プロローグ
神様は私達の世界を創造しました。
何も存在しない空間の中。神様は空っぽの丸い器を空間の真ん中へ1つ置きました。
この世界には魔力が必要だ。神様は器の一番下へ魔力の源を入れました。
それを隠すように土を器の半分まで敷き詰めます。
この魔力の源が、いつの間にか土の中に迷宮を作り始めました。迷宮の中には魔物が生まれています。
神様は迷宮の中の魔物が外に出られないようにと制限をかけました。
地上となる土の上には大きい湖を作り、そこにいくつもの大陸を浮かべました。
神様は今まで見てきたいくつかの別の世界を模倣して、大陸には森や山、広い草原、色んな地域を創り、様々な種族を世界中へ送りました。
魔力で満ちた世界でこの魔力を上手く使って欲しいので、生き物には魔力を与えました。
世界には光が必要だと、空へ光を浮かべました。この光を元に、住人が時間を把握できるように工夫して。
尚、神様は真面目でしたので、この光は毎日毎日、神様が管理しています。
神様は大陸ごとに部下である神様達を置き、大陸の管理を依頼しました。
流石に神様一柱では、創った世界中の全てを見て管理できなかったからです。
部下である神様達は各々の意思を持ちながら、現在も大陸を管理しています。
いつしか世界の住人は文明を築き、人口を増やし、他の種族と時には衝突し、時には協力して世界を繁栄させます。
神様が与えた魔力を使い、魔法を生み、使うことを覚え、住人達は魔法を生活の一部にし始めました。
世界を創った神様と、大陸を管理している神様達のお話です。
(創世記-この世界が出来るまでのお話)
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四人の青年は人気のない林の中を歩いていた。
会話も少なく、お互いの状況の確認に時たま二言三言を交わすだけ。とにかく少しでも遠くへ、と全員が思いながら歩を進めていた。
夜も更けた暗闇の中、ひとつ、小さなランタンの灯りだけを持って。
彼等は元々とある国の戦闘組織に所属していた。国内の統一戦争、その中のある派閥の戦闘組織の中、同じ集団に置かれ動いていた。その組織へ入る前は同じ孤児院に入っていた戦争孤児の彼等は偶然の再会を喜びこの戦争を早く終わらせて自分達の様な境遇の人間を減らそうと躍起になっていた。が、彼等のそんな思いとは裏腹に一向に争いの終わりは見えない。
何度も派遣される戦線の中で一人の青年が仲間を庇い負傷した。治療の最中戦線への復帰が難しいという判断から殺処分の通告をされた時に、彼等はこれ以上此処に留まる訳にはいかないと出奔を決意した。
真夜中に移動車を一台拝借しそれも途中で乗り捨てて。人の立ち入った気配の少ない林の中へと進んでいたのだった。
「せめて国境を越えられたらな」
ランタンを持ち先導する青年が呟く。上着の胸ポケットには愛用のサングラスを引っ掛けている。
「っつっても現在地すらわかんねぇからな……この暗闇じゃ」
闇の中、草の音以外では彼等の足音と抑えられた話し声しか聞こえない。
「なーアキくん大丈夫?」
「なんとか。でも、少し追いつくのが大変かな……」
杖をつきながら歩く青年は、少し辛そうな顔をしていた。
「背負ってやるのに〜」
「それは遠慮したい……」
その遠慮は気恥ずかしさ等からくるものではなく、これから先もどの位の距離を進んでいくか不明瞭な為に余計な負荷をかけたくはないという気持ちからだった。
先導する二人と、それから二歩程遅れてついていく二人。時々先に行く二人が立ち止まっては一旦合流して再び先へ進む、の繰り返し。
それを何回も続け進んで行く内に濃い闇の色に覆われていた空がじわりと白んでくる。
「もう夜が明けてきた」
「早いな……」
今はまだ気付かれていないか、気付かれていたとしてもそこまでの距離は詰められてはいないだろう。しかし朝になれば捜索の手が今より増えて見つかる可能性がある。捕まればその時点で殺されて処分されるだろう。仮に無理矢理連れ戻されてもその後の待遇等目に見えている。
「身を隠す場所を探した方が良いかもな」
先導していた青年は一度ランタンの灯りを消し、後ろの三人へと提案する。
「それが良い」
「すぐ見つかると良いな~」
「でも、壕やトンネルならとっくに埋められてるんじゃないの?」
三人は口々に返答した。
争いの収まらない国内から安全な国外への逃亡を図る人間は決して少なくはないだろう。その手段のひとつとして誰かが秘密裏にトンネルや穴を掘ってある可能性も皆無ではないが、組織側がその可能性を既に潰しているという考えも出来る。
壕についても同様で、身を隠す為ないしは敵側の奇襲の為のものと捉えられればそれも既に潰されているだろう。
「アキの言う事も最もだけど、希望を捨てずに探そう……?」
「?」
「噂をすればってやつだ」
鬱蒼と茂る木々が途切れた場所。崖下の行き止まり。そこに人が通れる程の大きさの穴が開いていた。
「洞窟か?」
彼等は穴の中を覗き込み空気の通り等を確認する。入り口から先は闇に覆われており何があるかも確認出来ない。
「入ってみる?」
「話をした先から見つかるのってなんか怖いけどな〜」
消してしまったランタンのスイッチを入れ直し、穴の少し先を照らすとぼんやりと中の状況がうかがえる。穴の中は道の無い林の中よりは歩きやすそうだった。
「奥がどこまであるかは気になるな。先に進めるなら出口まで行って、潜めそうなら少し居させて貰おうか」
「よーし決まり。兄ちゃん先導よろしく」
「任せて」
「じゃあ、兄貴の後にアキが歩いた方が良いな」
「そうだね〜。そしたらりっちゃん一番後ろね!」
「はいはい」
「……ってリツ兄とシュウ兄が勝手に決めてるけどいいの?」
「まあいいんじゃない?アキは足しんどいなら背負ってあげるよ」
「いやだからそれは遠慮したいって……さっきも……」
入り口付近を見る限り横に並んで歩くのは困難な幅の為彼等は歩く順番を決め洞窟の中へと進んで行く。
洞窟の中を進んで行くと不自然な箇所がいくつもあった。ほとんど一定の幅と高さが保たれた上、地面は整備されているのか岩はおろか石も足にぶつかる事がない。それに分かれ道も存在せずただひたすらにずっと一本道だった。これは人為的に掘られたものに違いないと彼等は緊張する。
「出た瞬間に射殺されなきゃいいけど」
「兄貴怖い事言うなよ……」
その発言も決して冗談ではなく、仮に別の国への国境付近に運良く出られたとしてそれを懸念する国側が何か手段を投じているという可能性は大いにある。国とて無限に避難民を抱えられはしない。あくまで想像ではあるがそれが秘匿事項として実践されていれば彼等も同じ末路を辿る他はない。
「……それでも、引き返せないだろ。今更」
「行ってから考えよ~」
最悪の可能性を頭に浮かべながらも、彼等は前へと進んで行った。
彼等は知らない。
運良く発見し、入って行ったその洞窟の入り口は彼等を招いた数分後に消滅し、既に後戻りは出来なくなってしまったという事を。
その為に彼等の消息は既に誰も追えないという事を。
彼等が着く先が、彼等の知っている世界ではない事を。
今の彼等には知る由もなかった。
ぼちぼちと書きたいものを書き殴っているだけの趣味小説なので読みにくいと思います。
今回三人称ですけど基本は一人称で進めます。