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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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27.迷宮の魔法講座

講座(講座っぽくはない)


「えぇー……」

「まさか本当にアキを連れて来るとは……」

「二人共信じてなかったのね」

ディルとファイは自分が本当に来るとは思ってなかった様でだいぶ驚いた顔をしていた。軽く挨拶すると元の調子に戻ったけど。一応二人にも確認したら迷宮は元々潜るつもりだったらしい。



話もそこそこに、目的の迷宮へと潜る事にした。

自分は先日潜った迷宮なので何となくだが様相は把握している。アヴィ達も既に何度か来ているとの事。

「魔法の使い方を、って言ってたけど」

「そうそう。迷宮内なら俺らでも少しは使えるんじゃないかってアヴィがさ」

「?」

迷宮内なら、という所に引っかかる。確かに迷宮内での魔法の発現は地下の魔力を使う。地上は基本自分が持つ魔力で発現するから魔法の発生の仕組みが少し違う訳だが。

「迷宮内だから使える……のかはよくわからないな。俺はあんまり教えるのは上手く無いけどいい?」

「どれだけ下手か見ものニャー」

「見世物にされる……」

「何にせよ一旦五階層を目指そう。腰を落ち着けてでないと何も出来ないしな」

そう言うファイに頷いて下層を目指す。戦う所を見学する形になりそうかな、と思ったけどあんまりなので時々後ろから火の玉をぶつけたりして応戦した。時々試しに矢なんかに形を変えてみたりして。

これ、連携と言っていいんだろうか。




「ではアキ先生よろしく」

「先生はどうかと思うけど……えーと、何からやったらいいんだろ」

早々と五階層へ到着し、軽く食事をとった後、お茶を飲みつつ魔法についての話をし始めた。

「アキは普段どうやって魔法を発現してるんだ?」

「えっと、なんとなく」

「なんとなく……」

「これが天才……」

ファイから聞かれたのでそう答えると絶句とでもいうべき反応が返ってきた。自分が元から魔法を使っていた訳でない事もあってとても説明しづらい。後天才ではない。


「火を起こすのはどうする?」

「魔力を手の方に流して、魔力を燃料にして着火させてる様な感じかなあ」

「ふむふむ」

「アキって大体手を起点に発現してるわね。後は杖かニャ」

応用が利くなら足とか、普通に武器から発現出来そうな気はする。想像するとちょっと格好いい。

「魔道具も大抵は手に魔力を流すから、その応用でならできるんじゃないか?」

「それならいけるかもな」

「よーし」

「やるニャー」

ファイが付け加えてくれた言葉にやる気の三人はとりあえず火を発現させようとしているらしい。


「ファイは火の魔法は使えるんだよね」

「少しだけな。適性として見たら正直低い。土の魔法が使えるなら畑の手伝いも出来るんだが」

セーナが魔法で畑を耕していたし、案外使えるのなら魔法で耕すのは一般的なやり方なのかもしれない。


これまで魔法は何種類も使ってみたけど考え方次第で案外どうにでもなるなという印象が強い。

触れられない光や実体の無い風に質量や威力を持たせる事もできれば柔らかい土の硬度を上げる事も流動する水を圧縮したり動かしたりも出来る。やはり頑張れば火の玉に追尾能力も付けられるのではと思ってしまう。まだあきらめていない。


「あ、出せた」

「アヴィ出来たんだ。すごいね」

「ありがと」

アヴィの手元には小さな火の玉がきちんと形を保っていた。ディルとイルミアも出来た様で喜んでいた。


「でもアキみたいに色んな属性は無理そう」

「水の魔法使える様になってみたいニャ」

「水かあ」

ここの階層はキャンプ地なので水場もある。手を付けなくても水の玉を浮かせられるかな、と水に手を近づけてみるとふわりと玉が浮いた。

「前は水に手付けてたけど」

「あの方がすくった水を浮かせる感じを掴みやすいからやってた。水をすくってからそれを浮かせる様にするのもやりやすいかも」

「なるほどニャー。やってみよ!」

「やる……!」

やる気なのは何よりだ。何故突然魔法に関してやる気になったのかは分からないけど。

ファイは自分が考えている事をなんとなく察した様で、元々身近に魔法を使いこなしている人がいなかったけど、自分が使うのを見ていてやはり少しでも使える様になりたいと最近考えていたのだと教えてくれた。


ファイと話をしつつ、試しに宙に浮かせた水の玉をどうしたものかとジッと眺める。

そういえば氷にする事は出来るんだろうか、と魔力を冷気と仮定して水の玉に流す様にすると割れる様な音と共にゆっくり氷に変化した。

「……熱も操れるのか、凄いな」

「魔力を冷気とか熱気にして送る感じかな、ちょっと難しい」

「氷のつぶてとか塊をすぐ飛ばせたら攻撃もいけそうだな」

早々に諦めたらしいディルが横から入ってくる。

氷の玉は流石に浮かせられず、かと言って持ち続けるには冷た過ぎて地面に落としてしまった。完全に中央まで凍った玉は綺麗に割れた。


「魔法こんなに使えるのは羨ましいなあ」

「そう? でも俺はディルみたいに弓は扱えないし……ファイみたいに槍も振るえないよ」

「得手不得手だな、その辺りは」

「あ! さっき火の矢作って撃ってたじゃん? アレもなかなかすげぇよな」

さっき試しにやっていたものだ。先日少し助言や説明を受けて、また本を読み返しながら自分なりにイメージを固めていた。

「まだ形変えるのは慣れてなくて。単に尖らせる、とか硬くする、とかはそれなりになってきたけど」

「単に発現するより手順多いもんな」

「火の玉を出せてもそれを魔物にぶつけるとなると段階が一つ上がるからな……」

ファイの言う通り、攻撃として展開するには段階を経る必要がある。自分は何も考えずに出来ていたから今も不便はないが、才能の分野なだけあって二人は難しい顔をしていた。


「むーん……難しいニャ」

頑張っていたが中々水の玉を浮かせられないのかイルミアとアヴィは水場を離れこっちに戻ってきた。

「水の属性は火や土より頭ひとつ抜けて難しいからな」

「そうなんだ。セーナはちょっと使えてたけどな」

とは言えセーナも少し浮かせられるだけだった。他に水の魔法を使ってる人を見ていないのでどんなものか自分はよく分かっていない。

「む、誰その子」

「え。獣人の村でお世話になった子だけど……」

「詳しく」

「そうよ詳しく」

アヴィとイルミアに詰め寄られた。一応簡単に彼女との経緯を説明し、ついでに薬師の勉強もしていた事を伝えた。そこまで食いつかれるとは思わなくてちょっと驚いた。


「へー。薬師の資格取ったのか」

「どうせ薬草採りもするし。知識としても一応」

「兼業か。珍しい」

ディルとファイに話題を転換してもらって少し安堵する。ふと思い返すと近い年齢の交友はアヴィ達とセーナ位しかない。

「獣人の村は薬師が多いからなあ。狩りの腕も良いし」

「薬師の仕事に興味持ったら飛びつく様に教えてもらっちゃって……」

「そのセーナって子のおうちで?」

「そ、そうだけど……」

何故アヴィはそんなに詳細を知りたがるのか。先日討伐依頼で再訪した時の事も話せる範囲で話した。精霊とか神の眷属とか流石に話す訳にはいかないし。



「ところで魔法はもういいの?」

いつの間にか魔法の実践も終わってただの雑談と化している。

「もうそろそろ帰還しなくちゃソウ達に怒られちゃうニャ」

イルミアに言われ時計を確認するといつの間にか夕方近い。地上に戻るのはすぐだから手間がなくて良いが。

「怒られんの?」

「アキに夕食までには帰って来いって。リツ言ってた」

「門限厳しいなオイ」


地上に戻ってすぐ乗り合い馬車を捕まえて移動する。アヴィ達とは途中で別れる形になったので軽く挨拶をしてまた再会の約束をした。

因みに今回迷宮内で得たものは一旦彼らに全て預けた。後日少し取り分を貰う予定だ。






「……アキ他にも仲良しの子いた」

「アヴィ気になるのかニャ」

「んー。会ったの私達より先なのちょっと悔しい。せめて一番仲良くなりたい」

「あんまり交友関係広くないみたいだしな、仲良くしときたいよな」

「他所の人間だと引け目を感じやすいだろうしな」

「アヴィのそれと二人のは何かちょっと違うのよね……」


みたいな会話が別れた後に。

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