55/55
エピローグ
あれからずいぶんと月日が経った。
彼は何も口にはしなかったけれど、それでもあの別れ際、
私は確かに、あの無骨な唇を通して言葉を受け取った気がした。
―――待っている。
あの言葉は、幻聴だったのだろうか。
弱い私が作り出した、勝手な彼の激励だったのだろうか。
それも、もうすぐわかる。
もしかしたら覚えていないかもしれないけれど。
それでも私は、もうすぐ彼のところに行ける。
報われるとは限らない。
報われない可能性もずいぶんとある。
それでも私は、変わらずに、あの人のことが好きだった――……
前回で本当は完結ですが、予約を失敗して「完結」ではなく「続く」としてしまったので、どうせならともう一編くわえました。
どちらを真の終わりにするのかはお任せします。
あるいはどちらも、真の終わりではないのかもしれません。
物語とはそういうものですよね。
「エピローグ」・・・こういう終わり方も楽しんでいただけたら幸いです。




