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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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9.迷宮再び

ダンジョンあるのに案外潜らないのでダンジョン回です。

「お前達は何で迷宮に潜らないんだ?」

ギルドに依頼達成の報告で来ると、ウィドさんにいきなり聞かれた。偉い立場の人のようだけど、意外とよく顔を合わせるなと思う。

「何で……と言われても。特に理由はないですよ」

「潜れ」

指示というより最早命令だった。

「何でなんで~」

「あー……お前達は知らないのか。迷宮ってのは単純な冒険や宝探しの場じゃないんだよ」

そう前置きしてウィドさんは迷宮の事を教えてくれた。



地下は地上と比較出来ない程強い魔力に満ちており、何らかの作用によって迷宮を作り出したり消したりしている。迷宮の魔物は魔力により形成されるので、倒すと地上の様に血が出たり死体が残る事はなく、単純な魔力になって霧散する。魔物によっては体の部位や骨、肉、皮等を残す場合もあるが、その点に関しては割と謎も多いらしい。迷宮の研究者の間でも色々議論されているとか。


迷宮には階層がいくつもあって、扉の先が思い描く迷宮の形でないどころか理解の範疇ですら事は先日の講習で体験した。魔物もいるし罠もあれば休憩出来る場所もあるよく分からない場所だなとは思う。

後、迷宮が存在する理由。それは魔力を循環させる為、との事。魔物を倒したり、迷宮内で魔法を使用する事で地下に満ちた魔力を地上へ昇華する仕組みなんだそう。この辺りは神がそういう循環の仕組みを作り出したから以外の説明はなかった。


自分達は前にリズルから迷宮について少し聞いていたのでその辺り何となく分かっていたけど、神のやってる事なので理解がし難いという気持ち。



「ま、正直なところを言うと実力のあるお前達を迷宮に潜らせないのはこっちとしては痛いって事だ」

「実力を高く買って貰えるのはありがたいですけど……」

ソウ兄は苦笑いしている。思ったより元の世界での経験は役に立っている様だ。戦闘面だけだけど。

「迷宮潜るのって日数がかかるんじゃないですか?」

「キュリルスタングが心配か?」

聞くと懸念していた事を即座に聞き返されたので頷いた。講習の時はまだ家も借りていなかったから馬房に預かって貰ったけど。

「普通に全てを踏破するならやはり日にちは見てもらった方が良いな」

「やっぱり」

「ただ目的の階層まで突っ切るだけならそこまで時間はかからないと思うぞ」

さらりと言われたがそんなに簡単に突っ切れるものなのか。


「お前達に浅い層から丁寧に探索したり魔物を倒したりして欲しい訳じゃない。許可出来る限りで行ける下層で活動して欲しい。それなら日数もかからないし、実力を発揮するにも十分のはずだ」

兄達はともかく、あまり日数をかけたくない自分としてはありがたい提案ではある。

「まあ、それなら出来なくはないと思います」

「明日でも行くと良い。途中まで引率してやるから」

何故だろう。でもウィドさんなんか楽しそうである。


「なんで~」

「講習で一度しか降りてないんじゃまだ迷宮は不慣れだろう。行ってもらう迷宮は講習で行った所よりも少しだが難度は上がるし」

「俺達は構わないですよ」

「統括ばっかりずるーい。私も引率で探索申請出しますぅ」

受付にいたアンジェさんがそう言いながら片手を挙げ身を乗り出して来た。

「統括だけじゃなくアンジェもですか、珍しい。では折角なので休みですが私も合流しますね!」

ギルド閉館の札を出し終わり通りすがったロシェさんも勢い良く手を挙げて来た。

「おいおい……」

「そんなに適当で良いのかな」

自分も職員が二人も出払ってギルド大丈夫なのだろうか。と思ってたけど聞いたら人員は足りているらしい。自由がきいて良い仕事場だ。


「二人は元討伐者なんですか?」

「私ギルドで受付したかったんで転職しましたぁ」

「私は一緒に組んでいた人が抜けたので困ってたんですけど、アンジェに誘われて」

「へぇ」

聞くと二人は割と上の階級だったらしい。色々魔物とも対峙しているのでその経験を生かして依頼受付の仕事を担当しているのだと言う。

「此処は経験者の人ばかりいるんですね」

「そうでもないですよ。普通に国の試験を受けて就職している人もいます」

魔物や採取物の知識があるロシェさん達の様な元討伐者は受付なんかの応対が多くて、その辺りの知識を使わない経理や事務方の人達は討伐未経験も多いという。

「適材適所ってやつですぅ」

「私達には月のお金の動きとか帳簿合わせとかは向いてませんしね」

「そういうのは然るべきお勉強をして試験に受かった人達じゃないとー」

現役から退いた人達は他にも迷宮の管理担当や解体作業でも活躍しているそうだ。



「じゃあ、南区の正門近くに集合してくれるか?」

「分かりました」

「今回は朝入って夕方には抜ける予定で動くからな」

それなら問題ないだろう、とウィドさんに言われたので頷いた。朝も九時頃に集まる予定になったから潜る時間はそれなりに取れるだろう。

ルスタには馬房で待って貰う様に断りを入れると了承してくれた、多分。




翌日、約束の時間より少し前に正門へ到着したが、待つ間もなく直ぐに三人共来てくれたので、そのまま潜る予定の迷宮入り口まで移動を開始した。

「ところで。資格を貰うと探索出来る階が増えるんですか?」

「資格は潜る為に必要な戦闘技能の証明のひとつ、だな」

「と言うと?」

「迷宮探索においては資格を取る際に見せて頂いた戦闘技能面を重視して許可出来る階層を個別に付けていますから、討伐依頼を受けるのとでは基準が違いますよ」

ロシェさんが簡単に説明してくれた。討伐者ギルド以外にもそういった証明になる資格があるのでそんな言い方だったようだ。


「皆さん評価高いですからねぇ。此処の迷宮なら二十階層までは探索出来ますよー」

「そんなに降りれないよ〜」

「そうだなあ。今日は十五階層辺り目指して突っ切るか」

迷宮の管理室に挨拶をして、潜る為に資格証を提示する。ウィドさん達ギルド関係者がいる事もあって特に色々聞かれる事は無かった。

前知識も必要だ、とウィドさんに今回の迷宮に出現する魔物が書かれた本を渡される。前回講習で行った迷宮とは随分出る魔物が違う様だ。一通り目を通し、軽く説明を受けた後扉を潜った。



「さて、途中まで突っ切りますかぁ」

ウィドさん、ロシェさん、アンジェさんは迷宮入り口を潜って早々に武器を手にしていた。ウィドさんは剣でロシェさんは弓、アンジェさんは。

「なんですか?それ」

戦槌(ハンマー)ですぅ。近くにいたらぶつけますから距離感に気をつけて下さいねぇ」

アンジェさんが小柄なのもあるけど、戦槌はかなり大きい。柄部分だけでもアンジェさんの身長より長いし。


「かなり早足で抜けるつもりなんだがいいか?」

「アキは背負って行くのでご心配なく」

急いで階層を下るなら仕方ない事だ。完全に置いてけぼり食らうから。本当に申し訳ない。

「じゃあ俺が先導するか。ロシェとアンジェは一番後ろを頼むぞ」

「はぁい」

「承ります」

「俺はアキ背負うから、リツとシュウはウィドさんと前行ったら?」

「おう」

「やるか〜」

隊列も決まった所で移動を開始する。



前に出てきた魔物はウィドさんやリツ兄が切り伏せたり、シュウ兄が蹴り倒したりしていた。ロシェさんは移動しながらも近付いて来る魔物を仕留めている。

「案外する事ないですねぇ」

「今は無くてもいいんじゃないですか?」

「それもそうですねぇ」

目的の階層で多分強い魔物と対峙するなら、温存出来る物は温存しておいた方が得策だと思う。

しかし浅い階層とは言え先日の講習で行った迷宮よりは難度が高いらしいのに、何の苦も無く魔物を次から次へと倒してしまっているのは何と言うか。

「目的階に急ぐ訳だなあ」

「確かにね」

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