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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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35.報告と試験結果


ソウ兄とリツ兄の迷宮探索は特に予定外の出来事もなく目的階層に到達して、指定されていた素材も無事手に入ったとの事だった。


「いや、予定外は一応あったと言うべきだよね」

苦笑いするソウ兄が見せてくれたのは装身具と宝石類。クレイースさんが飛びつきそうだ。

「いーじゃん。旅の資金て事で」

「それはいいんだけどこれを商業組合に持っていくのがね……」

「俺、行ってくるよ」

兄達はクレイースさんの事があまり得意では無さげだ。自分は特に苦手意識はないが対人の得手不得手は誰だってある。自分もこういう時くらいは兄達の役に立っておくべきだろう。

「俺付いてくわ」

「じゃあリツとアキにお願いするよ」

明日もなんだかんだで二手に分かれる運びとなった。



次の日。

直接商業組合へ向かうと朝から既に賑やかだった。商業と一括りだが部門が色々あるみたいで、職員さんは部門ごとに制服の上着の色が違う。

とりあえず納品したいので尋ねる為に総合的な受付へ向かおうとしたらクレイースさんが駆け寄って来た。

「うわ」

「やあやあ! 探索どうだった?! 宝石あるみたいだけど!!」

この人は本当に宝石の何を感知しているんだろうか。

「ありますけどそれ以外の納品を先にさせてください」

「アッ……ハイ……勿論だよ!」

キッパリと言うとクレイースさんはなんかたじろいでいた。すぐ持ち直したけど。

「……アキのそういうとこすげぇよな」

リツ兄には何故か感心された。


「指定された素材の納品はどうしたら良いですか?」

「それならこっちの受付だよ、おいでー」

クレイースさんに聞くと手招きされ先導してくれたのでそのままついていく。先日もらっていた書類と素材をまとめた袋を受付の職員さんへ渡す。

「ついでで良いんですけど、これも納品出来たらお願いします」

シュウ兄が見つけてくれた木の実も別にまとめていたので出しておく。

「ペルブですね、ありがとうございます。ちょうど依頼もきていますし納品処理させてもらいますねー」

「お願いします」

どうもパン屋や甘味を扱う店から既に依頼が来ているらしい。リズルに言われて採って来たけど需要があって良かった。

「木の実類は余程がなければ成る場所変わらないから覚えておくと良いかもねー。また時期がくれば依頼をこなせる」

「あ、確かにそうですね。帰って地図に印でもつけておきます」

いつか自分達でも料理なんかに使うかもしれないしな。

職員さんは少しして納品素材の単価と納品数が書かれたリストと報酬の入った袋を持ってきてくれた。簡単に説明を受け承認書きをして終わりだ。


「よし終わった! 次私だね!」

「試験結果ギルドに伝えないと……」

「君! ウィドに試験の素材は無事納品されたので問題ないって伝えておくれよ! 彼らはこれから私と商談だからね! よろしくよろしくー!」

指差された職員さんは承知しましたー、と書類片手に受付のカウンターを出て行った。クレイースさんの対応にこなれているなと思う。一方の自分はクレイースさんに手を引かれ半ば強引に前回もお邪魔した部屋まで連れて行かれる。リツ兄はため息を吐きつつ後ろをついて来てくれた。


「よろしくお願いします」

テーブルに宝石類と装身具を出す。いつの間にか片眼鏡を掛けたクレイースさんはその中の腕輪をひとつ手に取ってまじまじと眺めている。

「なかなか良い物だね。装身具が出てくるのも久しぶりだ」

「あまり拾わない物ですか?」

「そうだなあ。少なくはないけど多くもないよ。大抵はそのまま売るより分解して使ってしまうけど」

腕輪やネックレスなんかは流行り廃りがあるものなので、そのまま販売しても売れない事も多いらしい。素材は良い物なのでバラバラにして再加工したりするんだそう。

「宝石は……と、うんうん色んな等級があって良いね。組合としても助かる」

前回と同じようにクレイースさんは宝石を確認しては振り分けている。等級以外に大きさとか判断基準が色々あるんだろう。

「今回は小粒な物が多いね。細工師に回すのが主だなあ」

「行き先はお任せします」

「終わったんなら帰るけど」

一応鑑定等の作業は終わった様だが。クレイースさんは何故かお茶とお菓子を用意して自分達の前に差し出してくれた。もう少し話をしていけという事か。


「報酬受け渡しに少し時間かかるからもう少しいてくれよお」

「俺は良いんですけど……」

リツ兄の顔を伺うと、仕方ないと言いたげな表情を浮かべている。自分の視線に気付いて頭を軽く叩かれた。

「アキに任す」

「そしたら……受け渡し終わったら帰りますね」

「うんうん! まあお茶でも飲んでよ。君達の予定してる旅程を少し聞きたくてさー」

勧められたお茶は苦味は少なく香ばしい。焼菓子もひとつ口に入れる。甘味は控えめで素朴な味わいだ。

「旅程といっても……アヴィ達に会う以外詳しくは決めてないです」

「同期の子達の町に行く事だけ決めてるんだね。いやあ君達の事だから道中仕事しつつ動くのかなって思ってたから、必要なら商業組合宛の紹介状を渡しておこうかなーって思ってたんだ」

繋がりがある事を主張しやすくしとくと色々楽だから、とクレイースさんは笑う。


「街には戻って来る予定なのに皆に気を遣われてる様な」

「だな。一月離れる位でそこまでしなくても良いだろ」

「ウィド達も君達の仕事ぶりを見るに手放したくないんじゃない? 急に階級上げさせたりしてさ。ま、私も留まってくれるのは大歓迎だけどねー!」

あちこちから随分寛容に受け入れられていると思うが、煙たがられるよりは全然良いか。

クレイースさんが報酬の受け渡しまでの時間、国内で此処と同規模の街の宿や馬車の情報などを色々教えてくれた。とは言え同規模となると国の中心部と、あと数ヶ所程度の様だ。それだけ今いる街は規模が大きい。

因みに宝石類の報酬は前回よりは少ないけど十分に大金だった。ちょっと不安だったのでリツ兄に持ってもらった。



合流の為に討伐者ギルドに向かうと、ソウ兄とシュウ兄がウィドさんと立ち話していた。

「捕まってたみたいだね」

「報酬受け取ったから切り上げたって感じだ」

リツ兄はため息を吐いている。少々疲れたらしい。

「試験結果はどうでしたか?」

「何も問題なく合格だよ。お前達が戻ったらまとめて資格証の更新をしようと話していた所だ」

「あ、そうなんですね。お願いします」

資格証をウィドさんに渡すと受付の職員さんにそのまま移動し手続きが始まった。しばらくかかりそうだ。


(エヴ)に上がったからあと一階級上に上がれば指名依頼を受けられるようになるぞ」

「気が早い」

ウィドさんによると黄と橙の階級はそこまで階級差は大きくないらしい。新たに受けられる依頼の種類が増える訳でもない様で、ここから緑へ上がるには様々な種類の依頼をとにかくこなしていく事を求められる。

「だいたい最短で(マケア)に上がれるのはこれから二月程度だな」

「上がらなくていいのでは?」

「いや、お前達には最短期間でないにしろ上がってもらう。でないと……」

「私達も困りますからね」

振り向くと更新の終わった資格証片手にロシェさんが来ていた。

「指名依頼の問い合わせ時々くるんですよ。上がってもらわないといつかギルド(うち)に苦情きちゃいます」

「はあ……」

誰だかわからないが、依頼をしたい人が急いて問い合わせている様だ。なんとなく浮かぶ顔がなくもないけども。

ともあれ試験は終わったし、数日中には街を発てるだろう。


「じゃあ行く先で依頼とか受けておきます」

「おう。そうしておいてくれるといいな。紹介状は何通か用意しておくから発つ前に寄ってくれ」

「クレイースさんも渡そうかなって言ってました」

「おお、貰っとけ。あれでも国内の商業組合じゃ幅きかせてるからなアイツも」

何かあった時の保険的要素だろうか。ウィドさんにはクレイースさんにも用意の依頼を伝言して欲しいとお願いすると快諾してもらえた。


一月程度の旅路だけど、何も問題が起きない事を祈る。

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