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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第1章:迷い込んだ『異世界』にて
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19.講習の終わりと迷宮について

「よし、これで今回の講習は終わりだ。皆お疲れさん」


回収し終えた諸々はウィドさんが全て纏めてくれた。これまでの素材関係は全部ウィドさんに渡していて、持ち帰って素材ごとの鑑定等精査を行なって差し引きはあるが、換金したお金を自分達に分配してくれるそうなので講習でも報酬が発生するという。

「疲れた〜」

「お疲れ様です」

「後は入り口まで戻るだけだな」


魔物を倒した後は静かなもので、それ以外に何かが出てくる事はなかった。念の為、落ちている物の回収後に魔物達がいた部屋も覗いてみたが特に何も無い。訳でもなく奥の方に箱がポツンとひとつ置いてあった。近くで見ても蓋のされた木箱だ。

「何だろこれ……」

「宝箱」

独り言にアヴィが答えてくれた。

「罠だろ」

「罠ニャ」

リツ兄とイルミアが同時に同じ事を言っていた。罠らしい。

「ウィドさん、これ罠なんですか?」

「今回は二人の言う通りだな。迂闊(うかつ)に開けない方がいいぞ」

迷宮内には時々忽然とこんな風に箱が出現するが大抵の場合は罠か、魔物が飛び出てくるか、箱自体が魔物だったりするとの事。不注意に開けてしまう事もそれなりにある為、痛い目を見る人もいるらしい。

「基本は見つけても避けてるな。イルミアみたいに獣人は察知能力が高いから当たりを見つけてくる事もあるが」

当たり、というのは罠や魔物でなく素材やお金、宝石等が入っている場合の様だ。

「私はともかくー、リツって人間族なのに私より鋭いニャ」

「あ? 俺?」

「そうよ。ホントに人間族なのかニャー?」

「どう見ても人間だろ」

「リツ兄は昔から人間だよ」

リツ兄が人間である事を疑われ始めたのでちょっと擁護した。

「言い方おかしいだろ」

「うわー」

でも言い方がなんか変だったので小突かれた。


「しかし大型の亜人には驚いたな」

「あー。怪我人出なくて良かったよな」

帰還部屋までの道中、ファイとディルはそんな事を言いながら溜息を吐いていた。確かに人間よりも全然大きくて驚いた。攻撃が当たったら本当に危険だ。

「本当は別の亜人が出て来るのを想定してた?」

アヴィの質問にウィドさんは頭を掻きながら答える。

「ああ。この階層ならもっと小型の亜人が出るはずなんだ。迷宮管理部には報告しておく」

もしかしたら一旦調査の為迷宮の出入り制限がかかるかも、との事だった。

元々ギルドでは迷宮のどの階層にどんな魔物が生息しているかを細かく調査しているらしいが、稀に今回の様に出てくるはずの魔物が出ず、いないはずの魔物が出現する事もあるらしい。運が良かったというか悪かったというか。


帰還部屋も罠や魔物は無く、ウィドさんが像を触ると気付いたら迷宮の入り口に立っていた。あの動作だけで全員ちゃんと戻してくれるらしい。置いてけぼりが無くて良いけど不思議だ。

「じゃあ説明した通り報酬は明日渡すからな」

「よろしくお願いしますニャ」

「で、アヴィ達は明日朝にギルドに来てくれるか」

「はい」

「ソウ達は昼から来てくれ」

「分かりました」

時間帯は特に指定されないので、昼過ぎくらいで良いのだろうか。一応確認すると昼から夕方の間であればいつでも良いとの事だった。


そのまま迷宮の入り口で解散となった。

「ソウ達は資格取ったらどっか行くのか?」

「まだ考えてないんだ。可能なら街に暫く留まるかもしれない」

「アキの魔物とも会いたいからそうして欲しい」

「う、うん……」

ルスタはアヴィの希望する様な魔物ではないけどそんなに会いたいのか。

「一緒に訓練もしてみたいわねー」

「おー。やろやろ〜」

「俺達は資格を取れたら一旦皆実家に戻る予定なんだ」

「そしてまた此処の街に集まる予定」

「今回の報告とかあるもんな」

「じゃあまた会おうな〜」

「またね」


アヴィ達とも挨拶して別れ、一旦ルスタを預けている馬房に顔を出す。

「お、お疲れさん。迷宮はどうだった?」

「色々ありましたけど、何事もなく無事です」

「そりゃ良かった」

ルスタは当然の様に管理の人の横に来ていた。

「明日引き取りに来れると思います。明日までルスタの事よろしくお願いします」

「任せてくれ」

ルスタも了解らしく鼻を鳴らしていた。そのまま薬草をあげて、管理の人にも束を手渡す。


「じゃあ俺達も宿に戻ろうか」

「腹減ったな〜」

時計を確認するともうすぐ6時だ。空の光も大分小さくなっている。街中はあちこち街灯が灯り始めていた。

「何処かで飯食っていくか?」

「腹減ったー……」

「このままだとシュウが倒れそうだしそうしようかな」

自分も昼にかなり食べた様な気がしたけどお腹が空いた。

見つけた食堂に入って、店員さんにお勧めの料理をいくつか持って来て貰う様お願いした。こっちの料理や食べ物はまだ詳しく分からないからだ。

少しして出てきたのは、卵と野菜の炒め物と、薄切りの肉で野菜を巻いた物、厚切りの肉を焼いて一口大に切った物。後は見慣れない白っぽい粒と細かく切られた野菜や肉らしき物を混ぜた料理だ。聞くとイナ麦という主食だった。元の世界でもコメという物があったと思うけど、見た目はそれが一番近い様に感じる。コメの現物を見た事はないし味も良く知らないが、イナ麦を使ったその料理はとても美味しかった。



「迷宮かあ……」

宿に戻り諸々を済ませて後は就寝だけど、何となく潜って来た迷宮の事を考えてしまう。

「不思議なモンだよな。アレも」

「存在が良く分からないね」

「リズルにでも聞いてみようかなって思ってたんだけど」

『お呼びでしたか?』

どうやったら聞けるのかな、と言おうとしたら来てしまった。

「うん……」

「監視でもしてんのかよ」

『ユシュトア様も気に掛けていらっしゃいますから、様子は伺わせていただいてますよ』

「そうなんだ」

『ところで迷宮について何かお知りになりたいのですか?』

「そうだな……迷宮って何処にでもあるんだって聞いたんだけど」

『はい在りますよ。基本的に住人の住む近くの場に出現する形で。住人が足を運ばない様な場に出来た場合は消しています。迷宮は潜って貰わなければ存在意義もありませんからね』


迷宮は世界を創った時に発生した副産物の様な物らしく、勝手に発生したり新しい階層を創ったりしているそう。一応迷宮は世界神の管理下にあって、後から色々手を加えたりされている。住人により多く探索したり、魔物を倒したりして貰う為に素材を落とす仕組みや宝箱の仕組みを後から差し込んだとか何とか。神の考える事は理解し難い。

迷宮ごとに得られる素材は違いがある様で、それを特産品として取り上げている街もあるらしい。

『危険が伴う場にはそれを鑑みても得たい利益が無いと中々近付いてはくれませんからね』

「たまにそういうの無視する無謀者もいるけどね」

『ええ。大昔はいらっしゃいましたね、神域に踏み込んで来る住人等……』

「神域かあ」

この世界には神域、という名の住人は不可侵としてある世界の端が存在している。神域では大陸ごとの神の眷属が守護していて、侵入者を排除する役目を仰せつかっている。

「リズルの所にもあるんだ」

『はい。此処からはかなり離れていますが在りますよ。行かれますか?』

「行かないよ〜」

そもそも不可侵の領域と言われているのに無謀働いて行く訳にはいかないと思う。


『皆様は此処で生活をされるおつもりですか?』

「どうかな。他所者は住まわせて貰えないかもしれないよ」

資格を取った後の事は正直不鮮明だ。アヴィ達とはまた会う機会が欲しいけど、この街に住めない場合は行き先を考えて四人に伝えなくてはいけないし。

「生活基盤整えないと何も始まんねえしなあ」

「な〜」

『その時はご相談くださいね』

「ありがとう」

リズルはそう言ってくれるけど、神に相談して居住地はどうにかなるんだろうか。そろそろ戻るというのでまたそのうち、と見送った。

「明日、色々聞いてみなきゃね」

「資格取れてるかな」

「さあな……」

何にせよ明日にならないと何も進まない。眠気も限界にきたので話を切り上げて就寝した。



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