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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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38.調査依頼Ⅱ

もう一方の様子というか雑談風景になってしまった。ソウさんの視点でお送りします。



二手に分かれた調査依頼は順調といえば順調で、特に今回っている場所は魔物どころか野生動物の気配も無い。

「俺とディルは別々になってた方が良かったんじゃない?」

「いや、いいんだこれで。こっち側の方が小型の魔物の出現が多いからさ」

ギルドから月に二度程度出されるこの森の調査依頼での統計では今来ている方面に比較的出現率が高いと出ているらしい。小型であれば接近するよりも遠くから矢を射つ方が良いと判断された様だ。

小型の魔物で多いのはウサギ、狼だ。狼は中型の分類ではと最初は思っていたが、魔物に変質する場合元の動物よりも小柄になる場合もあって、狼に関しては小型と中型両方に魔物の分類があるらしい。


「それにアキは戦闘魔法使えるんだからなんかあっても大丈夫だろ」

「ああ……まあね」

「アキくんなんか加減が下手くそだからー」

講習でも亜人を軽々串刺しにしてしまったり、先日の試験じゃ魔物を真っ二つにしたと聞いている。威力があって損はないのかもしれないが。

「ふぅん。ソウはあんまり使って欲しくなさそうな顔してるけど」

「そうだね。命を取る手段として使わせるのは躊躇うなあ」

「なんで?」

「俺達は随分戦線出て慣れちゃったけど、アキくんて元々いたとこでも非戦闘員だったし。離れてからそういう仕事させるのやだなーって多分兄ちゃんは思ってる」

「シュウは?」

「アキくんの好きにしたらいいと思う!」

「ハハハ、放任主義」

二人はそんなやり取りをして笑っているが、先にシュウが言った通りアキは元々雑事をこなしていた非戦闘員だった。敵味方問わずに死ぬ様な場所にいたから人が死ぬ場面は嫌という程見ていただろうが、実際に手を下す事は全くした事がない。身を守る手段としては良いと思うし、生物的概念の薄い迷宮ならともかく地上では出来るだけそういう行為から遠ざけてやりたいと思う。我ながら難儀な考えだと思うが。


「まあアキは薬師もやってるみたいだし、そっちで生計も立てられんじゃないか?」

「そうだな……」

「魔物もいるし。でももっと護衛っぽいのいるといいよな」

「なんか強そうなやつ?」

「アキが増やすつもりなさそうだけどね」

足代わりにと捕獲したルスタはともかく、ゼーレは怪我をしていたのを保護したら居着いてしまったし。アキ本人が欲している風でもないので望み薄だ。というか一人で遠出する事もそうそうない。

「ルスタ生捕りにするくらいなんだから捕まえようと思えば捕まえられんじゃないの? ソウ達なら」

「余程危険な魔物じゃなければ」

「そうやって言いきっちゃうんだからなあ」

ディルは少し呆れた様な表情で自分を見ていた。


「お、あっちの方なんかいる~」

シュウが指差す方向をしばらく見ていると、小型の狼の魔物が数匹確認できた。小さな群れの様だ。

「やるか」

ディルが弓を構える横で自分も矢を準備する。少し近付いてきた魔物の一頭を討ち抜き、すかさず隣の魔物へも矢を放つ。ディルも一頭を仕留めてすぐ矢をつがえて射っていた。シュウはいつの間にか木の上を伝い逃げる魔物が出ないか確認していた。逃げる個体がいれば後を追える様にしている。

「よっしゃ終わり」

「ディルの弓の腕は流石としか言いようがないな」

「すげーよな」

手放しで褒めるとディルはそれほどでもある、と言いながら頬を掻く。

魔物は倒したもの全てを回収する決まりなので、支給された袋の口を開け地面に置いてそれぞれ回収作業を始める。回収を終えれば後は同じく支給された浄化用の水を血の染みた地面に掛けて最後に自分達の手を洗えば完了だ。


「弓ならさあ、ソウだっていい腕してんじゃん。それ使いこなしてるし」

仕事が一旦ひと段落したので小休憩とし、再び先程の話題へ戻る。

「こっちの弓は使わないのか?」

「んー。新型出たのってここ数年だしな。その時はもう今の弓を握って三年は経ってたから今更転換するのもなって。でも練習はしてるぜ」

自分の弓を手渡すとそつなく矢を射る動作をしてみせてくれた。形状も使い方も全く違う物をいちから覚えなおして同じ熟練度にするのはさぞ大変だろう。

「正直今の弓の方が飛距離がある。でも連射性能を考えたらこっちの新型の方が余程いい。だからホントは両方使えるのが理想だな」

従来の弓は射手の筋力等にも左右されるとは言え対象を射れる距離が新型よりも長い。仕組み上なのかまだ発展途上なせいもあるのか新型の弓は射る距離は劣ってしまう。その代わり連射性には優れていて、使い方もそう難しくないので弓を始めるならこちらの方がとっつきやすいと思う。


「色々考えてんなー」

「将来自分の跡継ぐかもしんねー子供に教えられる位の練度はないと恥ずかしいじゃん」

「そんな予定があるのか?」

聞くとディルは少しばつが悪そうにしながら答えてくれた。

「一応……婚約してるんだよな。元々幼馴染でさ、自警団でも一緒に活動してんだ」

「へぇ」

「折角だし町戻ったら紹介するぜ。アヴィとも仲良いしな」

二人とはそもそも旧知の仲の女性らしい。普段自警団の活動以外では、実家の牧場経営を手伝っているとか。

「その子は討伐者の資格取らなかったんだ」

「資格取ると依頼の請負っていう別の仕事発生するからな。牧場の手伝いと自警団と討伐の仕事はこなせないってすっぱり諦めてた」

「両立どころじゃないな~」

自警団は町中や門の外のの見回りや森の浅い場所の見回りが日課らしいし、討伐者は基本依頼を受け森や必要なら迷宮へ行かないといけない。その両立もそれなりに大変だろうけど、ここに畑違いの仕事まで入れたら体は持たないだろう。

「ソウ達って討伐以外に何か仕事考えたりしねえの?」

「うーん……定住も曖昧なのに他の仕事まで考える余裕が無いだけで、他にやれそうなものがあればそれもいいと思ってるよ」

「働いた後の飯がうまかったらなんでもいいや~」

「シュウらしい」

実際手に職を持つ事に憧れが無いわけでもない。ただ職人になるのはもっと若い時期に弟子入りなりをして修業するものだろうから望めないけども。

「兄ちゃんならなんでも出来るんじゃない?俺と違ってさ~」

シュウはそう楽観的な物言いをして、いつもの様に笑っている。


「っと。雑談に花咲かせてる場合じゃねえな……」

「つい横道に逸れちゃったな。次に行こうか」

「あっちの組と合流したら依頼終わりだもんな。腹減ったな~」

回る地点はあとひとつかふたつだったと思う。周囲を確認しながらまた二人と魔物がいないかの調査依頼の遂行へ向かった。





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