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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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24:休暇と教会

休暇(当日)

ギルドの面々に休暇を勧められて、というか最早命令されたので仕事の予定が丸一日空いてしまった。折角だしゆっくり寝てみようと思っていたけど自然と目が覚め、時計を見るといつもの起床時間だった。


ふと目線を動かすと、既に起きてベッド脇の棚の上をちょこちょこと動き回るゼーレと目が合った。途端にゼーレは自分の眼前に降りて、起きないのかと言わんばかりの視線を向けてきたのでベッドから起き上がる事にした。

共用部を覗いたが兄達はいなかった。朝食を準備するか少し考えたがまずルスタの世話をしようと思い庭に出る。今日は依頼が無いから街の外には出ない予定になってしまったけど、街中を歩き回る予定を伝えると了解らしき鳴き声を返してくれた。


「アキ、もう起きてたのか」

「おはよーアキくん」

こちらもいつも通り走り込みに行っていたらしいリツ兄とシュウ兄が袋を抱えて帰って来た。ついでに朝市へ行ってきたんだろう。

「おはよ、何か良い物あった?」

「野菜と果物が新鮮なのあったからちょっとな」

「腹減ったなー」

「何か作る?」

「そうだな……朝飯にすっか」

リツ兄と朝ご飯を作っているとソウ兄も起きてきた。洗濯は後回しにして貰って先に皆で朝食をとる。


「結局ほぼいつも通りだね」

「もう体がこの生活に慣れちまったんだよな……」

朝市で買ってきてくれた赤い果物は皮を剥くと少し黄色がかった白い果肉をしている。食感はシャキシャキしていて甘みはそんなに強くない。

こっちの世界の果物は生の状態か干された状態で見る事が多い。水分をかなり含んでいる物が多いから腐りやすそうだ。干すのも手間がかかっていそうだし一度加工している所を見てみたい。


「アキはどっか行くのか?」

「え?」

果物に夢中で全然話を聞けてなかった。ちゃんと聞けよとリツ兄から頰をつつかれた。

「アキくん果物よく食べてるよね〜」

「そういえば、そうかも……」

「今日の予定の話してたんだけど、アキは何か予定立てた?」

結局何しようか考えていたら眠ってしまったんだった。朝もいつも通り動いてたからすっかり考えるのを忘れていた。

「決めてなかった」

「のんびりしてんなあ」

ソウ兄は服の繕い物をしてから職人通りの店に行くとの事。リツ兄は足を運んでいない区画へ行く予定で、シュウ兄は。

「俺ギルドに行くよー」

「休みなのに?」

「ちょっと体動かしたいし〜。市場も近いし〜」

どうも食べ歩きをしたいらしい。


自分は図書館に何か本を読みに行こうか、と考えたがふとリズルが教会に行ってみてくれと言っていたのを思い出した。

「一度教会に行こうかな……」

「リズルは神様なんだから祀られてんだよね、そういえば」

「いっつも普通に話してるから忘れかけてたな」

リズルからしてみるとこんな失礼なこともないだろう。




朝食を終えてから着替えて準備をする。昼食はそれぞれ自由に、夜は戻ってきて夕食の用意をする予定だ。上着を着るとゼーレがすかさずフードの中へ入って来た。気にせず庭に再度出てルスタに声をかけ鞍を着けさせてもらう。

教会の場所は良く知らないが、各区画には必ず建っていると前に誰かに聞いた。教会は基本的に分かりやすい外観をしていそうだし見つけられるだろうと憶測で出発した。



結局道すがら、人に場所を尋ねて向かう事になった。中々思うようには見つからないのである。



教会と言えば元の世界のせいか勝手に十字架のイメージを持っていたけど、こっちの世界のシンボルはアステリスクの様なマークと円を組み合わせた様な形の物だった。

「朝の礼拝ですか?」

神職者らしき女性が入り口を掃きながら声を掛けてくれたので頷いた。礼拝堂へ案内してくれると言う。ルスタは入り口付近に居ても大丈夫と許可をもらったので少し待って貰う事に。


礼拝堂にはリズルを象った像と祭壇の様な物、窓には色とりどりのガラスで何か絵が作られていた。

「これは創世記を模した絵になるんですよ。此方から順に」

女性はガラスの絵の説明を簡単にしてくれた。この世界が出来上がり、人々が文明を築く前までのお話らしい。実際神がいるのだから実話なんだろうと思われる。


「俺は教会に来るのは初めてで……その、神様への祈り方もよく分からないんですが」

「儀式以外では決まった形はありません。手を組んで、リズル様へ心の中で感謝を述べるだけで良いんですよ」

「そうでしたか。ありがとうございます」

女性は自分に会釈して礼拝堂を去って行った。此処にいるのは自分だけだ。いや、ゼーレがずっと上着のフードの中にいた。

鳴かずに大人しくしている為か何処に連れて行っても案外何も言われない。というよりも存在を気付かれてないだけかも。誰もいないのを見計らってなのか肩に移動して来る。


自分も立ちっぱなしも何なので椅子に座り胸の前で手を組んだ。後は目を閉じて、祈れば良いんだろう。

『教会へ来て下さったんですね〜!』

「うわあ」

目を閉じようとしたら普通にリズルが目の前に来ていた。普段見るよりも姿がはっきりしている。

「礼拝とは……?」

『アキ殿にお祈り頂くのは気恥ずかしく……参った次第です』

神なんだから祈られる位は別に良いのでは?と思うけど自分達は知り合いとか友人扱いなのか気が進まない様子。


「リズル、今日はあんまり透けてないな」

『教会は私やユシュトア様への祈りの場ですからね。私共が降りてくるのには相応しい場ですよ』

「それもそうか」

リズルの外見は女性に対して失礼だからと思ってまじまじとは見ていなかったけど、改めて目の前にすると白い透明感のある髪はかなり長いんだなあとか、スカートの裾が案外短いんだなあとか、纏ってるのは薄いけど柔らかそうな布だなあとかつい見てしまっていた。リズルはそんな自分を見ながら笑っている。


「ごめん、失礼だった」

『いえ。アキ殿も男性ですからね』

「えっ。あっ。そうだな……」

改めてそう言われると恥ずかしい。異性を意識する事なんて戦時下に置かれてからはそうそうなくなってしまった。今のところ交流の機会のある女性達は線の細い自分なんて眼中になさそうだし。

「恋愛事なんてもう考えなくなってたな……」

『アキ殿、貴方おいくつだと思ってるんですか!?』

「確か十代」

自分の正確な年齢は把握できていないが多分十代。

『生憎此方には恋や愛を司る神は存在しませんが……私も疎いですし……でも良い方にはきっと巡り会いますよ!』

「はい」

神や宗教には詳しくないんだけど元の世界にはいたんだろうか、恋愛の神。


「教会の像ってちゃんとリズルに似せてるんだな」

『昔は住人の前にも姿を現したものです』

「今は?」

『声を神託に乗せる程度ですね。今と昔では住人の中での私達の捉え方も変わっていますしね』

それでも変わらず民衆の信仰が厚いのは良い事だ。多分神にとっては。

シンボルについてもリズルに尋ねてみたら、アステリスクの様なマークは六つの大陸を意味しているのだと教えてくれた。管理している神は違えど、どこの大陸でもシンボルは同じ形らしい。不思議な感じ。



あまり長居してても変な感じなのでそろそろ教会を出た方が良いだろうと立ち上がる。

「たまに教会に来るよ」

『まあ。信仰に厚いのですね、アキ殿は』

「そもそも目の前にいるんだけどな……信仰対象」

そう返すとリズルは楽しげに笑い、また会いましょうと消えていった。




ちょっと続きます。予定、突然空くと困るんだよね。

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