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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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34.報告と薬作り

主に薬作りになってしまった。


森で指定の魔物の討伐と採取を終えて、ルスタに乗せてもらい街に戻ったのは午後二時に差し掛かったくらいの時間だった。今回はシュウ兄と二人で乗ったが、ルスタはそれを特に気にもせず普段より速足で行き来していた。いつもは自分達に合わせてゆっくり歩いてくれてるんだろうなあ。たまには思い切り走らせてやらないと。


門をくぐりそのままギルドの区画まで歩いてもらう。

「……終わったら薬師の組合行ってもいい?」

「いいよー」

薬の納品も実績として欲しいので調薬の時間を少しもらえたらとの相談のつもりだったけど、シュウ兄は二つ返事で快諾してくれた。

「俺行きたいとこもやりたい事も特にないしー。アキくんについてくよ」

「薬作るだけだけど」

「うん。一緒にいるよー」

問題ないらしい。多分暇するであろう事は伝えておいた。



討伐者ギルドの受付で報告をしていると、ロシェさんとウィドさんがこっちへ向かって来た。

「おかえりなさい。どうでしたか?」

「えっと……大丈夫、でした」

「つまり何かあったんだな」

ちょっと答えに詰まったせいでウィドさんに笑われた。

「怪我なんかはしなかったか?」

「それはないー。でも別の魔物出ちゃって〜」

「あら、大変でしたね」

受付の職員さんに承認を書いた報告書を返却し、解体依頼の為に移動する。倒した魔物を確認したいと言って二人も同行してきた。


「すいません、解体お願いします」

「おう。そこに出しな」

担当者さんが指差した場所へ、シュウ兄が袋の紐を解き魔物を出す。

「……こりゃまた随分綺麗に真っ二つにしたな」

「はは……」

担当者さんは首の断面をしげしげと眺めている。

「アキさんの魔法ですね。これは……風属性ですか?」

「そうです。刃を飛ばす様に使ってみたら思ったよりも勢い良くて……」

「水撒くの大変だったね〜」

自分達が血塗れになったのもだけど、血の散った範囲が広くてなんとか支給品で足りた状態だった。

「統括から講習の件も聞いてましたけど、アキさんは咄嗟の時の威力調整が苦手みたいですね」

「まだ頭で上手く判断出来なくて……」

ロシェさんの指摘に思い当たるところしかないので頷き返答する。

「こればかりは経験積むしかないな」

「そうですねえ。アキさん魔法の発現についてはかなり優秀ですから後は数をこなして掴んでいくと良いと思いますよ」

「経験……かあ」

魔物討伐は兄達に任せきりだし、迷宮に潜る機会がある時に少しずつ感覚を掴むしかなさそうだ。ゼーレが離れるのを嫌がるけど。

解体作業はそれなりに時間がかかるのでまた明日迷宮探索の件と併せて手続きする事にした。


「あ、そうだ。アヴィ達に伝言したい事があるんですけど……どうやったらいいですか?」

「彼女達のいる町のギルド宛に伝言を送れますよ。伝言内容を書類に書いてくれたら処理出来ます」

ロシェさんの説明によると伝言を送るのは有料で、伝言の長さとか程度により金額が変わるらしい。国内は短い伝言内容ならどこでも金額が一律なんだとか。国外や大陸間となるとまた違うそうだけど。電報みたいなものかな。ギルド間や国の機関同士では電話の様な通信方法もあるらしい。

とりあえずアヴィ達のいる町二ヶ所のギルド宛に、一週間以内に訪問する旨を伝言してもらった。




討伐者ギルドでの用が終わったので薬師の組合へ向かうと、職員さんから納品なのかと輝いた目で聞かれたので、何も言わずにルスタが採っていた薬草の束を出す。まだ種類ごとに分けてもいない雑多な束だ。

「今日は討伐者ギルドの試験が主でついでに採っただけの物ですけど……」

「大丈夫。こっちで鑑定も選別もします」

断りを入れるが職員さんは気にしないらしくそのまま受け取ってくれた。


そのまま薬作りをしたい旨を伝え調薬室の鍵を借りる手続きをする。渡された書類に名前などを書いているとシュウ兄が覗き込んできた。

「なー。一緒に入ってもいいの?」

「はい。無資格者も一名までは問題ありません」

自分の代わりに職員さんが回答してくれる。有資格者や職員が許可すれば良いらしい。実技試験をここでやっていたのでそういう規則にしておかなければ都合が悪いのもあると思う。

「今不足している薬はなんですか?」

「そうですね、この辺りの薬を納品してくれると助かります」

職員さんに在庫不足の薬のリストを見せてもらう。普段から需要の高い傷薬や疲労軽減薬は常に在庫が心許ないと職員さんは苦笑していた。

リストを確認して作る薬を伝えると提供素材の話に移る。組合では調薬の為の素材を提供し、完成品納品時にその素材代を差し引く形で報酬を渡してくれる仕組みだ。必要な薬草でそのまま使用できる物をいくつか持っているので、それを伝えその他必要分を用意して貰った。流石に自分では乾燥させて粉末にしたりという加工は出来ないからなあ。



調薬室は壁一面器具の収まったガラス棚が並んでいる。部屋はかなり広く、作業の為の長机が三人分程度設けられている。そのうちのひとつの机に、シュウ兄が代わりに持ってくれた素材類を置いて貰った。

「なんか不思議な匂いするなー」

「薬作る所だからそういう香りが残ってるのかも」

棚から必要な器具を出して机に置いていく。シュウ兄は出したガラス器具を手にとって眺めている。

「珍しい?」

「んー。アキくんこういうの買って家で作ればいいのにーって」

「家でやるには設備とか環境がね」

薬を作るのには浄化魔法を掛ける頻度が多い事や火を扱う事等々により思いの外ちゃんとした設備がいる。基本薬を扱う店はそういう設備を含め建てられているらしいし、借家では大掛かりな改装でもしないと調薬は不可能だ。そもそも借家なので無理だけど。

「そっかー。じゃあ家建てたらだな」

「いつの話やら……」

家を建てるなんてどのくらいお金が必要なんだか。


薬研と呼ばれている器具を使って採っていた薬草をすり潰す。その間シュウ兄にはお願いして蒸留水を作る器具の様子を見てもらっている。

「浄化魔法で綺麗にすんのに水も手間かけるんだなー」

「綺麗にした上で混ざり物が無い水にしないといけないんだって」

蒸留水自体は水と蒸留器があれば作り置けるから容れ物を用意して次回作った物を保管してもいいかもしれない。

取り分けた蒸留水の中にすり潰した薬草の汁と粉末を入れて少し火にかけ、沸騰しないように気をつけて煮詰めていく。

「水少なくないー?」

「ここから成形するから」

別の容れ物に出していた粉末に煮詰めていた薬液を入れてダマにならないよう混ぜていく。正直これが一番難しいと思う。調薬用の手袋をして、混ぜて出来た塊を少し捏ねて成型用の器具に埋める。

「なんか料理してるみたいだなー」

シュウ兄の言う通り、工程は少し料理に似ているかも。


成型用器具の上に重石を載せる。これは魔力を込めた時だけ重みを増す様になっているらしい。魔力を込めた途端器具が軋む音がしてちょっと心臓に悪い。

成型の間に沸かした蒸留水に薬草を数種類入れて煮出す。今度は水薬だ。色が濃く出るまでこちらも沸騰しない様に気をつける。

「シュウ兄暇じゃない?」

「思ったよりアキくんの作業見てんの楽しいから大丈夫ー」

「ならよかった」

煮出している薬液をかき混ぜる間、成形器具から重石をどかすのをお願いした。器具の上部を取り外し、下部を逆さにすると成型された薬が落ちてきた。きちんと固まった様だ。残りの分の成型をこなしながら、煮出しが終わった薬液を漉して蜜糖を入れ味を調える。薬液だけだと苦味や渋味が主なので、飲みやすくする大事な手順だ。



「終わった」

「おつかれー」

『お疲れ様です』

いつの間にかまたリズルが来ていた。という事はソウ兄とリツ兄の探索もいいとこまで行ったのだろう。

『お二方はもう所用が終わられたみたいで戻るとおっしゃってましたよ』

「なら俺らも帰らなきゃー」

ちょうど薬も完成したので納品すれば今日の予定は終了だ。リズルに伝言の御礼を言うとまたいつでもどうぞ、と去って行った。いつでもは良くないと思うが。

受付の職員さんへ薬を納品し、簡易鑑定をしてもらう。品質等には問題ないという事で素材分を差し引いたお金をもらった。一人での調薬は試験以来だったけど案外楽しい。


明日は迷宮探索の報告と今日の解体分の確認だ。

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