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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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6.鞍とお金の事


ジョーさんにルスタ用の鞍一式を頼んだ時1週間程作成に時間が欲しいと言われていた。なんだかんだで気付いたら今日がちょうど受け取り予定日だった。



それを思い出したところで、依頼の討伐が終わった帰りにギルドに報告へ行く兄達と別れジョーさんのお店に寄る。用件を伝えるとカウンターにいた少年がジョーさんを呼んできてくれた。

「坊、来たか」

「今日だったかなと思って」

「おう。今日で合ってるぞ。キュリルスタングは外にいるな?」

「はい」

外に出るとルスタが近付いてきた。ジョーさんを見て何かを把握したらしくピシッと体勢を整えている。


「コイツも分かってるのか?」

「多分。ルスタ、鞍出来たから着け替えるよ」

一応声をかけると了解した様で鼻を鳴らす。借りていた鞍を外してジョーさんにお礼を言って返した。ジョーさんは受け取って直ぐに頼んでいた鞍一式を持ってきてくれる。

「坊の希望通りに作ってやったぞ。着け方は変わらんが付属で着けられる物がいくつかあるから教えておく」

普通に跨って乗る場合と自分の様に横座りで乗る場合とで、ジョーさんはいくつか簡単に変更できる様にしてくれていた。手綱以外にも鞍の前側に掴まれる持ち手があったりする。


着け方を再び教わりながら鞍や他の馬具を触っていると、借りていた鞍よりも随分触り心地が違うなと気付く。

「素材、借りてた物とは違うんですね」

「そりゃ貸したモンと作った商品じゃ違うのは当たり前だろうが」

言われてみればそれもそうだ。ルスタの体のあちこちを測って作られているし、着けられ心地も違うのだろうか。こればかりはよく分からないけどルスタを見ると悪くなさそうな雰囲気はしていた。

「後は坊が実際乗って気になる所は直してやる」

「ありがとうございます」

「そういやいつもどうやって乗ってんだ?」

ジョーさんから聞かれた途端にルスタがいつもの様に腰を下ろしている。石畳の舗装道なので脚が痛そうだから直ぐに立つ様に言った。

「えーと。こんな風に……」

「ほー、そうかそうか。乗る為の台が必要ならと思ってたがいらん心配だったな」

鞍を以外の事も色々気を回してくれていたらしい。ありがたい事だ。


「そうだ。お金、いくら位ですか?」

「おう。大事な事だな」

ルスタに待って貰う様にお願いしてから再度店内へ戻り、奥へ引っ込んで行ったジョーさんを店内に備え付けられている椅子に座って待つ。程なく戻って来て書類を数枚渡された。

「今回作ったモンの一式と作業代それぞれの金額と、一番下が合計だ。しめて金貨七十枚だな!」

「い、今持ってるだけとりあえず出します」

元の世界から持ってきていたお金はこっちの世界の貨幣類に変えられている。その中に金貨もそれなりに入っていたはずだ。貨幣をまとめている袋からテーブルに金貨を出していくと三十枚程あった。

「じゃあ三十枚をまず貰っておくぞ。残りはある程度まとまってからまた払いに来い。その時に直しが欲しい場合はやってやるからな」

直しの作業のお金は要らないと言われた。一応仕事もしているから頑張って貯めてまた払いに来なければ。


「なんだ、坊はこの辺りの人間じゃねえんだな」

「……え?」

いきなりジョーさんからそんな事を言われてどきりとする。どうして分かったのかと内心焦っていたら今しがた渡した金貨を一枚見せられた。

「全部北央大陸の金貨だぞ。もしかして大陸ごとに彫りが違うのを知らなかったか?」

「はい……誰からも指摘されなくて知りませんでした」

ジョーさんはそんな自分の答えに随分世間知らずなんだな、と笑っている。まさか別の世界から来た事が分かってしまったのかと思っていたのでちょっとホッとした。


「坊の持ってる金にはこういう彫りがあるが、此処の大陸ではこっちの彫りになってんだ」

二枚並べられた金貨には全く違う絵が彫られている。自分が持っていた金貨には食事用のナイフと円、此処の大陸で使われているという金貨には麦らしき穂が彫られている。

「こんなに違うのに使えるんですね」

「各大陸で彫りは違うが貨幣自体は規格が世界統一されてんだ。だから大陸を渡っても替える手間が省けて良い」

大きい街にはお金の関係を扱う政府機関が存在していて、もしどうしても替えたいならばそこに持っていけば今いる大陸の貨幣に交換してくれると言う。お店も時々そこで貨幣交換をしているとか。機関が集めた別の大陸の貨幣は、大規模な貿易などの際に大陸同士で交換を行っているらしい。


「まあ一枚二枚出された位じゃあ不思議には思わんな」

「勉強になりました」

自分も支払いは何度かしていたけど確かに銀貨一枚とかを出す程度だったから気付かなかったしお店の人から指摘もされなかった。そもそもどこの大陸の貨幣でも使えるならそれでも問題は無いから指摘もなかったんだろうな。

「最初見た時もここらで見かけん顔だとは思ってたがなあ」

「色々あって最近この街に来ました」

「坊くらいの年でわざわざ別の大陸に移住なんざ色々あったに決まっとるな」

ジョーさんはうんうんと頷いていた。自分が詳しく話をしなくても何かしら理解はしてくれている様だった。やはり年を重ねているだけある。




「アキ、まだ手続きしてるの?」

その後ジョーさんと少し話し込んでいたら、ソウ兄が来てくれた。リツ兄とシュウ兄は夕食の買い物してから帰るそう。

お店には自分が来てからお客さんは全く来ず経営を少し心配したが、一見でくる人はあまりなくて定期的に商品を卸している取引先がいくつかあり、仕事はそちらが主だと言う。後は自分みたいに紹介状を持って来る人が時々いる位らしい。

「もう終わったんだけどジョーさんと話してた」

「そっか。支払いは?」

「えーと……」

ソウ兄に書類を見せて残りの支払い額を伝えると恐らく持っているので全額払えると言われた。


「まあそりゃ兄貴の方が金持ってるよなあ。アキ坊があんだけ持ってりゃ」

「一応それぞれ稼いだものですけどね」

元の世界から持っていたお金は所属していた所で出ていた報酬とか不用品を売ったりして貯めていた物だ。決してどこかから奪ったりはしてない。

兄達は自分より単に所属期間の長いからその分報酬も貰っていると思う。貯めてるかまでは分からないけど。それにソウ兄は立場的に上の方にいた事もあって、多分だけどかなりお金持ってるのではないかなあ。

「ちゃんと自分で払うから大丈夫」

「アキの事だから俺達が乗る場合も配慮して作って貰ったんでしょ。なら皆で共同購入でもいいんじゃない? 二人も話したら多分出すって言うよ?」

「う……」

仕様の事は兄達には何も伝えずに作って貰っていたのにバレバレだった。というか鋭いんだな、ソウ兄が。

ジョーさんは自分とソウ兄のやり取りを見ながら笑っていた。




一旦この件は持ち帰って、改めて話をしたら残りの支払いは兄達が出す事になりそうだった。それでは自分的にあんまりなので金貨十枚ずつだけお願いした。となると残りは十枚になるのでまだなんとかなる範疇だ。

「残りはー?」

「仕事始めたし……貯めたら支払いに行くよ」

「借金なんてさっさとなくせばいいのに」

「使い心地教えて欲しいって言われたから。もう少し後に行く機会持っておかないといけない気がして」

リツ兄からは苦笑いされた。

思えば少々我が儘かも。大体店側からすれば早くお金が貰える方が良いだろう。でも何となく、すぐ支払いが終わって店に行く機会を失うのが少し寂しかった。あまり行く機会のなさそうなお店なだけに余計。

新しい生活も何事もなくはないけど結果無事に始まったから、別の新しい目標が欲しかったのかもしれない。




次の日、支払いをしに店に行って兄達とした話をしたらジョーさんは用がなくても気軽に遊びに来いと言ってくれたので、なんとなく張っていた肩の力が抜けた。

現実の馬具一式、というか鞍なんかを見てみたらピンキリでした。お高いと70万くらいとかあってびっくりします。オーダーメイドしたらもっと高いんだろうなーと思った。

まあ書いてるのは異世界なんですけど。多分物価は割と安いはず。です。

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