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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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36.隣町へ

こまごま場面が変わる。

出発日当日。


行く前に挨拶と伝言も兼ねてギルドに顔を出したら、アンジェさんから隣町までの護衛依頼を渡された。今日ギルドのある中央区を出発する予定らしい。

「まさか行き掛けに仕事貰うとは……」

「目的地着くまで仕事もこなせたら良いと思ってぇ」

タイミング良く仕事があるのがまずすごいけど。とは言え特に異論もないので受けていく事になった。

アヴィとディルには今日町へ向かいギルドへ赴く旨を伝えてもらう様お願いした。行き違いになる可能性もあるがそれはそれで。




「おや、久しぶりだね」

「先日は大変助かりました、今日はよろしくお願いします」

「お久しぶりです」

「よろしく〜」

待ち合わせ場所の広場へ向かうと、以前猪の魔物に襲われていた所を助けたチェンダさんとカーチさんがいた。

「俺らが受けなかったらこれどうなってたんだ」

「さあ……」

ギルド側は自分達が受けるのを前提にしていたみたいだけど、結果受けて行くので良かったのだと思っておく。


護衛の仕事とは言え、前回の依頼の様に魔物の遭遇率が高い森に入るのではなく、基本的に街道を歩くので危険は少ない。二人は先日の事もあり、もしもの場合の保険として頼んでみたのだと言う。因みに今回の護衛依頼の報酬は安全圏を通る事もあって前回よりは安価である。その方が依頼する側も頼みやすいしな。

「お二人はいつも荷運びを?」

「はい。大抵この街へ商品を出荷したり商品の買い付けをしてます」

兄達は荷馬車の後ろに乗せてもらって、自分はルスタに乗って街道を進んでいる。特に何もなく穏やかで、道中も乗り合い馬車とすれ違う位で行き来も多くはない。

街道なんて何もない事の方が多いだろう、自分達も例外でなく昼前くらいに予定の町へ到着した。




町は農業や畜産が盛んらしく、門外にも柵や耕された畑が見える。馬車の後ろについてそのまま門をくぐり町中へ通されそうになったので、慌ててルスタに乗ったまま資格証を出した。門番の人は笑って大丈夫ですよとそのままくぐる様促してくれた。先に二人が何か融通してくれたのかも。


町中は居た街と大きく雰囲気は変わらず、規模だけが違う。穏やかな空気感が心地良い。そう広くもないのか、それから十数分程でギルドに到着した。


「ギルドってホントにどこも同じ造りなんだな」

「ね〜」

ギルドの外観も中の設備も、見ていたものとほとんど相違ない。ただやはり規模だけは違って、数人の職員さんがカウンター内であれこれと対応や手続きに勤しんでいる。

「完了手続きしてくるよ」

「うん」

手続き関係はとりあえずソウ兄に任せた。チェンダさんとカーチさんは何故か入り口で待ってくれている。

「どうしました?」

「ああ、我々はお嬢様を少し待っていてね」

「お嬢様?」

商会の代表者の娘さん、という事か。そのお嬢様は討伐者資格を持っていて、今日も朝から出掛けていったらしい。時間的にそろそろ戻ってくるはずなので待機していると。

「お嬢様、商会では働いてないんですね」

「時々商品の提案や試作に関わって下さる事もある。だが最近資格を取ってから町周りの魔物の討伐や迷宮探索を主にされているよ」

「腕が立つんですね」

「ええ、お嬢様は昔から剣を習っていまして。自警団にも所属していますし自分より遥かに強いです」

アヴィ達もそうだけど、皆住んでる場所の事を考えてやる事を決めていてすごいなと思う。



「アキ!」

「あ、アヴィ久しぶり」

二人に商会の事を少し伺っていたらアヴィが声を掛けてきた。ディルと町と外に行っていた様だ。ディルは所用がありギルドの手続きはアヴィに任せ、既に別れた後だと言う。

「お嬢様、おかえりなさい」

「おかえりなさいませ」

「二人もおかえり」

「……」

今しがた伺っていたお嬢様ってアヴィの事だったのか。ぽかん、としているとリツ兄から覗き込まれた。

「アキもしかしてアヴィだとは思ってなかったのか?」

「うん……」

「だいたい本人から聞いてた話と合致してたけどなあ。まあアキはそういう所鈍いから」

ソウ兄には笑われた。別にアヴィをお嬢様っぽくないなどと失礼な事は思っていないけど、全然繋がらなかった。


「皆明日一日くらいは滞在する?」

「そのつもりだよ」

「じゃあ私とディルと、何か依頼受けない?」

アヴィからそう提案される。自分達も特に断る理由がないので受けさせてもらった。ディルともそういうつもりで打ち合わせ済みらしい。明日にはディルとも会えそうだ。

「泊まる所もうちで良ければ提供する」

「アヴィの家?」

「うん。客室あるし四人くらいなら泊まれる。決まり」

もうアヴィの中では決定事項の様だ。食事関係もお勧めする店に連れて行ってくれるらしいので、完全にもてなしを受ける事になってしまった。アヴィが良いなら良いんだけど。


「ていうか……」

「そんだけ広いんだな……アヴィんチは」

「うん」

すかさずチェンダさんがこの町で一番大きな商会なのだと教えてくれた。ちょっと顔が輝いてる風だったので勤め人としては誇らしいんだろうなあ。

「本日旦那様方は出かけられていてお嬢様しかいませんし、皆さんも気を楽にされていいですよ」

「お父さんとお母さんはともかく、お兄ちゃんなんかいたら皆に色々聞いてくるしいなくていい」

「ええ……」

中々兄に対して素っ気ないな。自分には妹はいないので分からないが、兄と妹ってそんなものなのか。



案内された商会は確かに町の中でも一際大きい建物だった。一見二階建ての様だが保存等の為の地下室があるという。商店も併設されていて、折角なので中を見せてもらうと様々な食材や加工品が陳列されている。

「私も時々携帯食の研究してる」

「へぇー」

「美味しいの試行錯誤中。出来たら四人も試して」

「お、実験台か?」

アヴィは食に関しては本当に熱心みたいで、店の中の商品を眺めていると色んなことを説明してくれた。これを仕事にする気はなかったのか尋ねたら、本業になると楽しくなくなりそうと返ってきた。

「良かったら町中も案内する」

「じゃあお言葉に甘えて」

「任せて」

泊まるのに使ってくれと言われた客室に荷物を置かせてもらい、貴重品等大事な物だけを身に着けて再び外へ出る。客室はベッド以外にテーブルや椅子、ソファ等の置かれたスペースがあり結構広かった。



アヴィの先導で町の主要施設やお勧めの店などあちこちを案内してもらう。相変わらず食事する店の知識は偏って豊富である。

教会も一応場所は教えてもらったが、礼拝は基本朝のうちだけで今は閉まっていた。因みにこの町には孤児院は併設されておらず、もし引き取り手のいない子供がいれば孤児院のある街町へ無償で送迎するんだとか。

「明日朝でも行ってみようかな」

「アキ、熱心」

「う、うん……? そうかな……」

たまたまリズルと会いやすい場所だから顔を出すだけだが、傍から見たら敬虔な信者に見えるのかもなあ。


その後も一通り町中や郊外の農地を見せてもらい商会へ戻った。

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