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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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20.魔物と魔法Ⅱ


鳥を保護した翌朝。


リツ兄と朝食の用意をしながら洗濯物を干しに行こうとするソウ兄に声を掛けた。

「ソウ兄が受けてた依頼内容、昨日聞くの忘れてたんだけど何受けて来たの?」

「今日は討伐だけ。近場の草原に魔物出てるんだってさ」

「草原か。なら昼飯作って持ってくか?多分仕事終わらせたら昼位になるだろ」

いつもは適当に街の食料品店で軽食を見繕っているんだけど、たまには良いかもしれない。

「さんせーい!」

「シュウはどうせ食うの専門だろ……」

「もちろん!俺が作ると台所が大変な事になるよ〜」

「お前絶対此処に立つな。ついでに兄貴も立つな」

「俺何も言ってないのに」

ソウ兄とシュウ兄は洗濯物を干しに庭に出て行った。二人は料理はどうも苦手らしい。下ごしらえ程度なら任せてもいいんだけどな、とリツ兄はぼやいていた。


保冷庫に放り込んでいる鞄を探ると昨日貰った肉や採ってきた野草、卵と野菜類があるので色々作れそうだ。リツ兄と相談してサンドイッチと数品料理を用意する事に決めた。

持ち運び用に木の皮を編んだ箱を棚から出し、料理を入れる為の小さな入れ物を仕切り代わりに並べる。


卵を茹でている間、自分はルスタの世話の為に庭へ向かう。洗濯物を干す横で寛いでいたらしいルスタが自分の姿を確認して立ち上がった。

「おはよう。今日は草原の方行くからよろしくな」

飼い葉を餌場に入れて、食べ始めたところで乗る為の鞍を着けさせて貰う。

早めに仕事が終わったらたまには自由に走り回らせても良いかなと思う。いつも歩いてばかりだし。


ちなみに昨日の鳥はというと、調理中の自分に配慮してかテーブルにいた以外は朝からずっと自分の肩の上に止まったままで、たまに左肩から右肩へ、右肩から左肩へと移動したりしている。と思ったら少し屈んだ時に服と胸元にできた隙間に滑り込まれて思わず変な声を上げてしまった。

流石に声を上げられて鳥もびっくりしたらしく、また肩で大人しくしていた。ごめん。


再び台所へ戻って昼食作りを手伝う。焼いた腸詰めを箱へ詰めたり、野菜を蒸して余計な水気をとったり。おかず類にかけようと考えていた調味料はこぼれたらいけないので小分けにする為小さい容器へ詰め替えたりした。

「こんなもんか」

「水筒にはお茶でも入れてく?」

「ああ、もう沸かしてるから……粗熱取れたら入れるかな」

その前に朝食だと、洗濯物を干している兄二人を待って揃ったところで食事をする。パンくずを手に置いて鳥の方へ持っていくと啄んでいた。



外出準備を整えて、ルスタの手綱を引いて自分は庭から外へ出る。近所の奥様方が裏手の井戸の所で話をしていた。挨拶すると、今日の行き先を聞かれたので依頼の為に近くの草原まで出る事を伝えた。採って来て欲しい野草がある様だったので特徴を聞いて、草原歩いて見つかったらという軽い約束で了承した。

「母さん方は何か欲しいって?」

「この時期草原に自生してる野草があるんだって。依頼終わったら探したい」

「俺も気になるな」

料理好きなリツ兄は結構近所の奥様方とご飯の献立話とかをしている。こっちの食材での料理も基本はあまり変わらないみたいだけど、下処理の仕方とか食材ごとのお勧めの調理法とか、来てから色々教えてもらったらしい。

見つかったらとは言うけど日頃お世話になっているから時間があればちゃんと探したい。

討伐依頼が最優先ではあるけど、本来魔物の少ない草原なら散策も楽しそうだ。




近場の草原は徒歩でも一時間半位。街道からは少し逸れている場所だが、たまに兎なんかを見かける長閑な場所だ。

「向こうの森から魔物が出てきて草原に居着いたんじゃないかってさ」

ソウ兄が指差した先には木々がかなり生い茂った場所がある。ああいう風に隣接しているなら草原の方へ流れてくるのも頷ける。

「そういや、森は魔物の発生も多いって話だよな」

「何でだろうね〜」

『それはですね……自然がより豊かな森の方がより魔力が豊富だからです』

「そうなのか」

『はい。ですから魔物の発生も草原より林、林より森の方が頻度は高くなります』

リズルは当然の様にいきなり会話に入ってくる。彼女なりに一応、自分達以外に人間が居ない条件下で、人払いを掛けて来ているとの事なので自分から何か言う事は無い。無いけどやっぱり内心凄い驚く。


「で、その例の魔物は?」

「あれかな〜」

遠目に何か群れがいる。群れなのか。こっちに気付いたみたいでどんどん近付いている。

「多くね?」

「多いね」

『アキ殿が魔法でまとめて倒してみては?』

「がんばれアキくん!」

シュウ兄はもう応援体勢になっていた。と、言われても広範囲に及ぶ魔法なんて未経験だ。使うなら属性は多分風とか光が良いと思うけど。火とか起こしたら大火事になりそう。そんな災害を起こす訳にはいかない。


『宜しければお力になりますので』

「うん、よく分かんないけどよろしく」

肩の鳥も何故か張り切って鳴いている。なんでだろう。

『アキ殿、光の矢を沢山出せますか?撃ち出しましょう』

「矢、か。うーん……」

まだ馴染みの薄い矢よりも、関わってきた時間の長い銃弾のイメージがわくけど。と思いつつ深呼吸して魔力を杖に込めると小さな光の玉がぽつぽつと空中に浮かんできた。これを群れに向かって勢いよく撃ち出せば攻撃出来るだろうか。

「これで、いけるか?」

『はい。私もおりますから』

撃ち漏らしがあまり多くなければ良いな、と杖を振って光弾を放つ。想像したよりも速いスピードで群れに当たり、魔物の悲鳴が幾つも上がった。

「おお、凄いな」

「残った奴ら倒せば良いか?」

十頭程動いて、此方にまた向かってくるのもいる。後は兄達に任せた方が無難かな、と思ったら肩で大人しくしていた鳥がいきなり頭の上に乗って鳴き出した。

「?」

自分の周りには先程より少ないが光の玉が再度浮き始めた。と思ったら群れに向かって放たれる。

『ゼレアウェスは魔法の模倣が出来るんですよ。精度や威力は少し落ちますけど』

「すごいな、お前」

頭の上からまた肩に戻って来た鳥は少し得意げに鳴いた。頭を撫でると指に擦り寄って来る。

鳥のお陰で残りの十頭程も動きが大分鈍くなった。そこを兄達がとどめを刺して、案外すぐに依頼は達成された。


「こんなにいると思わなかったね」

「全部持ち帰るか〜」

「後ではぐれてんのいないか見て回った方が良いかもな」

浄化用の水足りるかな?と心配したが、思ったより広範囲に血は無かったので支給された物だけでなんとかなりそうだ。

「リズル、ありがとう。助かった。多分俺だけじゃあんなの出来ないし」

『私は提案と少し手助けをしただけですから……後は日頃の感謝です』

「感謝って……俺は別に何もしてないけど」

『先日の御礼も兼ねました』

リズルは笑って、くるりと回る。白く長い髪にはこの間渡した髪飾りがあった。


「着けてくれてるんだ」

『ええ。他の管理者にも自慢しましたよ!』

「自慢……」

リズルは神なのにそういう所は人間と然程変わりが無いんだな、と苦笑いした。他の管理者である神がどういう反応をしたのか少々気にはなるが。


リズルは笑いながらまた来ます、と言って消えて行った。同時に後方から人の気配を感じる。

「ソウ達こんな所で討伐してるのか?」

「久しぶり」

声をかけてくれたのはアヴィとディルだった。

あれ……魔法……

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