21.結果とこれからⅡ
あとは幾つか、依頼を受ける時の注意点や問題発生時の報告等々詳しく教えて貰って雑談していると資格証の発行が終わったらしく、ロシェさんが持ってきてくれた。
「皆さん四人それぞれの資格証です。これからはこの資格証をまず受付で見せてくださいね」
資格証は掌に収まる位の大きさの少し厚みのあるカードだった。これも魔道具だそう。左下の隅に小さな白い石が埋め込まれているが、これは自分達の階級を示す色の宝石が付けられているのだと言う。石は触るとツルツルしていた。
カード自体は紙というよりは元いた世界にあったプラスチックに近い手触りだ。厚みもあり素材も硬めなので曲げたりは出来ない。
「これ自体にお前達の情報が写されて蓄積されていくから、もし別の街に行っても国内なら手間無く依頼受けられるぞ」
「つまりなんかいけない事したらそれもちゃんと載るんだ〜」
「早い話がそういう事だな」
流石身分証代わりなだけある。かなり手の込んだ魔道具みたいだ。こういうのはどこで開発されているのか聞いてみると、魔道具の開発や研究がかなり進んでいる国が存在する大陸があるとの事。
後、階級が上がった際には付随する色の石に付け替えするらしい。
「それと探していた借家の件ですが、条件に合う所が一箇所ありましたよ」
ロシェさんはそう言いつつ、テーブルに書類を広げ始める。家の中の間取りや近隣の情報が書かれている。間取りを見ると二階建てで、部屋数はそれなりにある様だった。
「あの条件で見つかったのか。すげぇな」
「元々討伐者の方々の滞在用でギルドが管理してるんですけど……北区にあるのでちょっと不人気なんですよね」
街中は東西南北と中央の区に分かれていて、今いるギルドは中央区。自分達が街に入って来た時の大きい門が正門で、あれは南区に位置している。北区は正門とは真反対なので、あまり人気ではないらしい。その為地価や家賃も安めだとか。
「まあギルドや門に近い方が良いでしょうね。依頼受けて外に出るなら」
「分かるわかる〜」
ロシェさんの説明によると家自体は広めで生活に必要な魔道具は型が古いが設置されているそう。家具もいくつか設置済みなので、入れば直ぐに生活が始めやすくお勧めとの事。住む為に買い揃える物が多すぎると様々な意味で困るのは確かだ。
「貸主はギルドの上層部の人間なので、私の方で既に話は通してきました。実際に見て貰って一度宿泊してみて、問題が無ければまた賃貸借の手続きに来てくださいね」
渡された鍵と借家についての情報や家賃の書かれた書類をソウ兄が受け取る。後でちゃんと見せて貰おう。
「今日明日位はとりあえずそこ無料で宿代わりに泊まっていいぞ。実際に使ってみないと分からない事もあるだろう」
「いや金は取れよ……」
「お前達はこれから物入りだろ。持ち主には俺が話つけとくから安心してくれ」
ギルドの上層部の人が貸主というから、ウィドさんとは立場が近い人なのかもしれない。なので話もつけやすいんだろう、多分。
「色々とありがとうございます」
「ま、こっちもお前達を街に引き留めとかないとな」
「……俺達の素性が知れないからですか?」
ソウ兄の問いに、ウィドさんは頭を掻いてそうだと答えた。
「お前達も何処から情報が漏れるか分からないから濁しているんだろうけど、こっちからしたら不明点が多いからな」
最初此処に来て受け付けた時からそれなりに素性を訝しむ雰囲気があったのは分かっていたけど、それでも資格証を取らせて貰えたのは有難い。ギルド自体国営だし、資格を得た自分達の情報は国の方に報告を上げているはずだ。すぐ街を離れられたら多分困るんだろうなとは思う。
「そもそもこっちには戦争地域からの避難民を引き留める必要が、というか義務があるんだよ」
「避難民……」
「正規の手続きが出来ずに国に秘密裏に入るなんてのは本来犯罪だからな。捕まえて元の国に突っ返すのが普通だが戦争地域出身なら話は別。そんな事すると国が見殺しにしたも同然だしな……」
自分達の状況を思い返すとどう考えても不法入国扱いになるし、犯罪だろう。そしてウィドさんの口ぶりからすると前例が何か存在していると思われる。それで国が顰蹙でも買ったか。
こっちの人間ではない自分達からしたら突っ返される国もこの街がある国も知らない場所ではあるが、流石に再び戦争している場所に行くのは世界が変わっていても嫌だ。
「だから今回はちょっと特別に講習設けて、お前達の人となりを少し確認させてもらったんだ」
「えー。本来は迷宮の講習って無いんだ〜」
「なくはないんだが……一応希望制だからな。ディル達は元々迷宮探索も希望していたから事情を話してお前達と講習を受けて貰ったんだよ」
講習中自分達が他の人達とどの程度交流を図れるかを見たり、事情を直接雑談を交えて聞き出したり色々していたらしい。あまり気にしていなかった。
「そうでしたか。いずれにしてもギルド側で問題無いと判断して貰えたなら俺達からは特に何も」
「もう少し言われると思っていたが」
「いや、仕事と住むとこ貰えんなら別に……」
自分もリツ兄の言葉に頷いた。
「そうか。それならいい。何かあったらいつでも頼ってくれ」
ギルド側は、というかウィドさんは割と自分達に目をかけてくれている様だ。責任者の立場でもあるみたいだし当然か。仮に自分達が問題を起こしたら真っ先に駆り出されるんだろう。それが無い様に努めたいところである。
思い返せば元いた国を出奔して明日をも知れぬ身だったつい数日前、偶然とは言え自分達のいた世界とは異なる世界に迷い込んで、今は新たな生活を始める事が出来ているなんて、随分数奇な運命を辿っているのではないかと思う。
戻れる可能性は低く、国を捨ててきたも同然なので戻るべき理由が無い。こっちの世界で、いち住人として生活していく努力をするのがきっと最適解だ。自分なりに頑張ってみようと小さく拳を握り締めた。
1章の話はここまでになります。2章!新生活(波乱万丈)




