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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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11.迷宮再びⅢ

ちょっと魔法の話も出ます。


ウィドさん達と別れて十一階層へと降りると目の前には何故か泉があった。崖の様になった所から泉に水が静かに落ちてきている。


周りを見渡すと木が生い茂っているが、進むべき道は拓けていて分かりやすくなっていた。

「この泉なんだろう」

「さあな。リズルがいりゃ説明してくれんじゃねえか」

『はい!お呼びでしたか?』

「反応早いね」

今回は泉の上に浮かぶ様に現れた。そういう精霊みたい。神だけど。


「この泉って何?」

『これは浄化の魔力を蓄えた泉ですね。何か汚れた物などあれば洗って行かれるとよろしいかと』

この場所ごと浄化魔法がかかっている様な物らしい。今回は特に用事が無いのでそのまま次の階層に向かう事にした。

『皆様と迷宮でお会いするのは初めてですね』

「見回りとかしてんの〜?」

『迷宮はユシュトア様の管理ですから特には』

神であるリズルは管理する大陸の住人へ直接干渉する事はしない。代わりに神託を授けるとか、間接的に助けたりだとかはしている。らしい。



「地下って地上よりも魔力があるんだっけ」

道すがらリズルに尋ねる。不思議と魔物は全く出てこないので、最初からいないかリズルがいるから出ないかのどちらかだろう。

『はい。この世界の住人には知覚出来ない深層に魔力の源があって、それが地下を伝い地上へ上がる予定でした』

「予定……それが狂って迷宮が出来たのか?」

『その様なものですね。ですから迷宮の魔物を倒すとか、魔法を使うとか様々な方法で住人に魔力を地上に上げて貰っています』

「仮に住人がやらなくなったら?」

『それは無いでしょう。迷宮の副産物で成り立つ街や国もありますので』

国や街によっては迷宮で取れる物をそのまま輸出してたりもするとか。


「俺達十五階層まで行くつもりなんだけど」

『お供致しましょう!』

「暇か?」

目を輝かせながら揚々と言うリズルにリツ兄がちょっと呆れている。他に探索する人もいないし堂々と姿を現して話が出来るのがリズルは楽しいのかも。

「一緒に行くか〜」

「魔物は適当に俺達でやってるからアキと話でもしてて」

『ではその様に』

自分の意見は? というのを聞く間は無かった。別にいいんだけど。



「リズルは魔法に詳しい?」

『恥ずかしながらあまり。アスアやスピオは得意分野ですから分からない事は聞いておきますよ』

神にも分野に得意不得意がある様だ。リズルは農作物などは詳しいとの事。大陸自体農畜産が盛んだから、という。

「浄化とか、治癒とか、空間の魔法って今使ってる魔法とは違うって前に聞いたんだけど」

『そうですね。それぞれ独立した属性だと思った方が良いでしょう』

「独立……」

『予定の階層まで到達した際にまたゆっくりお話しましょうか?』

「そうだな。今は魔物とかの事考えよう」


この迷宮は階層を下る程、見た事の無い姿の魔物が現れてくる。兄達でも少し攻めあぐねていたのは元の世界ではまず見た事の無い大きさの蜂の姿をした魔物だった。刺されたら大変な目に遭いそう。

「アキ、魔法で倒せる?」

「やってみる」

火の玉をいくつか撃ち出してみたが避けられてしまった。

『微力ながら補助致しますね』

リズルがそう言うと、放った火の玉が戻って来る。流石に後ろから玉が来るとは魔物も思っていなかったのかあっさり当たって消えてしまった。

「追尾して攻撃してくれたら撃ち漏らしなくなるんだけどなあ」

「そりゃ楽だな」

前から思っているけど構想が全く練れない。いつか実現するんだろうか。


十四階層は土を固めた天井や床、壁が続いていた。所々天井から吊り下げられたランプが煌々と周りを照らしている。

魔物は虫型が主になってきた。動きは然程素早い訳でもないので、飛び回らなければ割と倒しやすい。とシュウ兄談。


「なんでこんなに迷宮内は環境が変わるんだ?」

『ずっと同じ景色を見続けるよりは良いのではないですか?』

「うーん……」

確かに砂漠とか、見た事はないけど雪原とか出てきたら心折れそう。迷宮の気温は感じる限りほぼ一定だからそんな過酷な環境の階層は無いだろうけど。あって欲しくない。


「なんかいる〜」

「大きいね」

洞窟を奥へ進むと壁と比喩しても良い位の、土で出来た大きな魔物が通路に鎮座していた。近付いても威嚇や攻撃もせずジッと頭部分に空いた空洞の目で自分達を見ている。


「これが魔動人形かな」

「みたいだね」

迷宮に入る前に魔物の情報は簡単ではあるが目を通したし、道中下層の魔物について教えて貰ったりしていた。魔動人形も迷宮でしか見ない不思議な魔物だ。スライムみたいに核が体の中にあって基本はそれを狙って倒すらしい。

地上でも同じ様に魔力で動かす大型の人形の研究をしていると言うけど一体何に活用するのか。

「通りたいんだけど、退いて貰えるのかな?」

『戦意が無ければ土の塊ですからね』

普通なら襲って来る様だけど、もしかしたらリズルがいるから大人しくしているのかもしれない。


自分達が通りたいのを察したのか、人形は道を少し開けてくれた。

「ありがとう」

「デカいな〜すごいな〜」

シュウ兄は人形の足をペタペタ触っている。攻撃している訳ではないからか人形も大人しく触られていた。

「ほら迷惑だからやめなさい」

「はーい」

奥に進むと蛇やスライムが出てくる。スライムは前見た時と色が違うし少し俊敏だ。それでも兄達が苦戦する様なものではなくあっさりと全滅した。

「あれが扉か」

「五階ごとに帰れる装置があるけど、十五階もキャンプ地なのかな」

「普通に進む速度を考ると五の階層は全部そうなんじゃないかな。実質此処で魔物が出て来るのは終わりだと思うよ」

『はい。この下の階層は魔物は出現しませんよ』

それであれば後は帰還するだけだ。それなりに魔物も倒したし、落ちていた素材も集めてきた。この階層も他に探索する部屋は無さそうだし。と思っていたら後ろから地響きが聞こえる。


「さっきのが来た〜」

「どうしたんだろ」

人形は自分達のいる部屋まで入ってきた。もしや戦うのか?と思ったら違うらしい。部屋の横壁を殴って戻って行った。殴られた壁には穴が開いてしまっている。

「……なんか見えねぇ空間があるとは思ったけど」

「隠し部屋かあ。教えてくれたのかな」

「アイツに乗って戦ったらカッコいいよな〜」

「乗るの?」

人形が開けた穴の部屋を覗いてみるが、魔物は居ない様だった。代わりに小さな箱がぽつんと一個置いてある。


「罠?」

「いや、罠は無さそうだな。でもシュウに開けさせるか」

「俺犠牲ー!」

そう言いながらもシュウ兄は勢い良く箱を開けている。中には様々な色をした綺麗な石が沢山入っていた。大体は手でつまめる位の大きさだ。

『折角ですから持ち帰られては?』

「そうする」

宝箱の中身を余っている袋に詰めてから鞄に入れ、十五階層へ向かう。潜るとやはりキャンプ地の様で魔物は全く出てこなかった。



「少し休憩してから帰ろうか」

『それでは、先程アキ殿に質問された魔法についてお話しましょう』

リズルは咳払いする様な仕草をした後説明してくれた。

まず浄化魔法。住人の中では汚れを落とす為の魔法として広く知られているが、元々は汚れというより穢れを落とす為の魔法らしい。最たる物が呪いの浄化だ。

『汚れを落とす為に魔力を使う事を考えれば皆様なら比較的簡単に使えますよ』

「リツは使えるといいんじゃないの」

「便利だろうとは思うけどな」


次に治癒魔法。文字通り治す為に存在する魔法だけどこの世界では同時に薬学が存在している。治癒魔法自体は余程重傷、ないし重症の場合に用いるものだというので頻繁に使われてはなさそう。

後は空間魔法だが。

「そもそも入れた物がどこに収納されてるのか気になってたんだけど」

『ユシュトア様がこの世界を創る時に使わなかった余剰を使用していますよ』

「余剰?」

世界を創る為に世界神が所持する空間があって、世界を創って尚余った空間を住人の収納魔法に活用しているという。ここで他人の荷物と物が混ざったりしないのがまた不思議なところである。その余剰は一体どんな状態なんだろうか。


魔法。あまりに混沌としている。謎が増えた気分。

お昼ご飯は10階層で多分食べてきた(多分)

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