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元彼、  作者: みいこ
1/1

プロローグ

忘れられない恋、

あなたにはありますか?

ふわ、っと夢を見た。


いや、夢というより一瞬の空想かもしれない。

とにかく私の目の前にまたあの情景が浮かぶ。

一瞬だけど、

私にはそれが何であるか一瞬で分かった。

ゆっくり目を閉じる。

今度は自分の意思で、その情景をなぞる。


確かにそこにいた。

懐かしい土手にそって続く長い長い道。

頭の上になるのは真っ赤な、血のような赤い空。

地上の物すべてが赤くなる。

その方が都合がいい。私の頬が赤い事がばれにくくなるから。

そんなことを考えて歩く。左手には温かい人間の温度を感じていた。

「心太・・・」

愛おしく彼の名前を呼ぶ。

ゆっくり頭を左に回す。




「れいさん?」

「・・え?なに?」

「もお〜寝てちゃだめじゃないすか。」

「あはは、疲れてたみたい。」


私は乾いた笑顔を作って頭を起こした。

空想の続きは一瞬にしてどこか遠くへ消えていった。

まるで神様が私に見てはいけないと言っているようだ。

ふう、とため息をついて私は遠くを見つめた。

残ったのは左手中の冷たい空気だった。



「れいさんご指名です。」

スタッフの声に頭より先に身体が反応した。

「ハイ。」

すくっとソファを立ち上がり私は着ていた羽織を脱ぐ。

白くて薄いワンピース姿になり、2秒ほど鏡を見つめる。


「よし、今日も綺麗。」


「いいなあ〜れいさんスタイルいいしー美人だしー。」

「ちひろも十分綺麗よ、若いし。」

3週間前から入ってきた新人のみえみえな先輩への媚を軽くかわし私は控え室を出た。



私は「れい」


風俗嬢。





この世界に入ってどれくらい経つだろう。

1年と少しだと思うが、あっという間だった。

この仕事に就いたのには別にお金に困っていたとかそういう理由があったわけではなかった。

なんとなく、興味があったからだ。

色々悪戦苦闘はあったがそれなりに人気も出て常連さんもできた。

そんなこんなでずっとこの仕事を本業として続けてきたというわけだ。


親にはバレていない。ずっと「事務をしている」と言って通している。

友達は元々あまりいないし、店の子とも深い関わりは持たない。

だから続けていけるのだろう。



「風俗嬢に一番必要なのは心の強さだ。」


いつかの店長が言っていた。

その通りだと思った。

世間から白い目で見られる職業を続けるにはなかなか根性がいる。

周りの知り合いに隠しながら仕事をしている人もいるが限界はある。

誰に知られても平然としていられる、誰を失っても笑顔でいられる、

そんな強さが必要なのだ、と店長は言いたかったんだと思う。



私にその強さはあるのだろうか・・?



「れいは大丈夫だ。」

そのときの店長は笑ってそう言ってくれた。





その笑顔に惚れたんだ・・・。



ねえ、覚えてる? ・・・心太・・。







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