それぞれの能力
三人とも表れたステータスを暫く見ていたが、美姫と正義はともかく、俺のは明らかに変だった。
先ずは正義
上田正義
職業 勇者
人族 LV1
HP2500
MP2500
全武器対応特性 聖剣召喚 聖獣召喚 鑑定 アイテムボックス 全言語対応 聖魔法 雷魔法 転移魔法
次に美姫
朝井美姫
職業 賢者
人族 LV1
HP1200
MP5000
全魔法適性 聖魔道具召喚 聖獣召喚 鑑定 アイテムボックス 全言語対応 ユニーク魔法 転移魔法
そして、俺
伊藤賢司
不死族 LV1
HP
MP
鑑定 アイテムボックス
…ナンジャコレハ
「…ええっと」
美姫が気まずそうに俺に話し掛けてきた。正義は自分のステータスが何なのかよく分からないらしく首を捻っていた。
「ケン君、ケン君のステータスって、これってもしかしなくてもモンスターのじゃない?」
「だよね。人族じゃないし、HPとMPも表示されないし。二人に比べても何の能力も無くて貧弱だし」
「一体どういう事?これって許される事じゃないわ!」
「どうしたんだ美姫?何が有った?」
「酷いのよこれが。ケンがモンスターになってるみたいなの」
「え?いやどう見てもケンはモンスターには見えんぜ?」
「見た目はそうなんだけどステータスはそうなってるの」
「どれどれ…不死族?これがそうか?」
「まぁ二人共それはともかくここから出ないか?魔法使えばいけると思うんだけど」
「転移魔法?けど危なくない?石の中に居るとかなりたくないわ」
「それなら土魔法で穴をあけてみるとか?」
「そうね。試してみる」
美姫は何か呟きながら精神を集中して「ドリルアタック」と叫んだ。すると長さ二メートル位、太さが50センチ位の鈍く光るドリルが激しく回転しながら壁にぶち当たり穴をあけた。外から光が見える。
「さて、ちょっと狭いけど出られそうかな?余り衝撃を与えて崩れたら不味いし」
取り敢えず俺から先に出てみる事にした。
外に出てみると周囲は鬱蒼とした森だった。取り敢えず危険は無さそうなので二人を呼んだ。
「ここは一体何なんだろう?神殿ぽい感じはするけど…滅んでから数百年は経ってる感じだよね?」
「アステカ文明に似た感じはするけど…地球とは思えない感じね」
「それより食べ物と飲料水を早急に探さないとまずい。ケン、何か心当たりないか?」
「水は美姫の魔法で何とかならないか?食物は森だし果実とか木の実でいけるかな?」
「そういえばお弁当作ってきてるから食べる?二人分しかないから少ないけど…」
そう言いながら美姫は弁当と水筒を2つバッグから取り出した。
「あ、俺はいいよ。全然お腹空いてないから」
流石に二人に悪いので俺は断ったのだが、
「いや、遠慮せずに食おうぜ。てか二人だけ食べるなんて有り得んだろ」
「ちょっと待って。これなら問題無いと思うわ」
そう言うと美姫は精神集中しながら何か呟き「コピー」と言った。すると弁当が4つに増えた。
「おお!」「すげぇ」俺と正義が驚いていると
「まだまだいけるわ」と美姫は弁当を増やし続けた。4から8。更に倍、また更に倍と128個迄増やすと
「これで当分の間、大丈夫よね♪ついでに水筒も増やしておきましょう」
と同じく128個迄増やした。
「ミッキーこんなに増やしても食べられないぜ?勿体なくないか?」
「アイテムボックスが有るから平気よ。ステータスと同じく口で言わないと使えないから言ってみて」
「アイテムボックス」
すると目の前に何か黒い穴みたいのが現れた。
「その穴みたいのがアイテムボックス。取り敢えず弁当と水筒をいれましょうか」
俺と正義は弁当と水筒を40ずつ受け取りアイテムボックスに収容した。後は今食べる分を残して美姫が収容した。
「それじゃ、取り敢えず弁当食べようか?食料問題も飲料水問題も取り敢えず解決したみたいだし」
「「意義無し!」」
丁度テーブルと椅子に良い感じの岩が有ったのでそこで食べる事にした。
「取り敢えず、人の住む所、街にでも移動するか?」
「どういう人達が住んでいるか分からないから危険じゃない?偵察はすべきよね?」
等と話しながら正義と美姫は食べていたのだが、俺は愕然としていた。見た目は非常に旨そうに見える弁当なのに全く味が無い。まるで食物サンプルでも食べさせられてる感じなのだ。
「どうしたんだケン?さっきから黙りこんで」
「口にあわなかった?何か嫌いな物入ってたのかな?御免ね」
「いや、違う違う。久々にミッキーの手作り弁当を食べたから感動していただけだよ。それと今後の事も考えてたんだ。今回の転移はどう考えても変だしね」と誤魔化した。
「そう、誰も居ない廃れた遺跡みたいな場所に召喚なんて絶対おかしいわ。しかも結構時間経ってるのに迎えも来ない。召喚に問題が有ったのは間違い無いと思う」
「だよね。流石は賢者様。知識は万全の様ですな」
「…えっと、つまりはどういう事なんだ?ケンとミッキーは分かってるみたいだけど俺はさっぱり何だが」
「勇者様…やっぱり勇者様なんだねぇ…」
「確かに勇者ですな」
「ヲイ、二人でして俺をディスるなよ」
「御免よマサ、こういうお約束って言ってみたくなるものなのさ」
「私も詳細は分からない。けど、状況から推察するに、召喚儀式中に何か不測な事態が生じてその場での召喚は失敗。しかし行われた召喚儀式自体は有効で、時を経て発動した。若しくは隔たれた場所に発動し召喚された。この2つのどちらかだと思う」
「成る程、どちらにしろ移動は慎重にしないと危険だな。現地人との交流も極力避ける方針で行くか」