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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第1章:迷い込んだ『異世界』にて
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3.異世界と変化Ⅱ

治癒を済ませて貰ったので、再び荷物の確認に戻る事にした。と言いつつ自分は持ち物が少ないので兄達の持ち物の確認を一緒にするだけだが。


兄達の荷物は自分よりも持ち物が多く、短期のサバイバルを考慮して必需品が色々と詰められている。

因みにバッグは元いた所で支給されていたショルダーバッグをそのまま持ち出したので、皆規格は同じ物を使っている。案外容量が大きいので重宝していた。

「ゲッ、銃もねえのか」

「リツ兄、銃なんて入れてたんだ」

「小型のやつな。兄貴が使うかもと思って持ち出して来たんだけど……」

銃がこちらの世界にないとなると弓や投擲(とうてき)武器が主流なんだろうか。リズルに聞いてみるとやはりその様だった。大陸によっては銃の開発も進んでいるそうだけど、今いる場所ではそこまでではないらしい。

「ナイフはそのまんまだけど、コーティングなくなってるね〜」

何本か携行していたサバイバルナイフは大きな変化こそなさそうだが黒の艶消しがなくなっている。


「てか俺気になってたんだけどさ〜」

「うん?」

「兄ちゃんのサングラスはそのままなんだなーって」

「あぁ、これ?」

そう言われて見るとソウ兄の胸ポケットに掛けられたサングラスはそのままの状態だった。

こっちでも眼鏡をかける文化は存在するという事だ。

『此方でも眼鏡はありますよ〜』

「そうなのか」

『魔道具としてですけども』

「あ、使い方が根本的に違った……」

魔道具ってなんだろうな。

聞くと魔力を込める事で道具に付与された効果が作用する、もしくは発動するらしい。スイッチを入れて電気を通す様なものだろうか。

『なのでソウ殿のサン……グラス?も魔力の伝導しやすい宝石等に変質していますね』

「……一気に高価な物になった様な気が」

宝石なんて自分達は見た事も触ったこともないんだけど。

「やばいじゃん」

『そもそも皆様の世界ではそのサングラス?の使い方が違うのですか?』

「これは遮光の為なんだよね」

『なるほど……』

「後はこういう暗い色の物にする事で人の目を見て話してなくても気付かれにくいから」

『そんな効果が……!!』

後者の使い方についてはどうかと思う。でも魔道具として変化しているのであればそれも追々検証した方が良いんだろう。見えないものが見える様になりそうな気はする。


レーションもバー状の物から干した肉や果物、パンやビスケット等に変わっていたし水筒も元のステンレス製ではなさそうである。

布の類は一見すると変わりはなさそうに見えた。


「マッチも先端がなんかいつものと違うんだよな」

「こういう発火道具あるのか?」

『無いのですが摩擦の刺激を与える事で発火する鉱物があるので先端がその鉱物に変わっているみたいですね』

説明から察するに使い方は変わらない様だ。発火する鉱物が気になる。そういう物も自分が知らないだけで元の世界にあったのかもしれないけど。


後は金銭類だが、適当な布に包んでいたのが紐で入り口を縛るタイプの布の袋に変わっていた。中身を見ると全て硬貨で紙幣は無い。

此方では金貨、銀貨、銅貨、青銅貨、鉄貨が世界共通で流通していて、紙幣というのは基本流通していないらしい。袋の中を漁ってみると言われた硬貨は一通り入っている。

一般の市場では銅貨から金貨の流通が主で、それより下の硬貨は使われてはいるけどその3種類よりは頻度が少ないそうだ。また、金貨より上に白金貨等も存在するそうだが一般市民は然程お目にかからない様なので見る機会は無いだろう。特に無くてもいいかな。

あくまでも貨幣でのやり取りが基本だが、状況によっては代わりに宝石を使用したり、物々交換も特に珍しくはないとの事だ。


そして荷物を大方確認して分かった事。自分達の持ち物は大体が此方で採れる素材、造れる技術の物品に全て置き換わる様な不思議な措置になっている。

此方の世界で採れる素材が自分達の世界と共通したり似通った部分はさておき、共通しない部分は価値も希少性も汎用性も分からないのでその点が不安である。どこかでそれを学ぶ機会があれば良いけど、怪しまれない様に行うのは大変そうだ。


『あの、お伝えしておきたい事が……』

「なんだ?」

『皆様の鞄には全て収納魔法がかかっていますから、お持ちの荷物をひとつにまとめては如何ですか?』

「わー。また新しい単語が出てきた~」

「そんなんいくつも持ってて問題ねぇのかよ……」

『こ、此方ではそういった鞄を持って旅をする方は珍しくはないので大丈夫ですよ!』

不安だ。でもつくづく魔法とは便利なものだなあと思う。


収納魔法は空間に属する魔法で、使える人口は然程多くないが魔道具としてはそこそこ流通しているそうだ。基本的に空間内は時間経過は関係無く、収納量には個々で差がある様だが自分達の鞄はどの位の物がどの程度の量入るのだろうか。これもどこかで検証の機会を設けないといけない気がする。でもどうやって検証したら良いのか。


「……あのさぁ」

『は、はい!リツ殿なんでしょうか……』

「アンタらから見たら俺らは侵入者なのに、なんでわざわざご丁寧にこういう事してくれるんだ?」

「そうだよね。俺達って本来こっちにはいない存在だしね」

言われて見ると確かにそうだ。ほっとけば多分そのうち森の中で死ぬかもしれない自分達にわざわざ姿を見せてまであれこれとこの世界について説明をしてくれる彼女や世界神とやらに何か利はあるのだろうか。


『それは……皆様が元の世界へ戻れる確率があまりに低い為に此方の世界への順応を促したい、と言いますか』

「絶対に戻れないって訳じゃないんだな」

『皆無、ではないのですが……確率の問題で皆無に近いとも言えます』

(ひず)みが発生するのがそもそも偶発的で、それも別世界のどの時代へ繋がるか、この世界の過去や未来へ繋がるか、等の予測が神であっても何故か不可能らしい。

だから自分達の世界に再び繋がったとしても同じ時代、同じ国に繋がるのは奇跡的と言える訳だ。

「詫びとしてやってるって事か」

『私も世界神様も、此方に迷い込ませてしまった責任の一端として行っている事です。お詫び、として考えるなら皆様からすると割りに合わないかもしれませんが』

だからこそ彼女は技能や武器なんかを授けると言っていたのかもしれない。少なくとも無能よりは有能な方が世界は生きていきやすいし。咄嗟に戦える術があった方が勿論生存率は上がるだろう。

その点に関してそれ以上自分達も彼女へ追及はしなかった。

銃は世界の狭間に消えた(?

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