の方面へ抜けて行ってしまった。


「アレ確認してくか」

「うん」

「そしたら俺はシュウ見ながら気になる所見て来るよ」

「じゃあ後でな」

相変わらず屋台で何かを注文しては食べているシュウ兄を後目に、自分は精霊の浮かんでいる露店へ近付く。精霊達も自分に気が付いて手を振ってくる。

「いらっしゃい! 装身具に興味あるんですか?」

露店を開いているのは比較的自分達と年の近そうな女性だった。

「少し気になって。職人さんなんですか?」

「ううん、手習いの趣味事で少しやってるんです。この腕輪とか自信作ですね!」

「そうなんですか。職人さんの作った商品に見えます」

見せてくれたネックレスは綺麗な銀細工の飾り枠に小さな宝石が埋め込んであった。聞くといわゆるイミテーションで、比較的安価で手に取りやすい物を作っているそうだ。


「これは、どういう物なんですか?」

本題の精霊達が気にしている物を手に取らせてもらう。腕輪の様で、金属でできている割にとても軽く、一ヶ所に少し大きめの乳白色の石が埋め込まれ、周りに小さい青緑色の石がいくつか埋め込まれている。

「ああ、それね。真ん中の石って地味ですけど……それをどうしても中央に配置したくって」

「落ち着いていて良いと思いますよ」

「そうですか? 個人的には気に入ってるんですよ~」

精霊達は腕輪の乳白色の石にこれこれ、というように指を差してくる。


「この石はどうしたんですか?」

「これ、前に討伐の仕事で神獣様の森に行った時に拾ったんです」

「えっ」

この女性は討伐者らしい。なんでも、道中に落ちていたこの石が気になって拾って帰り、丸く加工した後折角なので装身具にしてみたのだと。

「ちなみにこれはおいくらですか?」

「それなら銀貨三枚と銅貨八枚ですね。着けるなら腕回りに合うように調整しておきますよ」

「ありがとうございます」

とりあえず精霊の事も気になるし、思いの外安価なので引き取る事にした。リツ兄が絶対何かあるからリズルに聞いとけ、と耳打ちしてくれた。あの森で拾ったなら神獣というあの猫の風体の眷属か、それこそリズルに何か関係のありそうなものだ。


自分の腕に合う様に腕輪を調整してくれた女性にお礼を言って露店を離れる。

「リツ兄も新しいピアス買ったらいいのに」

「別に洒落なくてもいいだろ……」

「そうかもしれないけど」

リツ兄は折角ピアス穴を開けているのにあまり自分の身に着ける物に頓着がないというか、少々ズボラですらある。似合うのにもったいないと弟目線では思っている。

「下手に捕まったら長そうだしな」

「確かに」

リツ兄ならお店の人にあれもこれもと色々勧められそうだなあ。



腕輪を買って以降は歩きながら色々な商品を遠目にみる程度で、後は少し屋台の料理をリツ兄と食べて広場に向かう形になった。一件だけ、日用品の刃物を取り扱っている露店のナイフを買ったくらいだ。

広場は小さいが凝った造りの噴水があり、それを囲うようにベンチが設置されている。空いたベンチに腰掛けて周りを見渡すが、イルミアとファイはまだ来ていない様子。

「兄貴達ももう少ししたら来るだろ」

「うん」

ルスタは通行人の邪魔にならない程度に自分達の方に体を寄せてキョロキョロしている。ゼーレはというと自分の移動が落ち着いたのでフードから出て来て今は膝に居座っている。近くに置いていた手を軽く食むので、撫でて欲しいのかと思い指先で頭を撫でてやると気持ち良いのかちょっと平たくなっていった。面白い。


「ゼーレに着けられる首輪とかないかなあ」

「それも特注になるんじゃねえか?」

リツ兄は借家を出る時に作って食べていなかったパンを頬張りながらそう言う。確かに小鳥用の首輪なんてそもそも既製品にはなさそうだ。

「にしてもまたいきなりだな。なんでだ?」

「ルスタは鞍とか手綱着けてるけど、ゼーレにもあった方がいいかなって」

ゼーレも一応魔物だし、ルスタ同様主がいるという証があった方が分かりやすいし周りも安心するかと思ったからだ。ゼーレは小さくて存在を認識されにくいが、色々もしもを考えるべきとも思う。

「どっかの奴が捕まえようとしないとも限らないしな」

そういう不安も少々ある。大きいしそれなりに抵抗も出来そうなルスタはともかく、ゼーレは魔法は使えてもとにかく小さいし。


「リツとアキはもう来てたのか。何か良い物はあったか?」

「ファイ。腕輪をちょっとね」

自分達に気付いて来てくれたファイに向かって着けた腕輪を見せると興味深げに眺めていた。ついでにと、ゼーレの首輪の事も相談すると、

「親父なら腕のいい職人知ってるだろうから聞いておく」

と返ってきた。

「ありがとう」

「既製品から加工する形もとれるかもしれないしな。指輪とか」

「なるほど……」

そういえばイルミアはどうしたのかと聞こうとしたら、ギルドの方へ少し用を足しに行ってもうすぐ戻って来るとの事。

「用事? 何か依頼でも受けに行ったのか?」

「いや、四人が明日一日時間とれる様だから迷宮の探索申請に行った」

「この町、迷宮があるの?」

「ああ。ひとつだけだがな。深度も浅いから昼から潜っても夜には戻れる。いいだろう? 俺達も用があるんだ」

「うーん、俺は良いと思うけど……」

全員の意見をすり合わせないと、独断で返事は自分もリツ兄も出来ない。


「はぁい、戻ったわよ~。あとソウとシュウも拾ってきたニャ」

「拾われたぞ~」

迷宮の事を少し聞いていたら三人も合流した。ソウ兄とシュウ兄も迷宮探索の話はイルミアから道すがら聞いたようで、まあ一日くらい良いのでは、という結論になった。

「じゃあ決まり決まり! 今日中に済ませられる用事は済ませてしまいましょ」

「それならウチに行こう。アキがゼーレの首輪を作りたいと言うし」

「あら、そうなのね。確かにお義父さんなら伝手ありそうニャ」

そんな話をしながら二人に目線を向けられたゼーレはというと、膝にしっかりしがみついている。自分の迷宮行きをとても渋っている様子。


「また嫌がってるの?」

「うん……」

「ゼーレちゃんは主人の魔力が感じられないと嫌な魔物なのねきっと」

「魔物も性格や個体差があるからなあ」

自分はよく知らないが、魔物にも色んなタイプがいるらしい。ルスタとゼーレを見ていても全然性格というか自分との距離感が違うのは分かっていたけど。

「アキの行動を制限するのは感心しないな。俺達もそれが仕事で、生活のためなんだから。四六時中くっついていたいと思っていても、こういう時位は我慢しなさい」

ソウ兄が諭すようにゼーレに話すと、ちょっと弱弱しく鳴いてしがみつくのをやめてくれた。

「そこアキが叱るところじゃないのか?」

「アキはもっと主人として強く出るニャー」

自分も二人に叱られた。それもそうだ。



腕輪の話は次回に!

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