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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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2:初依頼

今日は討伐者の資格を得てから初めて正規の依頼を受ける日だ。

ルスタに餌をあげて、借りた鞍を着けながら外に出る旨を伝えると、久々に外に出る事もあって心なしか少し張り切っている様子。


準備を整えてギルドがちょうど開く時間位に着く様に向かうと、まだあまり人がいなかった。受付の女性に資格証を提示すると、依頼内容の書かれた書類をいくつか見せてくれる。

「皆さん例の新人さんですねぇ」

「例の?」

「私アンジェですぅ。受付担当してますぅ」

小柄な受付の女性、ことアンジェさんは名前だけ名乗ってくれた後、間髪いれずに依頼についての説明に移ってしまった。簡単な説明だけど分かりやすかった。

「で、皆さんにはこの辺が良いかと思いますぅ」

「近場だと有り難いな」

「んー。でしたらこれですねぇ」

後これも一緒にどうですぅ?と見せて貰ったのは薬草の採取依頼だった。採取可能な場所を見ると討伐の依頼が出ている所と同じ場所でも採れる様なので、併せて行く方が合理的だからだろう。

「じゃあ二つ依頼を受けさせて貰います」

「はーい。では、これ持っていってくださぁい」

渡されたのは二枚の袋と水の入った瓶二本。袋には目当ての魔物と薬草を入れる用、水は前に使った物同様浄化の魔法がかかっていて、魔物を倒した場所に撒く用らしい。余ったら返して欲しいとの事。


建物を出るとギルド前に待たせていたルスタが気付いて自分の方に歩いて来た。

「今から行けば昼には着けるかな」

「飯調達してから行くか」

街中の屋台で持ち運びできる料理を売っていたので、各自気になる物を買って正門へ向かった。門をくぐる前に門番の人に資格証を見せて滞在証を返却する。

「おお、討伐者の資格か。久しぶりに新人の資格証見たなー」

「そうなんですか?」

「資格条件はそれなりに厳しいしな。近くの町とか村から受けに来て帰る人間もいるけど……街の住人で、となると数ヶ月いなかったと思う」

「へぇー」

門番の人から頑張れよ、と激励された。


街からは街道沿いに隣の町方面へ二時間程。小休止とルスタの寄り道を挟みながら着いたところは街道から少し外れた森の中だ。

「この辺に出るらしいね」

「どこだ〜」

ルスタがそわそわしているので何か気配を感じているのかもしれない。自分はルスタと一旦街道方面に戻って降ろして貰う。

「一緒に受けた薬草探しもしないとな……」

手綱を引いてまた森の中に戻るとルスタが立ち止まる。草の匂いを嗅いで食んでいるから薬草なんだろう。近くの同じ草を摘ませて貰った。

写し書きを見たらたまたま目当ての薬草だったので、ルスタに同じ物が無いか聞いてみると場所が分かるのか歩き出した。

「アキ、一人じゃ危ねぇぞ」

「あっ……ごめん」

ついていこうとしたらリツ兄に袖を引かれて止められた。ルスタも気付いてすぐに戻って来る。

「魔物近くにいそう?」

「んー。気配はすんだけどな」

自分は察知能力が鈍くて全然分からないけど、リツ兄やルスタは目当ての魔物の気配を感じている。ソウ兄とシュウ兄は先に少し奥で探索しているから合流するべきかと思っていると、遠くの方でガサガサと音がし始めた。

「多分兄貴達の方向だな。任すか」

二人なら多分大丈夫だろうと自分も思う。暫くしてシュウ兄の気合が入ってるのか入ってないのか分からない声と魔物の鳴き声が聞こえ、すぐに止んだ。もう終わったらしい。

「……行く?」

「そうだな」

音の方向へ向かうと既に息絶えた魔物。をつついてるシュウ兄がいた。ソウ兄はその場にいなかったけど、すぐに仕留めたらしい鳥と兎を持って戻って来た。

「いやあ近くにいたのでついでに」

「ついでで何やってんだ」

「死んだ!」

「見りゃ分かる」

「えーと。回収する?」

「……そうだな」

リツ兄はちょっと呆れて溜息を吐いていた。支給された袋に魔物も動物も入れて、水を撒く。あまり血は出ていなかったので一瓶だけで充分そうだ。



「薬草摘みに行っていい?」

「ああ。じゃ行くか」

ルスタにさっきの場所に案内を頼むと歩き出した。立ち止まって毟っているのが多分薬草だ。先程摘んだ物と相違はなさそうなので摘んで袋に入れていく。ルスタからも手渡されるのを入れたら結構摘んだと思う。途中なんか違う物もあった気がするけど。

「終わった」

「早いね。じゃあ全部終わりかな」

ルスタはもう少し草を毟っていたけど多分持ち帰りたいんだろう。


「後帰るだけになっちゃったねえ」

「こんなにすぐ終わるのか〜」

自分達は森から出てすぐの場所に腰を下ろし、買ってきた昼食を食べていた。ルスタも近場の草を食べていたけど、薬草ではないみたいだ。

採った物を束にしておこうとタオルを広げて袋に詰めた薬草を出し並べているとルスタが寄ってきた。

「この薬草は提出物だから食べたらダメだよ」

薬草を見せて制止すると、薬草の山から種類の違う薬草だけよけ始めた。もしかして手伝ってくれているのかな。いや、よけたのを食べるのか?

とりあえず二十本ずつでも束ねようかと思い分けて行くと結構数があった。

「薬草束にするなら糸使う?」

「うん」

太めの糸と鋏を借りて草の根元を結ぶ。採取については数の指定をよく見ていなかったので書類を見直すと、最大で五十本程度と書いてあった。手元には倍程度ある。

「採り過ぎで怒られないかな……」

「どうなんだろうね」

自生の物だから制限があるのかもしれない。気を取り直してルスタがいつの間にかきっちり仕分けていた薬草も束ねた。依頼の物の他に三種類程ある。

「これもついでに渡しとこうかな」

「いらなかったらルスタの胃に入るんでしょー」

ルスタはシュウ兄の発言にそうだと言うように鼻を鳴らしていた。



「じゃ、さっさと戻って報告しよ〜」

「そうだね」

片付けをして、元来た道をのんびり歩いていると後ろから馬車が走って来た。少し脇に逸れて通行の邪魔にならないようにする。


荷馬車らしく馬を御する人とその隣には荷の主であろう人が乗っている。慌てている雰囲気だったので急ぎの荷物かなと思っていたら自分達にも逃げろと声をかけられて、見ると馬車の後ろから何かが追い掛けて来ていた。

「……魔物だよね、あれ」

「だな〜」

ソウ兄が矢を射ると急停止したのは猪の風貌をした魔物だ。見た感じルスタより少し大きいし牙もあるので突っ込まれたら危険そうだ。馬車は無事に走り抜けて行った。猪は馬車を諦め自分達に狙いを定めたらしい。じりじりと距離を詰めて来る。

「シュウ、避けながら注意引いて。リツは後ろ足狙えるか?」

「おー!」

「いけると思う」

ソウ兄も指示を出した後は弓を構えて牽制準備をしている。自分も何か手伝うべきかと思っていたが、ルスタが少し落ち着かないので先に首を撫でて落ち着かせる。


「でかいなー」

のんびりした声で突進を避けながらシュウ兄は猪を観察しているみたいだった。

その隙にリツ兄が短剣で猪の後足を斬りつけると、猪が少しぐらつく。ソウ兄の矢も目や前足に刺さって、猪は鳴き声を上げながら横倒しになった。

「こんなんで突かれたら死ぬな!」

牙を見ながらシュウ兄は笑っていた。まだ生きてるのに呑気だなあ。

ソウ兄とリツ兄は武器をサバイバルナイフに持ち替えて猪の眉間や心臓辺りを突いてとどめを刺していた。思ったよりもあっけなく終わる。

何故わざわざ短剣からナイフに変えるのかと言うと、リツ兄曰く短剣よりサバイバルナイフの方が何故か格段に切れ味が良いから、らしい。元の世界からの持ち物が神の力で変質しているからかもしれない。



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