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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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25.休暇と交流

割と会話してる回です。


リズルとの話も終わったし長居する訳にもいかないので教会の外に出ると、子供らしき声が複数聞こえてくる。

「おまえ、魔物だな! つよいか?」

「おおきいー」

「人が乗れるようになってるから主人がいるんだねー」

「おれんちの馬よりでかいな!」


賑やかな声の方へ向かうとルスタが子供達に囲まれていた。ルスタは子供達を見る様に首だけを少し動かすくらいでじっとしている。下手に動くと危ない事を理解しているらしい。

「ルスタ、人気者だな」

声を掛けると困った様な雰囲気で鼻を鳴らして返事をしてくる。

「お兄ちゃんこの魔物の主さん?」

「そうだよ。俺の足代わり」

「つよい?」

「どうだろう。戦ってもらう事は無いから」

とは言えルスタは脚力があるので後ろ足で蹴られたら多分まずいと思う。


子供達はルスタというか魔物に興味がある様で、他にも色々と質問をされる。自分に答えられる範囲で答えていたら背後から声が掛けられた。

「皆さん、魔物さんをお兄さんに返してあげてね」

先程案内してくれた神職者の女性がやんわりと子供達をたしなめてくれた。子供達も聞き分け良くルスタから離れていた。

「すいません、預かっている子達が」

「いえ。俺は別に急ぎの用事も無いので」


神職者の女性に彼らの事を尋ねる。教会では未就学の子供を親の仕事中に預かって見る制度があるらしい。慣習に近い様だが。預かる子供達の中には孤児も含まれていて、孤児は教会に隣接している建物で独り立ち出来る年齢まで共同生活をしているそうだ。

自分達も孤児院で育ったが、そういえば教会が隣接していた。何せ戦時下なので説法を聞くよりも畑を耕したり働く事が優先だったが。


「兄ちゃんまた来る?」

「うん、ルスタと来るよ」

「じゃーまた会おうな! 魔物もな!」

ルスタも鳴いて答えている。彼らはこれから勉学の時間なのか、別の神職者の人に呼ばれて何処かへ行ってしまった。

「では、俺もこれで」

「あの……少しだけよろしいですか?」

ルスタに乗ろうとしたら神職者の女性に呼び止められる。

「はい?」

「貴方は……加護をお持ちなんですね。私、久しぶりに見たのでいつお話を切り出そうかと」

少し申し訳なさそうに微笑む女性は、どうもウィドさんが言っていた加護があるか分かる人らしい。

「俺には分からないんですが、そうなんですか?」

「はい。加護をお持ちの方は光の様なモノを纏っている、と言えば良いでしょうか。それが見えるのです」

光の様なだけで眩しいとかそういう事はないらしい。神職者の女性、リレイさんはただそれだけを自分に伝えたかっただけで、教会への勧誘だとかその類ではないと付け加えてくれた。


「加護は持っていると特別な力が使える、という訳では有りません。教会にとっては貴重な、神託を得られる可能性を持つ方ですが」

「神託ですか」

その話だと、そういう儀式を行う高位の神職者は加護を持つ人が占める事になる。

「対外的には周知されていませんけどね。貴方は加護をお持ちなのでお話しておきました」

「なるほど。ありがとうございます」

「とは言え、先程お伝えした通り勧誘でもありませんし、ましてや神職者を目指さないか、なんても言えません」

リレイさんは苦笑いする。そこに強制力を働かせればそれこそ神の怒りを買うかもしれないから、と。

ただ、興味があるなら是非、とは付け加えられたけど。




教会からまた移動し、中央区までルスタに歩いてもらった。興味のある書店を少し見たり、薬屋を覗いたりしていると昼に差し掛かる。昼食の事は特に考えていなかったのでどうしようかと広場に向かう。

「おや? アキじゃないかー」

「クレイースさん」

先日商業ギルドでやり取りをしたクレイースさんに声を掛けられる。聞くと休暇で街中を見て回っていると。

「前は組合の所属店へ行ったり街中を駆けずり回っていたのだけどねえ……役員職はそうもいかなくて」

「でしょうね」

机上仕事で大人しくしている性分では無い、と言いたげだ。それでもよく港町のある国まで貿易関係の職務で出向くと言う。


「ここでアキに出会ったのも良い機会だ。一緒にお昼でもしようそうしよう」

そう言ってクレイースさんは何故か自分の空いている方の手を取る。

「俺は良いですけど、変な噂になっても知りませんよ」

「ならないならない!」

自信満々に返された。一応男女なのだから、と気にしておいたつもりだったけど問題視すらされていない。そもそもこの人いくつなんだろう。




言われるがままについて来た店は料理の他に昼間はお茶やお菓子を、夜はお酒を出す店の様だった。店の外にもいくつかテーブルが設置されている。

注文はクレイースさんへ任せ、ルスタを店の脇の馬房に居させてもらう。他にも馬が繋がれていたので、仲良くな、とルスタに言うと勿論と言う様に鼻を鳴らしてくれた。

「君達いつも一緒に行動してるのかと思ったよ」

「仕事の時だけですよ」

一応皆いい大人だから、仕事と家の事以外は各自自由だ。普段仕事しかしてないから一緒にいる時間は普通の兄弟より長いと思うけど。


「どうだい?街の生活には慣れた?」

「はい。随分のんびり過ごしてる気がします」

「そうかい?ウィドが働き過ぎなんじゃないかって心配してたけどなあ」

クレイースさんに昨日三人から諭された事を話すと、笑いながらそりゃそう言うなあと返されてしまった。

注文してもらった物は麺料理で、赤い、トマトを主に使ったソースと挽肉を混ぜた具がたっぷりと上に乗っていた。他にも黄色い透明なスープや、温野菜のサラダもついてきた。

「仕事と休暇の均衡は三日程度に一日って感じなんだ。昔からそうなんだよね。誰か定めてくれたのかな」

「昔から、ですか」

「君達の居た所はきっとそうじゃなかったんだろうけど、追々慣れた方が良いね」

周りが心配するからね、と言ってクレイースさんはスープに口を付ける。

「そうします」

自分もスープに口を付けた。想像よりもずっと濃い味がする。具は小さく切られている物が少し入っているくらいだ。


「あげた魔石どうしてるー?」

「時々魔力を込めてみたりしてます」

「そっかそっか。加工する時は頼ってちょうだいね」

良い腕の細工師を知っているのだとクレイースさんは胸を張る。ウィドさんと言いお偉いさんには色々な伝手がある。

普段魔法を使う事は少なく、魔力を魔道具に通すか、石に込める程度。色々と魔法について考えたり、借りている本を読んだりして勉強してはいるが実践経験は少ない。薬師の試験の時も思っていたが、自分は知識はそれなりに付いていても実践が全く伴っていない。

「魔法、もっと実践経験を積めたら良いんですけどね」

「毎日討伐仕事してて積めてない方が凄いね」

それは何故かと言うと兄達に任せきりだからである。反省。

「魔法について助言出来たらいいんだけど……私ってばエルフ族の血が濃い癖に魔法からっきしだからなー」

「そうなんですか」

「同じ混血でもロシェの方がよっぽど魔法出来るよ。実践足りないならギルドを頼ると良いかもね」

言われてみれば寧ろその為のギルドだろう。

昼食を終えると、食後のお茶と菓子が運ばれてきた。冷菓の様で口に入れると柑橘の香りと酸味が爽やかに広がる。



河岸を変え、別の店でまたクレイースさんとお茶を片手に話を続けている内に気付いたら夕方近くになっていた。

「おやあ。随分引き止めたかな。用事は大丈夫?」

「元々休みでこれといった予定は無いので」

「まあまあ謙虚だこと。付き合わせた御礼は今度するよ」

自分は首を横に振る。食事の支払いを全て持ってもらったのにそこまでは頂けない。

「じゃ、迷宮もっと探索してきて!」

「それは俺の一存で決められる事じゃないし……」

「そんなー」

迷宮探索、皆一様に勧めてくるのが不思議だ。一応兄達には打診してみるとだけ告げて別れ帰路についた。



初めての休暇は中々濃い一日を過ごしたように思う。明日からまた頑張ろう。

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