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パパの本棚  作者: 御衣黄
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(7)

「ところでカシサスは元気か? この一ヶ月の謹慎で妻孝行もできたであろう」

 ソウリュウのこの発言には様々な意味があった。発した本人にはその自覚はなかったかも知れないが、受け止めたアガスにはそれ相応の理由があった。カシサスは闇属性を持ちながら、若き頃のソウリュウとアガスの恋の争いに巻き込まれていたのだった。彼女は闇属性魔法の使い手あり、勇猛果敢な戦士だった。闇属性魔法とはその属性を持つものオーラのようなものであり、その気に触れた物はその触れた箇所だけ異次元に飛ばされてしまう。つまりこの世界から消失してしまうのである。戦場においては、その気を纏っているだけで、鎧の役割を果たし、また、武器にその気を纏わせることによって、貫通力が格段に上昇する。気の強さは産まれながらの資質によるところが大きい。アガスにもその資質が備わっている。

 武勇では名を馳せたカサシスではあったが、こと恋愛に関しては草原に咲く一輪の花のようにか弱い存在であった。二人の求愛に対してなかなか答を出せなかった。先王の軍との戦いがソウリュウ軍の優位に傾くにつれ、その三角関係も変形していく。ソウリュウが王位についた時、カサシスはアガスの愛を受け入れた。これはカサシスの自発的行動ではなかったかもしれない。ソウリュウを後押しいていた、先王時代の有力貴族の娘を次期王の后候補との噂が立ち始めたからである。そして、ソウリュウは即位後その娘を后として迎えた。そして、王はその後二人の男児を授かった。しかし、アガスとカサシスの間には未だに子ができないでいる。

「妻は相変わらず家にいるより外出しては、子供たちに武芸を教えたり、闇属性魔法の使い方の指導をしております。実際、家事を相手にするより、そのほうが戦果は大きいのですが」

 王はアガスの言葉に彼らしく笑う。

「暇を持て余していたこの一ヶ月の間に、海の見える避暑地にでも行っておればまた、夫婦の絆も強まったであろうに」

「それでは謹慎処分になりません」

「お前は、昔から堅いことしか言わんのだな。その性格は直した方がいいぞ」

 ソウリュウは昔なじみという理由でアガスを側近に据えているのではない。苦言を呈してくれる家臣の少ないことをソウリュウは自覚している。媚びへつらう家臣ばかりをそばに置けば、先王のように国を滅ぼしてしまうことをソウリュウは知っていた。そして、自らが起こした国を未来永劫に栄えさせるためには、その血統も大切であると、その反対に能なき物は人の上に立つことは出来ないのと思いもあった。我が子が王位に付けるのか。そしてそれが我が子にとって幸せであるのだろうかと思案するのであった。

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