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今日も今日とて  作者: 紫倉鳴海
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普段から使っている食堂の壁際の二人席に向かい合って座る。

日替わり定食は安くて飽きず美味しいと三拍子のつく素晴らしいメニューである、と熱く語っていた友人の勧めで頼んでみたら見事にハマった。

そもそもここの食堂のメニューが美味しすぎるのがいけないのだ、私は悪くない。

目の前で同じく日替わり定食を食べている男子を覗き見る。

覇気のない顔だが体つきはよく、180cmくらいの身長にいわゆる細マッチョと言われる無駄のない筋肉。

元々顔も悪いものでなく良い方に部類し、性格も悪戯好きだがいいやつと周りから評価されている。

新年度に入ってから毎日疲れたようにしているのは中弛みと五月病なのではないかと思われていることを彼は知らないだろう。

視線に気づきこちらを見返してきたため、目をそらして食べ始める。

不思議そうにしていたが、やがて彼も食事に戻る。

視界の中で見知らぬ生徒はチラチラと、友人達はニヤニヤとこちらを見ている気もするが気のせいだろう。

まぁ、それも仕方ないことではある。

実は彼、去年は結構な人気でこうしてだらけていても気になる人が多いのだ。

ムードメーカーとまではいかないが時折笑いを誘い、日頃悪戯をしているわりに勉強運動共にできて何故か教師からの評判も良い。

何とも羨ましいスペックだが、真似しようとはとても思わない。

物事の中心にいるのは苦手で周りからあーだこーだ言うのが気楽なのだ。

考え事をしながらゆっくり食べていたら、いつの間にやら彼は食べ終えていた。

やはり男子は食べるのが早い。

肘をついて外を眺める彼は一体何を想っているのだろう。

命の危機があっても毎日が充実していた日々か、穏やかに笑って過ごしていた日常か。

心ここにあらずといった彼を見ていると頬をつつきたくなるのは悪戯好きが移ったのかもしれない。

遺憾の意を表明したい。

このままでは目の前の男子を見つめ続ける乙女と思われるかもしれない、と後れ馳せながら気づいた彼女は急いで残りを食べ終える。

その後男子の後ろについて食堂から出ていく彼女を見送った彼女の友人達が、既に恋する乙女の話題で盛り上がっていたことを勿論知る由もない。

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