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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第1章:迷い込んだ『異世界』にて
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10.次の街へ

その夜。兄達と明日の予定を打ち合わせた。


兄達も組合の人から街に行く事と討伐者の資格を得る事を勧められたそうだ。

「まあ正直警戒はされてたし……誘導されてると思うけど」

「俺らこっちじゃ身分証明できねえしな」

そう言いつつ元の世界でちゃんと身分が証明できるのかというと曖昧なところである。

でも誘導という形とは言え、規模の大きな街に向かうのは悪くないと思う。村では施設も限られているし。兄達も考えは同じ様で、後はまた街へ行って考える事にした。セーナの話ではお金を支払えば一応入る事は許可されると言うし。



朝、宿での最後の食事を貰って、店主へ御礼を言って宿を出る。村長のお宅や狩人の組合に顔を出し村を発って隣街へ向かう事を告げると、もし近くに来たらまた村に寄って欲しいと少し名残惜しそうに言われた。こっちとしても身分をちゃんと証明出来る物を手に入れたら、改めて伺いたいとは思う。

移動に際し徒歩で行くつもりだと伝えると、行き来をしている有料の馬車があると教えてもらった。今回は急ぎの用も無いけど、次来る時はそれに乗っても良いかもしれない。


セーナの家に向かうと庭先に座っていた馬が自分達の方へ歩いてくる。察しが良い。

玄関を叩き挨拶するとすぐにセーナが出てきてくれた。

「あっ! おはようございます。もう出発ですか?」

「うん」

「これ! お昼にどうぞ」

渡された包みは少し温かい。多分昼食用に作ってくれたんだろう。有り難く受け取って御礼を言った。

「また来て頂戴ねえ」

「君達なら歓迎するわ」

セーナの祖母と両親も見送りに来てくれた。


そういえば、と鞄を探って薬瓶を一本取り出しセーナに渡す。

「これは……」

「伝手があって貰った物なんだけど、俺にはどんな物なのか分かんないんだ。だからセーナに渡しておこうと思って」

「えっ! これ多分上等な薬ですよ。持っておいた方が」

「セーナが作れる物なら改めて買いたいし……もし良ければ、分かってからで良いから作り方を教えてくれる?」

そう伝えると、ちょっと戸惑っていたが快諾してくれた。随分難しい宿題を貰ったわね、とセーナの母は笑っていた。

「じゃ、またな」

「またご飯ご馳走してくれよな〜」

村の入り口まで見送りに来てくれたセーナに手を振る。



街道として均された道は歩きやすくなっている様で、また森や林沿いではあるが警戒するべきものも特に見当たらずに順調に進んでいる。一度、馬車とすれ違った程度で特に往来は無い。馬車には何人も人が乗っていたのでこっちでの移動手段なのかも。徒歩より遥かに速いし。

自分は馬に乗せて貰っているので歩いてはいない。時々時計で時間を確認して休憩を挟みつつ街へ向かっている。


「そろそろお昼だけど……」

「なら飯にするか」

道を少し外れた林の近く。木陰になっている場所まで移動して、馬から降ろして貰おうとしたら指示する前に勝手に降りる姿勢を作ってくれた。

「お前も何か食べて来る?」

馬に聞くと鼻を鳴らして林の中へ行ってしまった。薬草探しだろう。

「アキくんあいつに名前付けないの?」

「そうだなあ……」

これから多分ずっと世話になるのにいつまでも馬呼びじゃ可哀想だ。というか自由行動させたけど戻って来るかな。


四角いパンの間に具を挟んで端を閉じる様に押し焼かれたお弁当を食べながら名前について考える。そもそも生き物に名前を付けるのは初めてだ。元々付いている魔物名から取るのが無難だろうか。

パンの具には野菜と昨日狩った獣の肉を焼いた物に赤いソースとチーズが使われている。ソースも野菜で作られているみたいで塩や香辛料の味の中に野菜の甘みを感じる。

お弁当を食べ終わった頃に当たり前の様に馬が戻って来た。薬草を咥えていたので道中食べるつもりなのかもしれない。渡されたので受け取って布に包んで鞄へ入れた。

「お前の名前、ルスタにしようと思うんだけど……どうだろう」

馬に聞くと賛成なのか反対なのか一鳴きされた。同時に何か引っ張られる様な感覚を一瞬覚えた。

「……?」

その不思議な感覚に戸惑っていると頭を擦り寄せてきたので、多分名前は受け入れて貰えたらしい。

「改めてよろしく、ルスタ」




名前を貰ったからなのかルスタは先程より機嫌良く歩いている。時々寄り道したそうにするのでその時は兄達に伝えて小休止にして貰った。戻って来る度に薬草を咥えているので多分鞄の中は薬草が殆どを占めていると思う。

「アキ、今何時?」

「もうすぐ四時」

街は徒歩で一日程度の距離とセーナが言っていたので、夜にかかる頃に着くか、少し手前で野宿か位のペースだと思ったのだが、それから一時間程で街の門が見えてきた。防衛の為なのかぐるりと壁に囲まれていて中の様子は分からない。

「でかいなー」

「予想以上だな」

入り口に近付く程門や壁の高さに圧倒される。規模の大きい街なだけある。


門に到着すると門番であろう男性から身分証かその類の物、それが無ければ滞在許可証の発行に銀貨四枚を出す様言われる。勿論身分証はないので銀貨を出した。ルスタの分は幾らか聞いたら魔物は銀貨二枚が必要との事。あと預けられる馬房が隣接してあるので其処に預ける様勧められた。

門をくぐって、すぐルスタを馬房の管理人の男性へ預けるとなんだか寂しそうに鳴かれた。

「此処で泊まって貰うだけで別に置いて行かないから……」

そう言うと早く言えという風に鼻先で頭をつつかれた。ごめん。

「随分君に懐いているんだなあ。鞍とか手綱はないのかい?」

「今の所……街で誂えられたらと思います」

管理人さんにルスタが食べる薬草を渡して、ルスタには改めてまた明日ちゃんと会いに来る事を伝える。擦り寄って来たので撫でてやると満足したのか用意されたスペースに自分で歩いて行った。賢い馬である。



街の中はどこも石畳で綺麗に舗装されていて、夕方の時間帯だが人通りも多い。少し歩くと噴水広場があって、そこに街中の地図と案内板が設置されていた。街中はいくつかの区に分かれている。門の設置されている今の場所は南区になるらしい。

「まずは寝泊りする所からかな」

「腹減った〜」

地図を見ると宿のマークは各方角に何軒か集まって建っている。食堂や酒場も宿の近くに配置されているので、探しやすい様街の方で配慮されているみたいだ。

街の中央地区、ギルドと書かれた区画に討伐者の組合があるのでその区画に近い宿を当たる事にした。運良く四人部屋が一部屋空いていたのでそこを数日借りる手配をした。

「組合は明日かな。時間的に」

「そうだね。シュウ兄がもう限界だしご飯かな…」

「腹減った!」

「うるせえ」

シュウ兄はリツ兄に小突かれていた。自分も小さく腹が鳴る。

「ほらアキくんもお腹空いてるよ~」

「空きました」

宿にも食堂があるので今日はそこで晩御飯にする事に決めた。


晩御飯は斜めに輪切りにした腸詰めと野菜を炒めた物と、鶏肉のスープ。あと蒸した芋を潰して細かく切った野菜が混ぜられたサラダ。パンは小さめの丸い物で、食堂中央のテーブルに山盛りにされているのを好きなだけ取って食べる様になっていた。シュウ兄は途中からいくつ食べたのだかわからない位食べてた。

「シュウの奴チビのくせにあんだけの量何処に入ってくんだろうな……」

「さあねえ」

自分はとっくに腹一杯だったので、食堂の給仕の女性が淹れてくれたお茶を飲みながら、シュウ兄が食べるのを眺めていた。組合で無事に身分証を貰えるのだろうか。どういう手続きがあるんだろうか。少し不安だ。

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