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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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37.調査依頼

アヴィの家に泊めてもらった翌日。

自分は朝食前に教会へ足を運んでいた。ルスタの散歩も兼ねている。リツ兄とシュウ兄は一足先に町中か町の周辺を走りに行ったようだった。ソウ兄はちょっと様子を窺ったけど起きそうになかったのでそっとしておいた。


教会前を掃除している神職者の男性に挨拶をし、中へ案内してもらう。礼拝のための部屋は規模こそ小さいがこちらも街の教会と大きく変わりはしない。窓はステンドグラスではなく普通の窓だったけど。

『アキ殿、朝お早いですね』

「時間取れそうなのがこの時間帯だったからね」

ぼんやり部屋を見渡していたらリズルが来ていた。光の差し込む窓の近くにいたからいつになく神々しい。いや本当の神なんだけど。

「教会ってどこも同じ造りなんだな」

昨日伺った討伐者ギルドもだったけど、決まりがあるんだろうか。

『装飾が華美な教会は確かに無いですね。清貧、とでも言うんでしょうか。でも時々やりすぎない程度に内装にこだわっている教会もありますよ』

「へぇ」

規則の中で教会長や神職者が好きな様に飾っている感じか。というかリズルは大陸内の教会を全部見てるんだろうか。素朴な疑問を抱えつつリズルと別れて戻る事にした。


アヴィの家に戻ると奥から声が聞こえるのでルスタに言って家の裏に回ってみると、兄達とアヴィとディルが訓練していた。

「アキくんおかえりー」

「おはよ」

「ただいま、とおはよう。何してるの?」

「ソウ達に体術教えてもらってた」

アヴィは答えながら右の拳を前に勢いよく突き出す。格闘の基本を教わっていたらしい。自分達は元いた所で徒手空拳での戦い方も叩き込まれている。自分は実戦経験ないけど。

「俺らが使ってんのは対人想定のモンだからな……正直教えんの気が引けたぜ」

「迷宮じゃ亜人相手もあるし問題ないと思う。ためになる」

リツ兄の言いようから察するに大分強く二人に押されたのかもしれない。アヴィの言う通り人と遜色ない動きをする亜人の存在もあるしそういう戦い方が生きるのは悪くないことだ。あと周りに受け入れられているのも大きいかも。

「イルミアも格闘家だよね。教わったりしないの?」

「ちょっと教わってた。でもイルミアの体術は爪を使ったりするから少し違う」

武器に爪が出る機能があるくらいだからなあ。殴る蹴る以外に斬る事も入るならきっと型も全然違うだろう。

「ソウは厳しいな……」

「優しく教えるもんでもないからねえ」

伸びをしながらディルが戻って来る。少し疲れた顔をしているので朝から結構ハードに動いていた様子。

「軽く食べてきたのにすげぇ腹減った。アヴィ飯ご馳走になっていい?」

「大丈夫。ディルの分もある」

「よっしゃ」


朝食は雇っている料理人がいてその人や家政婦さんが作っているとの事。アヴィについて食堂に行くとやたら色々と食事が用意されていた。

「うまそ~」

「男の人五人もいるしって、いっぱい作ってくれたみたい」

「なるほど……」

家政婦さんに飲み物の一覧が書かれた紙を渡され、欲しい物を聞かれたのだが知らない飲み物も結構ある。覗き込んできた兄達と悩んでいると二人から不思議そうに見られた。

「どうしたの?」

「いや、知らない物があるなって」

「アキ達、知ってるものが偏ってるだけ」

などと言いつつもアヴィは丁寧にどういう物か説明してくれた。豆を炒って粉にしたものから抽出した飲み物、果物の果汁、パン等に合わせて飲むお茶など。自分は果物の果汁を頼む事にした。今日はオルジェですよと家政婦さんが持ってきてくれたコップには見た事のある橙色の果汁が入っていたので多分オレンジの事だろうと思う。一口飲むと果肉を食べた記憶よりも甘味が強い。

元の世界で食べた物よりも質が良いんだろう。

用意してもらった料理はというと、色んな種類のパンに茹で卵や炒り卵、腸詰や燻製肉を焼いたものに葉野菜のサラダ、パンと食べる果実煮やチーズなどの乳製品、後は切られた果物だ。

「多いね……」

「シュウいるから残んねえよ」

「うまーい」

シュウ兄を見ると次から次へと美味しそうに食べていた。ホントにどうなっているんだろう胃袋。



朝食を終えて皆でギルドへ向かう。受ける依頼は昨日少しアヴィが相談していたらしく受付へ向かうと待っていたのか職員さんが数枚依頼書を見せてくれた。

「近場の森での調査もお願いしたいんですけど」

「ん。大丈夫。人数もいるし」

「調査って俺達の階級で受けていいもの?」

「そもそも四人の戦闘能力ならなんも問題ないと思うけどな」

調査依頼は黄以上である程度戦闘技能を認められた人だけ受けられる様だ。アヴィとディルも問題無い、というより既に一度他の討伐者の人達と受けた事があるらしい。

現地へ向かう前にイルミアとファイのいる町のギルド宛に伝言を送ってもらうよう依頼した。



「さて、アヴィに今回の依頼説明してもらおうかな」

「では説明」

アヴィは依頼内容と調査依頼についての説明をしてくれた。前にウィドさんからも簡単に聞いていたが、調査依頼は現地のそれなりに広い範囲を手分けして見回る形なので六人くらいから規模が大きいと数十人でやる依頼だ。

今回は放牧地に近い森の浅いところに魔物が発生していないかの調査で、発生を確認した場合はそのまま討伐をする流れらしい。この辺の森は小型の魔物が多いので報告だけに留める案件にはならないだろうと。

「ここの森なら二手に分かれるくらいでいいと思うな」

「森出たらすぐ放牧地に繋がってたりする。牛や羊にも注意」

時間的に今まさに放牧中の様だ。

「俺達、牛や羊って見た事ないな」

「鶏くらいはあるけどな~」

「調査落ち着いたら見に行くか?意外とでけぇよアイツら」


二手に分かれた森の中、自分はアヴィとリツ兄と一緒に見回りをしている。ルスタは相変わらず薬草を見つけては毟って自分に渡してくるしゼーレも負けじとなのか飛び回って木の実や何故か花を渡してくる。

「アキ、貢がれてるお姫様みたい」

「お姫様……」

「ルスタはともかくゼーレは何持ってきてんだよ」

「わかんない。この花なんだろ」

渡された花は小さいが花弁が固い紙のようにしっかりしている。植物らしい瑞々しさは少なく、かといって乾燥しきっているというわけでもない。

「もしかして糖花? もしくは塩花」

「分かんないけど食べられる花ってこと?」

「ものすごく甘いかものすごくしょっぱいと思う。花びらの数で見分けるから……これは糖花」

アヴィは現物を何度も見た事があるようで、直ぐに見分けてくれた。


「アキ、これうちの商会で買い取りたい」

「この花を? 別に構わないけど」

「やった」

喜ぶアヴィに理由を聞くと、贈答品に付ける物のひとつとして取り扱っているとの事。自分は依頼でやってるのでなくただゼーレが採ってきた物をもらっているだけだし。それにしても砂糖が花の形になって木にくっついているのは不思議でならない。

「その糖花や塩花ってこの辺の木に生ってるのか?」

「ううん。森の木とか茂みにたまにある。発生条件はよく分かんない。逆に森の中以外では見つからない」

森のなにがしかの副産物、だろうか。自分達のいた世界とは根本から仕組みが違うからそういう事もあるんだな、程度の感想しか出てこない。


「そろそろ移動するか」

「この辺の調査はもういいの?」

「いい。リツが何もいないって言うから次行く」

アヴィはリツ兄の気配察知能力を信用しているらしい。実際ルスタやゼーレも何かの気配を感じている様子がないので本当にいないんだろう。

因みに、調査をする場所の範囲には目印になる明るい色の布が幹の太い木にくくられているので分かりやすくなっている。そうでもしないと森の中なんて広くて終わりがなさそうだもんな。

ちょっと続きます。

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