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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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18.薬師の組合と訓練の話

後魔物の話です。




ギルド区と称される区画には討伐者、商業、薬師の組合が比較的近隣に建っている。組合間の梯子も徒歩で可能な為勤務時間内では組合員が組合の間を行き来したりする位だ。


「じゃあ、薬師の組合行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」

先日セーナの両親に渡された紹介状片手に薬師の組合へと向かう。一応徒歩圏内ではあるものの、あまり兄達を待たせる訳にもいかないのでルスタに乗せて貰っている。

兄達は依頼の報告後訓練所で待っているそう。こっちに来てからはあまり互いに組んで訓練をやる機会が少なかったから体を動かす、と言っていた。


薬師の組合の建物は、全体的に少しくすんだ緑色の外壁をしている。掛けられた看板には薬草であろう草と調薬器具である乳鉢を模している意匠が使われていた。

ルスタに外で待ってもらうよう伝え中に入ると、薬独特の香りが屋内から漂ってくる。中は討伐者や商業のギルドよりも小さくあまり広くはない。より専門的な組合だからかも。


「すいません。資格の取得について教えてください」

受付のカウンターはどこも設置され、天井からはどの窓口なのか分かりやすく内容の書かれた板が吊るされている。資格関係の受付の男性に声を掛けると、すぐに対応してくれた。

「はい。試験は二種ありまして、今週は既に終了してますから来週以降の受験予約になります」

そう言いながら男性は試験を受ける為の申込書を渡してくれた。受けたい階級の欄に印を付ける様になっている。

「後、此処に来たらこれを渡す様に言われてるんですが」

鞄から紹介状を出して男性へ手渡す。

「内容はこちらで確認しても?」

「大丈夫です。お願いします」

「では待合の椅子で待って頂いててもいいですか?」

男性の指す方向にあるのは長椅子と本棚だ。頷いてそちらへ移動した。本棚には薬草や薬にまつわる本が並んでいる。割と一般向けのものが多そうだ。手近な本を一冊手に取ってみると前に図書館でも見た薬草を使った料理の本の別版みたいだった。香草扱いも多いからか案外材料にする料理は多いらしい。


何冊か取っては軽く目を通していると受付の男性が自分の所へ来てくれた。

「お待たせしました。紹介状の確認が取れましたので、色々説明させてもらっても良いですか?」

「お願いします」

男性に促されて別室に移動する。討伐者ギルドの応接室とは違い、普通の椅子とテーブルが設置されていた。テーブルの上には既に書類などが並んでいる。

「資格取得にはまず講習を受ける必要がありまして、紹介状にはその免除について書かれていました」

「そうでしたか」

「ですのでアキさんは来週以降受験をして頂き、合格点であれば初級の資格を得られます」

講習も気になる様であれば受けても特に問題ないらしいが、恐らく既に勉強した内容と重複するだろうとの事だった。名前をいつの間にか把握されているが紹介状に記載されていたんだろう。

「講習も試験同様予約制です。こちらが提示する候補の日時から選択してもらう形ですね。紹介状によるとアキさんは初級から中級程度の講習を受けている形の様ですから、もし受けられる場合は参考までに」

「……俺、二回しか教えてもらってませんけど」

「講習は一回一、二時間程度なので……長い時間教わっていたら数回分の換算になりますね」

男性はそう付け加えてくれた。一応特別扱いにならないかは確認したけど、獣人の村の人達は村内で習って受けに来る人が多いからよくあるとの事。



試験の申込手続きも終わったので担当してくれた男性に御礼を言って討伐者ギルドへ向かう。ルスタに乗ったまま、外から訓練所の方に行ってもらった。


以前試験の際に足を踏み入れた訓練所だが、受付等のある建物の隣に整地された広場があって、その中に的や人形など訓練の道具が設置されている。練習用の武器の貸し出しは受付でやっていて、既に勝手が分かっていれば断りだけ入れて倉庫から出す事も出来る様だ。

「お、アキか。薬師の組合はどうだった?」

「此処とはまた雰囲気が違って……こぢんまりしてますね」

ウィドさんに声を掛けられた。一応偉い立場でも実技担当だと言うし訓練所にいる事は不思議ではない。よく会うけど。


「今日は誰かの指導ですか?」

「いや。ソウ達がなんかやってるから興味本位で見に来てたとこだ」

さっきから耳に入れない様にしていた打ち合いの音の方を向くとソウ兄とリツ兄が久々に本気でやりあっているので怖かった。

「あーアキくんおかえり」

「シュウ兄。ぼろぼろだね」

「そー! 兄ちゃんが手加減無しだからもうたいへーん」

シュウ兄はあちこち擦り傷だらけになっていた。服も土が付いて汚れていたので大分地面に転がされたと思われる。

「試験した側からするとシュウはかなり戦闘能力が高いと感じてたが……」

「ウィドさんソウ兄がどれくらい戦えるか見てないですもんね」

思い起こすと最初に実技の試験を受けた時は、弓の腕を見せていただけだった。あれも銃に近い形状とは言えその場で渡された初見の武器を見て触り、行き当たりばったりで使っていた。なのに使い方も命中精度も完璧で経験者にしか見えない位で、現在においては最早言う事も無い。


「こりゃアレだ。採点を間違えたな」

ウィドさんは苦笑いしている。気付くと音が止んでいたので終わった様だ。

「リツは相変わらず左を突かれるとちょっと弱いね」

「これでも直した方だ」

リツ兄はそんな事を言われつつ服の砂埃を叩いている。対するソウ兄は全く地面に手をつけてないんだろうなと思われる。

「ソウは単身でやっていくにも十分すぎないか?」

「弟達と連携取れる方が複数相手に強いですからね。状況によって武器は替えれるのでこのままで良いんです」

「元々ソウ兄指揮する立場だったのでそっちの方がいいのかも」

「て事は隊長とか団長格か。なるほどな」

ウィドさんちょっと残念そうだった。ロシェさん達曰く、訓練を受けずに資格を取りに来る実力のある人は最近少ないので、自分達の事は少し目をかけている様だと。

「ウィドさんも十分強いじゃーん」

「俺は嫁と子供がいたからさっさと引退したさ。年考えずに突っ込んで死んだら色んな所に迷惑がかかるしな」

なんて言っているが、先日意気揚々と探索の引率してくれたのはどこの誰だったか。


「二人共怪我大丈夫?」

「こんなん怪我の内に入らねえよ」

擦り傷だらけなので何か薬でも塗るといいかなと鞄を探っていると、ルスタが二人に近付いて服の裾を掴んでいた。


「うわーなになに? なんも持ってないよ〜」

「何かしたいみたい」

二人を引き留めていたルスタがひと鳴きすると、前にリズルに痛みを消して貰った時に見た淡い光が現れるが、直ぐに消えてしまった。

「お。手が綺麗になったー」

見せて貰うと擦り傷があった箇所は完全に治ってしまっている。


「怪我を治したかったんだろ」

「あ、そうでしたか。ルスタ魔法なんて使えたんだ……」

魔物の中には魔法を使うものもいるとぼんやり知識はあったが、そもそもルスタが使える事は知らなかった。治癒の魔法なんてそもそも自分達が怪我をする事がなかったから尚更。

「治癒魔法や結界魔法は魔物の方が人より優れている事もあるぞ」

「凄いですね」

「俺はアキが凄いと思うが……お前の指示も無しに行動してるからソウ達の事もきちんと認識しているんだろうな」

「兄さん達に預けても言う事聞いてるみたいです」

「いや主人以外の言う事は聞かないだろ……」

「えっ……」



この後懇々と再び別室で魔物使いについての説明と説教を受けたのはまた別の話である。

兄達は自分が戻るまでルスタを見つつ訓練していた。助けて欲しい。

前回の後日談的位置づけに書きました。前回主人公達は普通に街帰ってギルドに報告して家にお帰りになったので特記事項はないって感じです。

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