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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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8.精霊Ⅱ

不測の事態に家に急いで戻り浴場に行ったり着替えたりしていたら、ギルドに到着したのは夕方近くになっていた。もう人もまばらだ。



先に今日終わらせた依頼の達成報告を行った。倒して回収した魔物と採った薬草は預けておいて、報酬関係はまた明日にでもと言う事で早急に。明日受ける依頼の精査までは時間が無いので見送りだ。

「すいません、お待たせしました」

「いや大丈夫だ。この時間ならもう人も少ないしな」

自分達の手続きが終わるのを待っていたウィドさんに促され、応接室へ入る。ソファへ座るとウィドさんは切り出す内容を悩んでいる様でちょっと唸っていた。

「うーん……何から話したもんか」

「精霊が視える事はもしかして悪いんですか?」

自分の問いにウィドさんは首を横に振る。悪い事ではない様だが。

「精霊ってのは視えないんだよ普通はな。視えないモノが視えるってのは、特別な能力だ」

そう言って、溜息を吐いた。



こっちの世界の住民は精霊が神同様にいるという事を知っていて、今日みたいな突然の天候変化の様な事象を起こす神の眷属だと認識されている。天候変化、とは言ったものの天気の存在しないこっちの世界においては精霊だけが気まぐれに使う力で気まぐれ故に悪戯と称されている様だ。

精霊は神と同じくその気配や姿を認識出来る人は珍しいらしく、神職に多い。というかそういう能力を持っている人は大抵の場合神職に就いているとも言える。


「お前達……実は神も視えるとか言わないよな?」

「いや、まさか……」

「ねぇわ」

二人して否定しておいたが、実は今日会って話しましたなんて言ったら一体どうなる事やら。

「で、ソウとシュウも視えるのか?」

「気配位でしょうか」

「同じく〜」

先程のウィドさんの反応を鑑みてか、二人はそんな受け答えをしていた。それこそ全員視えてます、なんて場合もそれはそれで頭を抱えられそうどころか胃を痛められそうな案件だからなあ。それでもウィドさんはまた大きな溜息を吐いている。


「敢えてこの話はしていなかったんだが、この際だし聞いておこう。お前達はどうやってあの森の奥に迷い込んだんだ?」

「……それは、どういう意味ですか?」

「簡単に言うとな、あの森は村の中にある入り口からしか奥へ入れないんだ」

最初に自分達が辿り着いた、ルスタを捕まえてセーナと出会ったあの森。森の奥に入る場所は村からしか開かれていないと言う。

街道も森に面しているのでは?と思いウィドさんに確認したが、何故か入り口以外からは森への侵入が出来ない様な、不可思議な魔法が元々かかっているらしい。


「でもなんでー?」

「あの森は神の眷属が手入れしてるらしくてな。必要以上に人に荒らされない為に結界を張っているのだと教会が告げられている」

ただしルスタみたいな魔物や動物は基本例外の様だ。

村の人達や村長さんは、自分達がそんな森の奥に迷い込んでいた事実を本当はかなり警戒していたのだな、と思う。

「信じて貰えるか分かりませんが、俺達も逃げてる道中に見つけた洞窟を進んでいて気付いたらあの森に出ていたので」

「よくわかんないけど来ちゃったんだよね~」

「……そうか」

そんな回答に、ウィドさんは腕を組んで何か考えている。答えた内容に隠している事はあっても嘘は無い。自分達も別世界に繋がってるとは思いもよらなかったけど。


「お前達は多分神の加護が付いているんだな。そうでなきゃ……大陸を挟んでまで逃す必要性はないはずだ」

戦争地域は確か北中央にある大陸の更に北部に存在するという話だ。どういう状況の場所なのか、戦況はどうなっているのか、一体どういう戦争なのか。何一つ分からないけど、それはどうもこの辺りの人達も同様らしい。それなりに長い期間、戦争が起きているという程度の事しか知らないという。

「加護……」

「お前達をその場所に留めておく事が不利益、というか良くなかったんだろ。神の行った事なら正直一番納得出来る理由だな」

結局のところ自分達が此処に居る事は不可解な事象なのだと告げられている訳だ。それこそ神が絡まないと納得出来ない程度には。


「加護を持っている人は他にもいるんですか?」

「珍しいがいるのはいるぞ。俺は今初めて対面してるけどな」

ウィドさん曰く、加護が付いているかどうかというのは結構位の高い神職者でないと判断出来ないらしい。機会があれば判断してもらえと言われてしまった。加護の基準がよく分からないが。

「まあ……とりあえず今日の事は誰にも漏らさない様にしておく。広まったらお前達の迷惑になるし」

「すいません、ありがとうございます」

門番の人にも改めて口止めしておくとの事。ただあの人はウィドさんと古い付き合いみたいなので信頼出来ると。その辺は完全にお任せしておいた。


帰宅して夕食準備をしていると、リズルがまた来てくれた。今日見た小さい妖精みたいな、恐らく精霊達四人を連れて。

「リズルその小さいのは……」

「なんかきた~」

『精霊達です。よく言い聞かせたのですが……一度皆様に会うと聞かなくて』

リズルはシュンとしている。一応部下なのに従ってくれない所を見ると苦労しているんだろう。

精霊達は多分それぞれ司っている属性ごとに来たのか外見も纏う雰囲気や色合いも全然違う。さっきから皆そわそわとしている。


『ほら、皆様にきちんとご挨拶なさい』

リズルが手を叩くと、精霊達は服?の裾を持ったり胸に手を当てて頭を下げてきた。お辞儀をしているらしい。

こういう事が出来るという事は、普段彼らはこっそりなのか堂々となのか分からないけど住人達の所作を見てるんだろう。言われた通りに挨拶を終え頭を上げた精霊達はちょっと得意げな表情をしている。

「精霊ってもっといっぱいいるんだろ~」

『おりますよ。今回連れてきたこの子達はあくまでその代表、ですかね』

ただ、精霊達に個体差というのは存在していないとの事。本当にあくまでも代表者なんだろう。どうやって決めたのか気になる所。


「でも俺達に会いたいなんて、またどうして?」

『皆様は彷徨人ですから。この世界の規則に捉われない方々には興味があるみたいです』

他所から来た人間である自分達に興味津々だった様だ。他に来ている人がいるのでは、と聞いたらかなり昔に自分達とはまた別の世界から来た彷徨人にも随分ちょっかいを出していたとリズルは付け加えてくれた。

「ちょっかいは困るなあ」

「またずぶ濡れにされるんじゃたまったもんじゃねえ」

『それは言い聞かせましたので!』

リズル、子供をしつける母親というよりは弟妹に手を焼いてる姉という感じ。

精霊達は喋れはしないけど案外身振り手振りが豊富で主張してる事はなんとなく分かる。人に仕草が近いからというのもあるのかも。

「それで、会って満足したのか?」

聞いてみたら首を横に振られた。どうもまた来たいらしい。

『ダメですよ!』

「リズルが注意しても説得力がなあ」

『うっ……そう言われると確かにありません……』

そうは言ってもリズルも別に話しに来るのをやめる気はなさそうなので、結局自分達が妥協する事になる。


「俺は別にいいよ〜。ずぶ濡れは困るけど!」

シュウ兄は思いの外、来る事自体に拒否反応はないみたいだった。自分も時と場所と状況さえ読んでくれればリズルの事も精霊達の事も特に止めはしない。

『皆様のご厚意には感謝します』

「アキなら余程がなければ大体相手してくれるから」

『分かりました!』

「ソウ兄はどうして俺を生贄にしたの?」

ごく自然に人身御供にされた。



精霊達は常にこの辺りにいるわけじゃなくて一定の周期で大陸中を回っているらしいので時期なんかが合えば顔を合わせる、という事で話がついた。帰るリズルと一緒に皆手を振って消えてしまった。

ほとんど知り合いもいない世界で新たに顔見知りが増えるのは良い事だろう。他の人には見えないけど。しかし同時にちょっと困る案件を抱えたなという気持ちにもなった。

精霊達、リズルと違って喋らないのであまり出てはこないと思いますけどまたピックアップしたいなとは思います。

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