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喪女と幽霊  作者: 村人えい
1/1

イライラが止まらない

時計の針が5時57分を指した。定時まであと3分。

エクセルだけをそのままに、他に立ち上げていたソフトをゆっくりと閉じていく。

今日こそは絶対に定時であがってやる!だって今日は好きなバンドの新譜が出るから!

残り3分だと思うと、手がつかなくなる。

適当に数字を確認しながら、無駄に何回も保存してみたりする。


~♪


定時のBGMが流れた!!


はやる気持ちを抑えながら、周りの様子を観察する。

よし、みんなも帰るんだな、うんうん、部長も帰り支度を始めたぞ!

私も周りに合わせて帰りの支度を始める。見たくもないエクセルを、またしても無駄に保存をして閉じる。

次の月曜日まで見なくてもいいと思うとせいせいする。

急いで帰ると後ろ指を指されるので、わざとノンビリ帰り支度をしながら誰かが最初に帰るのを待つ。

まず最初に小さい子持ちのA子さんが帰り、次に窓際のおっさんが帰っていた。

さぁ、次は私の番だ。


「お疲れ様で―」

「あ、喪田さん。ちょっといいかな」


終わった。すべて終わった。またしてもだ。先週の金曜日も、先々週の金曜日も、ずーっと前から毎週金曜日はほぼ毎回と言っていいほど、部長に呼び止められる。

しかも決まって私だけのご指名だ。私がキャバ嬢だったら泣いて喜ぶが、ろくに残業代もでない会社でこういう事をされると腹の底から殺意が沸いてくる。


「…なんでしょうか(あぁん、ぶち殺すぞ)」

「定時にごめんねぇ。これ急な仕事でさ、今日中に終わらせてもらいたいんだ」


私のデスクへファイルの山を、ヨタヨタしながら運んできた。ファイルの山はチビな部長の顎まで伸びている。これを今日中にだと?しかも今からだと?絶対に無理。


「無理です、私も今晩は予定がありますので……」

「他に頼める人がいないんだよぉ。だって喪田さん以外みんな家族いるからさ、頼みにくいんだよね」


このチビ部長、未婚の私になら何をさせてもいいと思ってやがる。

だいたいいつも面倒な事は「だって喪田さん独身じゃん」とセクハラ発言をしながら押し付けるのだ。

どうしよう、マジで殺したい。


「すみませんが、今日はどうしても……」

「え、もしかして合コン?大丈夫だよぉ、喪田さんがいたら盛り下がるだけだしさ。それにうちの会社っていま危ないからさぁ~。やっぱり僕としてはそうなった時に生活のある人を残してあげたいからさぁ」

「……」

「分かるよね?はい、じゃぁよろしくね。出来たらファイルは鍵付きのロッカーにしまっておいてね。じゃ、僕は帰るから」


そう言い切るとチビ部長はそそくさと席を後にし、私の頭上の灯り以外をすべて消して出ていった。

私は、鞄を取り出そうと中途半端に空けていた引き出しを、右足で思い切り蹴り上げた。


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