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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第1章:迷い込んだ『異世界』にて
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20.結果とこれから

時間は昼の一時を過ぎた頃。街に来てからお世話になっていた宿の清算を終え、店主さんへ挨拶をしてギルドへと向かう。


「これで取れなかったら悲しいな〜」

「ま、そん時はそん時だな」

街中は人通りも多く活気づいている。道の脇にはあちこち屋台や露店が並び、客引きの威勢のいい声が飛び交っていた。この市場通りは朝から夕方までの時間に市場が開かれて、色々な露店が時間帯ごとに入れ替わり営業している。昼は大体昼食の為の持ち運びやすい料理やお菓子、果物なんかの取り扱いが多い。

「街中ももう少し見て回りたいな」

「そうだね。来てから中々こういうのも見る時間取れなかったし」


討伐者のギルドは昼を過ぎた為か人はまばらだった。受付へ向かおうとしたら先にカウンターにいたロシェさんが気付いてこっちに来てくれた。

「先日はどうもお世話になりました」

「いえいえ、私はそれも仕事ですし。今日は資格証についてでしたね」

「そうだよ〜」

「では応接室でお待ちください。担当者が参りますので」

案内された部屋の中に入ると、隅には茶器とポットとお茶の準備用テーブルが備え付けられていたので、待つ間勝手にお茶を貰うことにした。淹れたお茶は薄い黄緑色で、少し苦みが強い。嗅いだ事のない香りがした。


「待たせたな。ってなんだお前達……随分寛いでるな」

扉を開け現れた担当者はウィドさんだった。手には書類と袋を持っている。

「お茶あったんで勝手に」

苦笑いするウィドさんにリツ兄がお茶を淹れて渡す。全員が座るとウィドさんが話を始めてくれた。

「さて気になってる資格についてだが、今日付で発行する。なんならもう今日から依頼受けてもいいぞ」

「アヴィ達は……」

「勿論あいつらも今日付で発行してるよ。もう何か依頼受けてんじゃないか」

好敵手だな、とウィドさんは笑う。アヴィ達は迷宮の深部探索をするのが当面の目標で、その為に上の階級になるべくなら早く上がりたいと言っていた。自分達はとりあえず身分証明の為に資格を取ろうと思っていた程度であまり明確な目標はないので、彼等にはすぐ置いて行かれそうだ。

昨日の迷宮講習で拾っていた素材の報酬も渡された。一応それぞれの単価も書類に書いてあって、用途などを改めて細かく教えて貰った。素材の中でも亜人の落としていった武器は割と良い値段だった。


「最初に講習で説明受けてるから知ってるだろうが、階級は一旦皆一番下からだ」

討伐者の階級は戦闘能力や依頼の達成率、個人の評判等総合的な判断で付けられている。単純に強ければ良い訳でもないけど、上の階級はやはりある程度戦闘能力の高さが必要らしい。自分達は組んで動くので、個人個人ではなくチーム単位での評価になると思う。

「お前達は戦闘能力も高いし、真面目に仕事してれば直ぐ上がれる基準は満たすだろ」

「まあ出来る範囲でやりますよ」

因みに階級が上がると指名依頼みたいなものも受ける許可が下りるらしい。ギルドの仲介は入るけど対個人とのやり取りが大幅に増えるみたいで、信用度に重きを置く必要がある為その様にされているとか。

普段はギルドがあちこちから請け負っている依頼を、階級や能力を見て振ってくれるので、無理に上がる必要性も無さそう。


「さて、資格証の発行終わるまでは少し時間かかるし気になる事あれば何でも聞いてくれ」

「家はどこかで借りる手続き出来ますか?」

「お、なんだこの街に住むつもりか?」

「……そんなに住民権得やすいんですか?」

「移住となると色々面倒な手続きやら条件やらがあるから別に得やすくは無い。でも宿じゃ割高だろうし、長期滞在という形でしばらく住むと良い。そういう手続きだったらうちから申請してやれるから」

この辺りの国は制度がかなりしっかりと整っているらしく、住むにしても条件を満たした上に段階を踏まないといけない様だ。討伐者の場合は事情により長期的に街に留まるというケースも存在はするので、ギルドとしても代行で申請しやすい長期滞在の手続きを行った方が良いだろうとの事。

「お前達が家借りるなら魔物も居られる様に庭なんかの敷地がある方が良いだろうな。事務方にちょっと探す様に言ってやるよ」

「ありがとうございます」

そう言って一旦ウィドさんは席を外し、すぐ戻って来た。本当に言ってきただけらしい。

しかし敷地のある空き家なんてそうすぐに見つかるものだろうか。あったとしてもかなり高そうな気がするんだけど。


「訓練所って使ってもいいんでしょ〜?」

「おう、いいぞ。対人で訓練やりたければ担当者で空いてる奴が相手してやるし、怪我しない程度に討伐者同士で勝手に訓練しても良い」

「やったー。りっちゃんとだけじゃつまんないし」

「つまんないってお前な……」

訓練って楽しいとかつまんないとかいうものだっけ。

それはさておき、こっちでは対人戦闘の機会は然程ない様なのであくまで魔物と対峙する時の為の格闘や剣術という形になる。流石に魔物と訓練は出来ないので人と訓練した上で後は実践するしかなくなる。その為にギルドの担当者の引率実習なんかが存在してるんだろう。

余談だが、リツ兄とシュウ兄は経験年数が比較的近いのでよく一緒に訓練している。ソウ兄とは訓練やらないのか聞いたら二人して「あの人とはちょっと……」という反応が返ってきたので、まあそういう事だろう。


「ええと、戦闘魔法についてはもう少し勉強出来ますか?」

自分もこの際だから聞いておこう。魔法については独学なんてきっと無理がある。

「ああ。この先も魔法でやっていけそうか?」

「うーん。まだ実践経験が少ないので何とも言えないですけど、もっと色々知っておきたいというか」

答えるとウィドさんは少し考えている。最初に提案してくれたのは彼なので、良かったら進言貰いたいと思ったのだ。

「そうか。なら街の図書館で専門書借りた方が良いかもな」

「図書館ですか……!」

小さい図書館なら昔行った事があるが、この街の規模を考えると蔵書量はその比ではないだろう。中に入るのを想像するだけでワクワクする。

「アキくん入ったまま出てこなくなっちゃう」

「ちゃんと帰って来い」

リツ兄とシュウ兄に失礼な事を言われている気がする。

「基礎の内容程度ならうちの蔵書があるから、まずそれを貸出してやろう。それ以上の事知りたいなら、うちに言ってくれれば図書館に口利きしておくから」

「あ、ありがとうございます」

ギルドからの口利きが必要なのは何故なのか聞くと、戦闘魔法自体が討伐者位しか使わないのと、近年では使用者が少ない為公開図書としては扱わなくなったからだそうだ。そこまで手を回して貰うのでちゃんと使える様になると良いな、とは思う。


先日聞いた話でも魔法は魔道具の発明で衰退傾向にあると言うし、魔法の概念がなかった世界に住んでいた自分が言うのもなんだけど、残念な事だ。より便利な物に置き換わるのは仕方ない事かもしれないけど、失われてしまうのは惜しいから。



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