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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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16.獣人の村再びⅢ

またちょっとした邂逅編です。



畑を荒らす魔物を討伐した翌日。早朝から森の中に出没している魔物を探しに来ていた。


朝早くても空の光はもうすっかり明るく、あちこちの木々の間から光が差し込んでいるが、森の奥は繁った葉のせいで少し薄暗い。

「森の中に出るのは多分馬型の魔物だって」

「ルスタとは違うやつー?」

「みたいだけど……シュウ兄も聞いてたよね、話」

魔物は同じ動物を基本とし、違う変質を遂げた形で何種類か存在していると言う。今回探している森に潜んでいる魔物も馬の姿ではあるけど額部に角が生えていたとか何とか。ある意味一目で魔物だと分かる変化をしているから一見毛色が違うだけのルスタよりは見分けやすいかもしれない。


森の中は道らしい道がある訳ではないが、組合の人達が定期的に歩く為か一定の距離で木の幹に目印になる明るい色の紐なんかが括ってある。それを頼りに少しずつ奥へ入って行く。

とは言え目印もある程度の所までしか無い。目印が途切れた場所が踏み入って良いとしている森の最奥という事だ。

「魔物の気配する?」

聞いてみるが、リツ兄とシュウ兄は首を横に振る。

森の中はとにかく静かで、自分達が歩く際に草を踏んだり茂みに当たったりする音が鳴る程度。風も吹かない為、葉の擦れる音ひとつしない。そんな状況なので生き物の気配が他にすれば分かりやすい。流石の自分でも音が聞こえれば分かるんだけど。


「奥に行くと帰れるかが不安……」

「リツかシュウに期待しよう」

「何をだよ」

最初此処に来た時はセーナの案内で無事村に出た。目印は無かったのに彼女は特に迷うそぶりも無く着いていたから、もしかしたら獣人は動物の様な帰巣本能があるのかも。後、ルスタも魔物とは言え動物だし、此処は元いた森だから案外道が分かってるかもしれない。

目当ての魔物が見つからなければ村の人達が困るのだし、奥に進む以外の選択肢はないので、無事迷わず帰れる事を期待するしかない。2人と1頭に。


「いっそもしもの時はリズルに……」

そう言いかけた時。

『皆様!』

頭上から声がして、見上げるとリズルがいた。

「まだもしもの時じゃないけどなあ」

『? なんのお話でしょう。それより皆様!』

リズルは何故か少し慌てている。何か有事だったかな、と思っていたが、どうも来た時と同じ場所に自分達が向かっているので、帰る手段等を探しているのではと判断して急いで来たらしい。

「村の人が森に魔物が出て困ってるから来てるんだよ」

「今探してるとこ」

『そうでしたかー……』

「えー。帰れないって言ってたのリズルじゃ~ん」

『はい……それはお伝えした通りなんですが』

言い淀むリズルは何かを躊躇った雰囲気だったが、そのまま話を続けてくれた。


『それを信じたくないと方法を探した結果、命を落とした彷徨人(かた)もいらっしゃいますから』

「……そういう事か」

最初に話をした時、他に自分達の様に迷い込んだ人間がいた事を示唆していた。神達(かれら)にとってそれまでの経験から彷徨人がそういう思いをもって動く可能性は、懸念事項のひとつなんだろうと思う。


「今の所心配には及ばないから」

『今の所?!』

「ソウ兄が揶揄ってる。そんなに悲壮感溢れた顔しなくても別に帰りたいとか思ってないよ」

自分は、だけど。兄達はちょっと分からない。

まだ一月も過ごしてはいないけど違う世界と言っても大した不便は無く、勝手の分からない事がちょくちょくあるな程度の感想だ。あの時迷い込まなくて、仮に別の国に運良く辿り着いたら今と似た様な感じだったのかな。


『ところで、魔物をお探しという事でしたね』

この話はそろそろ終わらせた方が良いかなと思っていたら、リズルの方から話題転換してくれた。探している魔物の特徴を一応リズルにも伝える。

奥に進みながら会話していたけど変わらず気配はしない様だ。こちら側は音を立てて進んでいるから魔物の側は気付いているかもしれないし、警戒されているかもしれない。

「見つかんないけどね~」

『……皆様は時期が良いと言うべきでしょうか』

「?」

そんな言葉に首を傾げると、突如暗さが増した。


見上げるとそこにいたのは、黒い猫だ。猫なのだが。巨大、というか足だけで自分の身長よりも高さがある。近付く音もなく気配もなかったのでただただ驚いて反応に困っていた。

「でか」

『紹介いたします。我が眷属の神獣です』

リズルがそんな風に紹介してくれた。猫の様相の神獣は警戒するでもなく自分達を見やり、首を垂れる。猫と比喩はしたが、鳥の羽のようなものが背中にあるし、生えている尻尾も猫のものではない。


「時期が良いってそういう事」

『はい。此処は眷属に管理を任せている森ですので』

前にウィドさんも同じ事を言っていた。管理とは何をしているのかを聞くと、溜まった魔力を散らしたりだとか、それが原因で発現した魔物の間引き等を行っているという。全滅させるのではなく間引き、なのは住人側の討伐の事を考慮しているとかなんとか。ただ他にも管理している森があるため、こまめに見ているという訳でもなく、住人側の対応が早い時ももちろんあるらしい。


「つまり」

『皆様の探している魔物はこの者が既に駆逐しているのではと』

「……それ一番困るんだけど」

リズルはそうですよねえ、と困り顔で神獣に魔物の事を聞いていた。精霊同様喋りはしないが言っている事は理解している様で、鳴いて返答している。しばらく一人と一頭の会話らしきものを眺めていたら神獣がどこかへ行ってしまった。


「どこ行ったんだ?」

『やはり仕留めていたので持ってくるそうです』

「また俺達の仕事なくなったね」

そういえば昨日夜の精霊との事を報告するのを忘れていたので神獣を待ちがてら話をした。ついでに落とし穴を魔法で作る事についても聞いてみた。

『空間魔法と併用すればアキ殿でも問題なくお使いになれるかと』

「併用か……そんな器用な事出来るかな」

要するに空間に一時的に掘りたい分の土を移動させるという事だろう。併用というよりほぼ空間魔法の領域の様な気がしている。一応土を動かすという意味では併用、らしいけど。

後、そもそも空間魔法の才能分野は今の魔法とは全く違うから使える事が周りに分かった時がややこしそうなので考えるのを一旦止めた。


「そうそう。リズルに聞きたいことがもう一つあって」

『はい! 何でもお聞きください』

「これ、リズルにあげたいんだけどどうやったら受け取れる?」

先日の髪飾りを鞄から出して見せると、随分驚いた顔をしている。

『わ、私にですか?!』

「今そう言ったけど。教会に預けたりした方がいいか?」

『いいえ! 今受け取らせていただきます! 今!』

何故か気合が入っている。どうやって受け取ってくれるのか分からないが差し出すと髪飾りが淡い光に包まれて消えてしまい、リズルの手元に移動した。

『まさか贈り物を頂けるなんて、感激です……』

「仮にも神様なんだから供物とか色々貰ってるんじゃないのか?」

『そうなんですが……』

よく分からないが、喜んで貰えた様なので良かった。リズルは嬉しそうに髪飾りを着けていた。着けられるらしい。


そんなやり取りをしていたら神獣が自分達が探していた魔物、だと思われる馬の魔物を咥えて戻って来た。恐らく爪で倒したらしい大きな裂傷が入っている。

「……とりあえずこれ回収して帰るか?」

「そうだね」

神獣、何やら得意げな顔をした後こちらに頭を向けてきたので撫でようとしたら昨日会ったと思われる精霊が頭にくっついていた。神獣の頭を撫でながら精霊にも挨拶をした。今日も機嫌良くくるくる回っている。

「アキくん怖気づかなくてすごいな~」

「流石に初対面は驚いたけど」


自分達の目的も終わったので、そろそろ村に戻る事を面々に伝える。精霊は頷いた後手を振って見送る姿勢になり、神獣は座った状態で尻尾の先を揺らしながらひと鳴きした。

「じゃあ、リズルまたな」

『はい。アキ殿、贈り物……ありがとうございました』

リズル、来た時とは打って変わってニコニコしている。余程自分の渡した物が気に入ったんだろうか。あげた方としては安心するけど。


戻り道が分からないかもしれないと心配したが、すぐに目印のついた木を見つけられたので思っていたよりも早く村へ戻る事が出来た。

結局ルスタの元居た縄張りは見つけるのを忘れていて、ルスタはちょっと不満気に見えた。予想外の事が多かったので行けなかった事は謝った。

神獣、大陸ごとに違います。ドラゴンもいる予定。

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