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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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22.再会と酒場

食べ飲みしつつお話をする回(要約)


「おーい。ソウ達もう帰んのか?」

ギルドを出ようとした時に背後から声を掛けられる。ディルとアヴィだった。

「ああ、今日の仕事は終わったからね」

「二人は〜?」

「私達、明日迷宮潜る予定だから。今日はもう暇」

行きは街へ行く馬車の護衛依頼を受けて来たらしい。馬車は二日程街に滞在するので、迷宮に一日潜った後再び護衛をしながら帰る予定だとか。

「階級一個上がったから、早速護衛依頼受けた」

「そうなんだ。おめでとう」

「ありがと」

アヴィは得意げな顔をして胸を張っていた。一ヶ月も経たずに階級をひとつ上げているので彼女らは優秀なんだなと思う。自分達はというとあまり考えていないのが現状。上がる事を急いでもいないけどギルド側から何か言われるかもしれない。



「帰るならついてって、アキ達の家見たい」

「あっ。俺も俺も」

思いついた様にアヴィにそう言われ、ディルも追って賛同してきたので返答に詰まってしまった。

「男四人が住んでるだけの家なんて見ても面白くないんじゃない?」

そもそも借家であるので自分達の思うように模様替えしたり家具を増やしたりしていないから特にこれと言って特筆事項の無い家だ。客室も無いし。


「むぅ……友達の住んでる家だもん。見たい」

アヴィが頰を膨らましている。付き合いは短いけど友人としてみてくれているのは嬉しい事だ。

「なら茶ぐらい飲んでくか?」

「いいの?」

「元々人を呼べる様には整えてないから、寧ろその程度だけど」

「おう」

「イルミアとファイもこれから合流するけど四人で行っても良い?」

「いいよ」

一回街で合流したそうだが、各々用事の為に解散しこれから再合流の予定だったと言う。二人は途中の市場に居るらしいので、ギルドを後にして市場へ向かった。

二人はアヴィとディルと違って普通に街まで乗り合い馬車で来たらしい。居住地が違っても上手く待ち合わせできるものだなと思っていたが、ギルド経由だと元の世界の電話の様な通信が可能で、それを使って予定などを立てているとか。便利なものだ。




「わあ」

「立派なお家ニャン」

四人は借家の外観をあちこち楽しそうに見ている。その間に自分はルスタを庭に連れて行き鞍を外す。

「でもいいよな、こういう風に普段通りの生活できるのって。宿はこうはいかないしさ」

「そうだな」

ディルの言う通り自分の町にいる分には家があるから良いけど、遠出すると宿が基本だ。迷宮が絡めば野営をする場合も珍しくないし少し落ち着かないのは分かる。

先に頼まれていた野草を確認しておきたいと思い、リツ兄と一緒に少し近所へ出向く旨を伝えて席を外した。お隣に行くだけなので大した時間はかからないが。



「採ってきた物大丈夫だった?」

「うん。ちゃんと合ってた」

野草と木の実の一部をお隣さんへ預けて戻ると、ちょうどお湯を沸かしている最中だった。リツ兄が茶葉の入った瓶を棚から取り出している。コップ等の食器類は元々多目に置かれているので問題なさそうだ。

「ちゃんとお隣さんと付き合いしてるなんて偉いニャ」

「まあ住む以上はな……」

いつも食事に使っているテーブルはアヴィ達が座っていたので離れたソファに腰を下ろした。鳥は待ってましたと言うようにフードから飛び出て自分の手の上に着地して来る。

「む、可愛いちゃん」

「可愛いちゃん?」

「名前まだないって言うから」

アヴィがすかさずソファの方に来た。鳥の事を余程気に入ってくれているんだろうか。そっと差し出すと鳥も察したのかアヴィの手に乗り移った。喜ぶアヴィに頭や背中を撫でられたりして結構気持ち良さそうにしている。


「あれ、魔物増やしたのか?」

「増やしたというか……増えた……?」

イルミアとファイも鳥を覗き込んでいた。鳥は視線が集中しているのに気付いたらしく、自分の所に逃げてきてフードに収まってしまった。一応隠れているつもりらしい。

「恥ずかしがり屋さん……」

アヴィは急に鳥が離れてしまったせいでちょっと残念そうにしている。

「アキは不思議な奴だよな」

「分かるニャ。魔物使いの人見た事あるけどアキみたいな雰囲気じゃないのよね」

「そうなんだ? 俺、自分以外に魔物連れてる人とは交流無くて」

というかこの街ではそんなに見かけない。乗り合いの馬車や貨物の輸送車を、時々ルスタの様な馬の魔物が曳いてる位の物だ。

「主従の雰囲気が強いというか。アキみたいに魔物を自由にさせてない」

「へぇ」

「指示系統も基本命令だから。でも使役ならそれが正しいのかニャー」


「茶淹れたぞ」

リツ兄がお茶を淹れたカップを持ってきてくれた。これはいつも飲んでいるお茶だけど、街には色々な種類お茶や飲み物がある。味が分からない上に中々買う機会が無く気にはなっても手は出せていない。

「アキ達はこのお茶好きなの?」

「飲み慣れてるから飲んでるって感じかな」

「今度お勧め持ってくる」

「私も今度よく飲むやつ持ってくるわ〜」

それぞれ愛飲しているお茶が違うらしい。アヴィにお茶のあれこれを説明して貰った。アヴィとディルの住んでいる町は農業が盛んで、個人的に多少勉強もしているので詳しくなったとの事。お茶は残念ながら町では作ってない様だが。


「なあ、折角だしどっかで飯でも食わね?」

「いいよ。店は任せるけど」

「任せて」

北区にもアヴィお勧めの店がいくつかあるらしい。食べたい物や飲みたい物を聞かれたので兄達と回答すると何か候補を絞ったらしく案内してくれるという。

「本当に食べるの好きなんだ」

「昔からあんなだけどアヴィの勧めに間違いはねえの」

「美味しいとこばっかり熟知してるのよ」

就く仕事間違えてるニャ、とイルミアが言うとファイもディルも頷いていた。



アヴィの先導で連れてきてもらった店は酒場だった。店の外にも席があり、丸いテーブルを囲んで賑やかに話をしているお客が何組もいた。店内の広い丸テーブルの席が空いていたので忙しそうな店員さんへ断りを入れ座らせてもらった。

「ここいつもお客さん多い」

時々来ると言うアヴィは混んでて入れない事もあるんだと教えてくれた。余程人気の店らしい。


料理関係は全てアヴィに任せて、飲み物は各自選ぶ。酒の種類は豊富にある様でイルミアは何か好きなお酒があったらしく意気揚々としている。

「四人はお酒飲まないのかニャ?」

「詳しくないんだ」

「んじゃファイと選んであげる」

こっちの世界では十六歳位からお酒は解禁されるので全員飲める年齢ではあるらしい。シュウ兄は酒は嫌いだと断っていたが自分は少し興味あるので強くない物をお願いする。

「アキはどういう味が好きなんだ?」

「特に好き嫌いは」

「ダメニャ! そういうの一番ダメ」

「はい……」

怒られた。果物は割と好きなのでそういう物があるのか聞いたらかなりあるらしい。ファイが何かお勧めがあると言うので任せた。


運ばれてきた飲み物を軽く掲げて乾杯をする。選んでくれた酒は口に含むと爽やかな甘さとパチパチとした刺激を感じる。

「水より拍手水と割ると美味いんだ、その果実酒」

「うん、美味しい」

ファイが言っているのは恐らく炭酸の事だ。こっちじゃ水で割ったり氷だけ入れて飲むのが主流らしい。

すぐに料理も運ばれてきて、全員皿を片手に気になる料理をよそっていく。自分は何かの肉をバターで焼いた料理を取って食べたが、いつも口にする肉と違い淡泊な味だ。肉も白くすぐに解れてしまう。

「これ何だろう」

「白魚のバター焼き。これも絞ってかけたら美味しい」

「これが魚……」

随分肉とは違う食感と味がする。黙々と食べていたら四人が不思議そうに見ている。

「魚初めて食べた人間を初めて見た」

「そういえば内陸部出身だって言ってたもんな」

今住んでいる街がある国は内陸に位置してはいるものの、湖沿いの国から魚は定期的に入ってくるんだとか。他に魚料理は無く見慣れた肉や野菜の料理で、一通りを少しずつ摘んで食べた。


野菜のサラダを食べていたらずっとフードに入りっぱなしだった鳥がおこぼれを欲しそうに腕を伝って降りて来る。ソースのかかっていない野菜の端を少し摘んで渡すとついばみ始めた。

「可愛いちゃん。名前どうするの?」

アヴィが鳥を側から軽く撫でている。名前の事をすっかり忘れていた。

「そうだなあ……ゼーレ、とか」

ルスタ同様魔物名からが無難かな、と口にした途端また引っ張られるような感覚。こんな軽く名前の候補を上げただけで契約成立してしまうのもいかがなものかとちょっと思う。

「ゼーレちゃん。よろしく」

アヴィの言葉によろしくと返すように鳥は鳴いていた。


その後も歓談はしばらく続いて。店員さんに時間を告げられて解散となった。

食卓を囲んで友人と話をするのはいつぶりだったろうか。少し感慨に耽りながら帰路についた。

しれっとお名前の決まる魔物(鳥)さんであった。

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