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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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32.試験の課題

課題の話自体はあんま多くない……。

今日はまず昇級試験の課題をこなす為に街の外へ出ている。

目的地の森へは既に着いていて、シュウ兄と依頼の魔物の特徴なんかを再確認する。

「よーし。んじゃ俺は魔物探してくんね~」

「気を付けてね」

「おー」

シュウ兄は手を振って颯爽と森の奥へ入って行った。特に何も考えず別行動を取っていてこれで良いのだろうかと少し考えたが、一緒に行動したとて討伐の役には立たないので自分は自分の課題を済ませるにした。


いつもは薬草の採取ばかりをこなしていたが、今回は試験も兼ねる事と自力でも探せる様に少し経験をするべきとウィドさんとクレイースさんから助言を貰った為、違う依頼を受けている。

今回依頼された物はこの時期に生っている木の実だ。とは言えゼーレにお願いしないといけない程高所にある物ではなく低木らしい。実の生っている木さえ見つかればいいのでルスタとゼーレには今回の依頼の件を一応伝えて今いる付近から捜索を開始した。

依頼書には依頼品自体の特徴の他にもある程度生息地等場所の記載もあるので薬草探しもルスタがいなくても何とかなるのはなる、と思う。


辺りを見回しながら歩いている途中ルスタに上着を引かれたので、見ると依頼の実が生っている木があった。数本まとまって自生している様だ。

予想よりも早く見つかったので持参した方が良いと言われ用意していた手袋を着け、潰さない様に丸く柔らかい実を採る。ゼーレも手伝いたそうに腕に移動してきたので、木の下に依頼品を入れる袋を口を開けたまま下ろした。それを把握した様で器用に魔法で実を落としたり咥えて運んでいる。ルスタは流石に手伝えないからか近くにあった薬草を食べたり摘んで自分の足元に置いたりしていた。これはこれで納品しようと思う。

「こんなもんかな」

依頼品には数量の指定は無く、見つかったら見つかった分だけ納品し報酬を精査してくれる。迷宮の素材関係と同じだ。ただ木の実なんかは時期で採取可能な物が変化するので、その時期が終わるまではずっと依頼が出続けている。


シュウ兄はまだ魔物を探しているのかな、と森を見渡し耳をすませるとかなり遠くから草をかき分ける様な音がする。ルスタが音に反応して向いている方向がそうだろう。合流の前にルスタが採っていた薬草類を鞄に突っ込んでおく。色んな草が混じっているので後で種類ごとに分ける必要がありそう。


終わったらしいシュウ兄を待っていたつもりだったが、顔を覗かせたのはよく討伐をしている鹿の魔物だった。目が合ってしまい敵だと認識された様で自分の方へ駆けて来る。

まずい、と思い魔法で対抗する事を考える。火は慣れてきたが木々のある場所では危険だし土も周りが拓けていないから難しい。

「風、使ってみるか」

これも下手をすると木を傷つけるかもしれないが、なるべく魔物だけを上手く斬れるように狙いを定めて杖を振り、見えない刃を放った。


風切り音から少し遅れて魔物の首が宙を舞った。上手く当たった様でホッとしたのも束の間。

「わ、わっ……」

首と分かれた胴体は勢いを止めずに鮮血を吹き出しながら向かってきてしまった。咄嗟にルスタに引っ張られて茂みに倒れる様に避けたが見事なまでに血まみれになった。魔物の胴体は少し奥の木にぶつかった後倒れて完全に動かなくなった。

「ううん……予想外だ……」

ルスタとゼーレにも血を浴びさせてしまった。反省。


どうしたものかと顔にかかった血を手で拭っているとシュウ兄が慌てて駆けつけて来た。

「アキくん大丈夫?!」

「返り血浴びただけだから平気……」

「ごめんなー。目的のはちゃんと倒したんだけど」

シュウ兄も偶然魔物を見つけたけど逃げられ追っていたという。力の差を本能で感じたのだろう。

「とりあえずこの血なんとかしないと」

「水被る?」

そう言って鞄から支給された浄化用の水を差し出して来る。それは地面に撒く物なので断った。後濡れる事に変わりが無い。

『アキ殿凄い事になっていますね』

「リズル」

いつの間にか来ていたリズルは驚きと心配が混ざった様な表情を浮かべている。

「これでも怪我はないから上々だよ……」

『浄化魔法で綺麗にされては?』

「そうは言うけど……使えないから」

『アキ殿でしたら使えるでしょう! お教えします!』

「俺も聞く〜」

シュウ兄も何故か珍しく聞く気満々だ。汚れを落とす事に関してなら使えて損はないだろうと兄達は言っていたから、それでだろう。

『以前浄化魔法については少しお話しましたよね』

「うん」

元は呪いと対になって存在する事になったという浄化魔法。現在呪いの魔法自体は消失した禁忌の存在らしいが。


『汚れた箇所を魔力で撫でて消す様に使う事を考えられると、恐らくは上手くいきますよ。全身を覆う様に使っても良いのですがかなり魔力を消費しますから迷宮以外ではお勧めしません』

「うーん。とりあえずやってみるよ」

手に魔力を通し、言われた通り魔力で消す事を考えながら上着をなぞってみると、血の跡は上手く消えてくれた。全体をどうこうは無理そうだが一部ずつならなんとかなりそうだ。先にルスタとゼーレをそれで綺麗にしてやる。


『アキ殿もシュウ殿も飲み込みがお早いですよね』

「そうかな」

「アキくん手伝うよ〜」

シュウ兄はそう言いながら自分の血の付いた部分を綺麗にしてくれた。自分よりも綺麗に出来る範囲が心なしか広い。感覚で要領を掴むのが早いだけある。

「ありがとう」

『ご無事で何よりです』

「いやー怪我無くて良かったー。アキくんが怪我したなんて知ったら兄ちゃん達に半殺しにされちゃうね」

「罰が重い……」

『お厳しいのですね、ソウ殿とリツ殿は』

笑いながらシュウ兄は言うけど、自分が仮に怪我をした場合そもそも自分に要因があると思うので気にしないで欲しい。


「でも困ったな。また予定外だ……」

自分が真っ二つにしてしまった魔物をとりあえず回収し、水を撒く。頭部には今まで見た中でもかなり立派な角が生えていた。

「諦めて報告すっかー。アキくんは終わったの?」

「うん」

依頼品の木の実が入った袋を見せる。とは言え魔法がかかっているのでいくら入ってても膨らみは感じられないけど。

「さっき俺もそれっぽい木見かけたんだよー。もうちょい採ってかない?」

「うん。いいと思う」

『森を出られるまではご同行致します!』

リズルはついてくるらしい。自分は別に構わないけどもしかしてさっきので心配をかけていたんだろうか。


シュウ兄の先導で少し奥へ向かうと確かに低木に実がなっていたが、依頼の赤い丸い実ではなく紫色の楕円形の実が生っている。

「ちょっと違う実みたい……」

「あれー? そっかあ」

『これも食用ですし折角ですから採っていかれては?』

リズルがそう言うので鞄に入れる形で採っていく事にした。一粒食べてみると少し酸味はあるが十分甘い。

「終わったし戻ろうか」

「だなー。兄ちゃん達どうしてっかな。終わったって連絡も出来ないし~」

『よろしければご様子伺って伝言してきましょうか?』

リズル、暇なのかな。自分達としては完全別行動の兄二人の状況は気になるが神をそんな伝達係みたいに扱って良いのかどうか。

「まあリズルが良いなら……」

『お任せください!』

「うん……よろしく。俺とシュウ兄は街に戻るよ」

『はい。お二方も道中お気を付けて』

リズルはそう言って消えてしまった。直ぐに兄達の所へ行ってしまった様だ。


「ギルドに伝言もしなくちゃなあ」

「なあー」

リズルと兄達がどんな会話をしているのか少し想像に耽りつつ街へ戻った。

次の話は迷宮組の方に視点変えてお送りします。

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