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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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5.魔物使い


時刻は昼を過ぎた頃。朝一で近場の討伐と薬草の採取に出掛けていた自分達は既に街へと戻っていた。



「先に報告して昼食かな」

「さんせ〜」

門をくぐって真っ直ぐギルドへ向かう。

ギルドは賑わっており、お昼時なのに人が多いなと思って見ていたらギルド内に昼食を売りに来ている人が何人もいた。それを職員や討伐者の人達が並んで買い求めている。

「お、お前達報告か?でも今から昼休憩だ」

「ウィドさんだ〜。こんちわ」

「そうみたいですね」

売られているのは大きな鍋に入った具沢山のスープや、まだ作りたてらしい料理を詰めた箱、その場で選んだ具を挟んでくれるパン等種類が結構ある。


「俺らも折角だし買って食うか?」

「ここからあっちまで買いたいな〜」

「相変わらずシュウ兄の胃袋ってどうなってるの?」

自分の兄ながら謎である。

買いたい物は決まったが混み合っている所に足の悪い自分が入れる訳もなく、空くまで少し後ろに引いていると、既に昼食を手にしているウィドさんがいつの間にか隣にいた。

「アキは……ああ空くのを待ってるのか」

「入って行って、もし転けたら邪魔になりますし」

「まあ昼飯の所為で怪我ってのもなあ」


「何買いたいの?」

ソウ兄はもう買ってきたみたいだ。目の前のスープのお店に行きたいのだがまだ結構混んでいる。

「スープ買いたい」

「じゃあ代わりに買ってくるよ、これ持っててくれる?」

「うん、ありがとう」

脇に杖を挟み昼食を受け取る。渡された包みは結構な重みがあった。シュウ兄はちょっと規格外過ぎるけど、ソウ兄とリツ兄も自分から見たら相当食べる。と言うと自分の方が少食なだけだと返されるので言わないけど。

午後からは特段用もなく、報告が終わったら今日はのんびりしようと決めているしたまにはめいいっぱい食べるのも良いだろう。


「アキそんなに食えるのか?」

「これはソウ兄の」

「なーんだびっくりした〜」

「……俺はシュウの買った量に驚いてるが」

ウィドさんも驚く量である。シュウ兄もいつもは人並みに済ませているけどたまにこんな感じで大量に食べている。どこに収まっているのかは不明。


「お待たせー」

ソウ兄が戻ってきたので包みを返す。スープを受け取ろうとしたが、容れ物が不安定だから代わりに持って行ってくれるというので甘える事にした。

「どこか食べる場所あるかな〜」

「この辺で座って食べてくなら一緒にどうだ?」

「はい、構いません」

「よし、じゃあ応接室でも借りるか」

それは職権濫用というか公私混同というか。


カウンターへ鍵を拝借しに行ったウィドさんが戻ると後ろには女性も二人ついてきた。

「お疲れ様です。良かったら混ぜてください」

「ていうか勝手に混ざりますぅ」

いつも真っ先に対応してくれるロシェさんと、最初の依頼を受ける時に対応してくれたアンジェさんだ。受付担当の二人にはよくお世話になっている。

「お昼食べるだけですけど」

「たまには違う人と顔合わせてご飯したいんですよぉ」

「そういう訳だそうだ」

「俺らは構わねぇよ」

「先にルスタに草あげて来ても良い?」

ギルド前には整備された芝生のスペースがあって、ルスタは大抵そこにいる。待たせるなら声をかけておきたい。

「おう、行ってきな」

「先に行ってるね」

「俺はアキの魔物を少し見たいからついて行って良いか?」

ウィドさんの問いに頷く。でもルスタの様な種は見慣れているんじゃないかと思う。



ギルドを出るとルスタが自分に気付いて近づいて来た。食事の為にもう少し待たせる旨を伝えると了承なのか鼻を鳴らす。待たせる時間も長くなってしまうから、と午前中に採った薬草をあげると嬉しそうに食べていた。そんなルスタをウィドさんはじっと見ている。

「……」

「どうしました?」

「いや、随分意思疎通が細やかに出来ていると思ってな」

「そうですか?ルスタとはいつもこんな感じです」

「アキは魔物使いについてもあまり知識がない様だな」

そもそも自分達のいた所には同じ様な動物はいれども魔物はいなかったので知識という知識が無い。どうも世間知らずな扱いなのか、知らない事を訝しまれないので良いけども。

「折角だし、昼飯食べてから少し話をしてやろうか」

「はい、お願いします」



「魔物使いってのはその名の通り魔物を使役する能力のある奴の総称だ。戦闘の頭数に入れる為に戦闘能力のある魔物を使役する奴と、荷運びなんかの労働力として使役する奴がいる」

「へぇ」

「アキはどっちでもない様に見えるが」

「……ある意味労働力、かなあ」

ルスタの事は自分の移動手段と、薬草採取の相方として常に頼りにしてはいるけど、使役という意味では何か違う。


「魔物使いも能力は個人差があるし一概には言えないんだが……アキは俺が見てきた中でもかなり能力が高い方じゃないかと思う」

「そうなのかなあ……」

「魔物が主人の言葉の前に先読みした行動をしたり、はっきりした指示や命令ではなくてもしっかり言う事を把握しているのを見ているとな。普通はちゃんと明確な命令を出さないと魔物が動けない事もあるからな」

「命令ですか」

「普通は魔物に来いと言って来させるものだが、アキのとこのは主人の姿を見て自分から声をかけられる前に近付いていたしな」

そう言われると、ルスタは毎回自分の姿を確認すると先に近付いて来てくれる。自分の足が悪い事をルスタなりに理解して対応しているみたいだ。


「アキは大体やる事ルスタに聞いてるよな」

「ルスタが嫌だったら無理強いするのもなあって」

必要な時は乗せて欲しいし手伝って欲しいけど、ルスタの意思でない事は強要したくないので逐一確認している。一応主人なので舐められてなくて何よりだ。

「基本使役する魔物は逆らう事は少ないが……名付きなら余計にな」

「名前を付ける事にはやっぱり意味があるんですか」

「勿論。名前を付ける時に自分の魔力を魔物に渡し、それを魔物が気に入ればその時点で契約が完全に成るんだよ」

「あー……」

ルスタに名前を付けた時に感じた引っ張られる様な感覚は、魔力を渡していたのか。

「気に入られないと失敗なんだ」

「そうだな。まあ……名付けをしていなくても従ってるなら一応使役は出来る。ただそれだと仮の契約状態だから、ちゃんと使役していくつもりなら名前を付ける事は必須だぞ」

「分かりました」

これから目当ての魔物と契約しようなどという予定はないが、知識としては重要なので覚えておこう。


「お前達、依頼を迅速に真面目にやってくれてるみたいだな。実力もあるし中々有能だから期待してるぞ」

「滞ってた薬草の採取も快くやって貰えて助かりますぅ」

滞ってたらしい。自分はやれる事があって有り難いし、ルスタがいるから探すのもあまり辛くない。討伐者の人達は薬草探しはあまり得意分野でない人が多いらしく失敗も少なくないとか。

「ありがとうございます。でも自分達のやれる範囲でやっていきますよ」

「それで構わない」

「あ、休憩そろそろ終わりますから、依頼精査してお渡ししますね。確認お願いします」

「ありがとうございましたぁ」

ロシェさんとアンジェさんは空容器片手に先に部屋を出て行く。

「お前達の無理のない程度にこれからも頼む」

「はい」

ウィドさんと自分達も部屋を後にして、受付へ。精査して貰った依頼を見せて貰い、受ける物を決めてのんびりと家へ帰った。

お昼にお弁当宅配とか会社の立地によっては専門のお店が近くにありますよね、あれ便利。

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