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第七話 真理

 マテウスは、己のあごを撫でながら首をひねった。

 少女が消えた。魔族の少女が、忽然と消えたのだ。これ以外の事実も、表現もない。

 しかし、なぜ消えたのか。なぜ紗代がマクシミリアンに告白すると消えたのか。それが疑問だ。

 こういう難しいことは、天才に聞くのが一番手っ取り早い。


「それで、マクシミリアン君としてはどう思われますか? まさかそこの空気が潔く告白したから気持ちよすぎて昇天したとかそういうことなわけあるのか?」


「俺には魔族の気持ちなど分からん。だが、何か心当たりはあるだろう?」


 マクシミリアンの冷徹な視線が、紗代へと向けられる。紗代は戸惑ったように両手の指先を合わせていたが、やがて観念したのか俯いてしゃべり始めた。


「そ、その、マクシミリアン君が初めて私の部屋に来たときのこと……、覚えてる?」


「ああ。怪しげな儀式をやっていたあれか」


 マクシミリアンの言葉に、マテウスはあごの手を止めて眉をひそめた。

 怪しげな儀式。身に覚えがある。マテウスが真理と出会ったときの状況が、まさに怪しげな儀式をする水兵さんとの邂逅だったのだ。


「あれね、どんな願いでも叶うって最近流行ってたおまじないなの。それで……」


 言いにくそうに俯く紗代の指先ちょんちょんが一気に早くなる。顔が少しずつ真っ赤になっていき、瞳は床の上を撫で回すように見ている。


「す、素敵な彼氏が欲しいなって。あと、告白する勇気がほしいとか、願ってみたり」


 マテウスの手に乗っていたあごが、ずるりと落ちた。そのまま、がっくりとうなだれる。

 なんて素敵で自由な願い。年頃の娘ですか、と心のなかで突っ込みを入れ、いや年頃の娘です、と突っ込み返す。

 金持ちになりたいとか、頭よくなりたいとか、誰か生き返らせたいとか、世界征服したいとか、ハーレム作りたいとか、もっと大きな願いがありそうなものだ。そんな素敵願いと二人の異世界召喚に何らかの関係があったら救われない。


「あ、で、でも、本当に叶うって思ってやったわけじゃなくて!」


 紗代はマテウスとマクシミリアンに手のひらを向けて、慌しく振ることで全身を使って否定している。マテウスががっかりしたのを気にしたようだが、もはや何を否定しているのかすら分からない。混乱の極みである。

 そこへ、マクシミリアンが冷や水をかける様に呟いた。


「お前、まじないの意味が分かっているのか?」


「え? おまじないって、儀式とか、願掛けとか、そういう……」


「違うな。まじないは呪いだ。ある意味、魔法よりも厄介だぞ」


「の、呪い……!?」


 真っ赤になっていた紗代の顔が、一気に冷めていく。さらに冷や水を浴びせ続けるように、マクシミリアンは淡々と話し続ける。


「それに、お前の部屋にあったあの本。あれは、人皮装丁本だぞ」


 意味が伝わらなかったのか、紗代は首を傾げている。


「にんぴそうてい?」


「人の皮でできた本のことだ。呪いの力を高めるためにな」


「ひっ!?」


 紗代の顔が、真っ青になった。その細い身体を震わせながら、両腕で自身を抱きしめている。

 違法召喚術が違法とされるのは、総じて人の犠牲を強いる類のものが多いからである。何も、実害がなければ禁止する理由などないのだ。


「天罰も暗黒魔法だからな、どこかでその本と共鳴しているんだろう。だが、一冊で共鳴を起こすほどの呪力があるとは思えんな。願いも強いものではない」


 マクシミリアンの冷たい瞳が、真理を写した。同時に、マテウスも真理を見ざるを得なかった。

 それが人の皮でできたことを知っていたか知っていないか、そんなことは分からない。ただ、身の毛のよだつ物を自室で保管し、呪いの儀式を行っていた。ぞっとしているであろうことは、容易に想像できる。

 真理は体育座りをしながら、足を抱え込んでその中に頭を埋めている。全身を、小刻みに震わせて。

 声をかけるのを普通の人ならはばかるに違いない。もう少し、落ち着いてからと。

 それでも、合理主義の塊のようなマクシミリアンを感化することはできなかったようだ。


「何を願ったか、答えてもらおうか。それが俺たちの標となる」


 真理は沈黙を保ったまま、自分の足に顔をうずめたままだ。マクシミリアンが、催促するように手を真理の肩へと伸ばす。

 その手を、マテウスは思わず止めた。

 マクシミリアンの言っていることは正しい。だが、あんなに強気だった真理が、度重なる心労でこんなに参ってしまっているのだ。

 少しくらい休ませても、少しくらい元の世界へ帰る時期が延びても、いいんじゃないのか。そんな老婆心が起こったのだ。

 いや、老婆心という表現は違うかもしれない。これは、戦友に抱く感情に近い、気遣いのほうがしっくり来る。

 真理は休んだほうがいい。心を整理する時間が必要。マテウスには、そう思えたのだ。


「なあ、天才。俺が思うに、スカートめくりをやめるには反省の時間が足りていないのだ。答えは目の前にあるのだし、もう少しだけこの世界で頭を冷やそうじゃないか。お互いに」


「今なぜ俺を含めた。まあ、お前の言わんとすることも分かるが、少しくらいですまないかもしれない」


「何故だ?」


「紗代の願いは、達成されたと見ていいだろう。だが、俺と紗代の枷は解放されていない。恐らくこっちは……」


「ごめんなさい!!」


 突然の大声に驚いて真理へと視線を戻すと、いつの間にか真理は土下座をしていた。しかし、体の震えは変わらない。


「私、とんでもないことを願ってた! いくらあなたたちでも、これだけは絶対できっこない!」


 懺悔でもするように、真理は顔を伏せたままだった。大げさな、と思い、マテウスは真理の肩へと手を伸ばす。


「おいおい、どうした。大げさだぞ小娘」


「じゃあ、できるの? 私の、私の願いは……!!」


 すっと上がった真理の顔は、涙にぬれていた。目元からはとめどなく雫があふれ出し、頬を伝っている。声は、身体よりもよほど震えている。


「彼を生き返らせること。義仁を生き返らせてよ。何でも叶えてくれるんでしょ!?」


「な、に、生き返らせる……!?」


 マテウスは額に嫌な汗が流れるのを感じた。

 人体の蘇生。それは、魔法を持ってしても不可能なことだった。魔法は風を操ったり、水を操ったりとそれぞれの系統に属するものに何らかの作用を与えるに過ぎない。

 もちろん、傷の治癒には水魔法が効く。だが、一度失われた命は戻らない。傷と命では、比べるべくもない。目標の達成は絶望的だ。

 きっと、紗代が震えていたのも、おぞましい本に気づいただけではなく、元の日本に戻れないことを悟ったからだ。紗代は、真理の願いを既に悟っていたのだろう。

 元の世界へ帰れない。どうしてくれるんだ、と叫びたいところだが、マテウスにはできなかった。

 真理はそれを分かっていて、十分に後悔し、ボロボロだった。これ以上、心に傷を入れる気にはなれなかったのだ。

 マテウスはため息をついたが、同時に微笑を浮かべた。


「まあ、その気持ちは分からんでもないぞ。俺だって、戦友を失う度に思った。何とか生き返らせることはできないか、てな」


 マクシミリアンと紗代も、同意するようにうなずく。


「人体蘇生は、人の夢の一つだからな。やむを得ないだろう」


「私も、今なら分かるよ。もし何でも叶えてくれるっていうなら、恋人を返してくれるっていうなら、そうすると思うから」


 真理は涙を隠すように顔を覆った。それでも、手の合間から涙はこぼれる。


「それに、方法がないわけじゃない」


 真理が、紗代が、マテウスさえも驚いてマクシミリアンを見る。マクシミリアンはいつものように冷静で、冗談を言っているようには見えない。


「かつて現れた邪神は人を生き返らせることができたはずだ」


 はは、と笑いを漏らしたマテウスは、額に手を当てると天を仰いで大きく笑った。

 邪神は、神話に語られる存在。予言の日に現れて、世界を滅ぼすとされる神。その力の一端として、人を蘇生する魔法を持っていたとされている。

 世界を滅ぼす邪なる神には大きな矛盾だが、邪神がかろうじて神たる由縁だ。

 しかし、その存在がこの世界にいるとは思えない。もしいたとして、どうやって言うことを聞いてもらうのか。そんな可能性は笑うしかない。


「あっはっは! 天才、それはとんだ可能性だな! もしいたとして、土下座すれば生き返らせてくれるか?」


「それでは邪神じゃないだろ。ただのいいやつだ」


 その通りだった。邪神は、その力を正しく使わないからこそ邪神なのだ。

 期待半分、不安半分といった様子で、紗代が恐る恐るマクシミリアンへと声をかけた。


「邪神って、強いの? 二人なら、何とかなるんでしょ?」


「無理だな。人間が何人集まれば、とか、魔族が何人集まれば、とかいう話じゃない。例え全世界の人間が一致団結しても、さしたる意味は無い。所詮は神と人、格が違う」


「じゃあ、やっぱり無理じゃないの!!」


 真理の怒鳴り声に驚いて、三人の視線が集まる。あ、と真理は口を抑えると、ごめん、と顔を伏せた。

 恐らく、真理はマクシミリアンが軽い気持ちで可能性があると言ったと思ったのだ。だから、許せなかっただろう。

 マテウスは、真理の肩を軽く叩いた。


「無理じゃないさ。可能性がゼロじゃない限りな」


「え?」


「よーし天才、己の言には責任を持てよ! 何とかして見せちゃってください!」


「まあ、まずは探すところからだな。魔族がいるから、邪法の根源たる邪神がいてもおかしくないはずだ」


「ああ、そうね。いなきゃ話にならんよね。お前冷静すぎんのよね。真理、スマートフォン貸して寄こせ」


 マテウスは、おもむろに真理のスカートのポケットに手を突っ込み、スマートフォンをひったくる。うひゃあ、とスカートに手を突っ込まれたほうが騒いでいるが、全然気にしない。

 むしろ使い方が分からない。問題はそこである。そこだけではないが、そこである。

 マテウスは、使い方の分からないブツを真理の目の前に突きつけた。


「これどうやって使うんだ? 特別に邪神検索の実演を許可してやる」


「もう、やめよう……」


 真理の返答は、か細く、力なかった。


「私のわがままで、もうこれ以上二人が傷つくのは見たくないよ。だって、今度は魔族より強いんでしょ? 手首じゃすまないかもしれないんだよ?」


 マテウスとマクシミリアンは、一時だけ失われた手首を指差して同時に言い放った。


「生えてきた」


「何言ってるの!? 手首無かった時、心臓止まるかと思ったのよ!?」


 真理は右手に拳を作ると、胸に当てた。苦しそうに歯噛みして、ごくりと唾を飲み込んでいる。

 そして、何かを決心するように頷くと、顔に力が満ち溢れた。


「やっぱりやめよう。二人の帰る方法なら、きっと他にもあるから。それを探すのよ」


 真理が強く言い切った瞬間、大地が殴られたように揺れた。

 違う。大地ではない。この建物だけが揺さぶられている。マテウスは、その感覚によく覚えがあった。




 マテウスは、一目散に博物館を飛び出した。追いかけるように後から三人が続く。

 地震のような、しかしそれではない感覚。高等召喚術が使用されたときの感覚だ。ワージャガーも、高等召喚術で召喚された。

 そして、今度召喚された者は、月夜の下で静かに佇んでいた。大きな池の真ん中で、水面に波を立てることなく。

 線の細い、今にも消え去りそうな印象を受ける青年。爽やかな黒い髪はスポーツマンショートに整えられ、細い眉の下には力無い黒い瞳を宿している。

 上下とも黒いスーツを着込んでいて、首元に黒のネクタイが綺麗に結われている。スーツの合間から見えるカッターシャツは、皺一つない白で清潔感にあふれていた。

 しかし、目の前にいるのが人間でないことは確かだった。水面に立つ革靴には一滴の水もつかず、顔は真っ白で生気が無い。例えるならば、精巧な蝋人形のようだ。

 マテウスの額から、嫌な汗が流れる。マテウスが沈黙していたのは、相手の強大な力を前に何も言葉が出なかったからだ。

 別に、まだ蝋人形は力を見せているわけではない。ただ、大地震の前に起こる余震のような、嵐の前の静けさのような、そんな力を感じ取って動けないのだ。

 月下に立ち尽くす蝋人形。他の三人それぞれがどう思っているか分からないが、ただ沈黙が流れた。


「よし、ひと……?」


 沈黙を破ったのは、真理だった。口元に手を当てて、信じられないものを見たかのように瞳を震わせている。

 義仁と呼ばれた蝋人形は、それを肯定するように頷いた。


「久しぶりだね、真理。元気そうでよかった」


「義仁……!」


「さあ、こっちへおいで。君の望む世界で、君が望むように幸せになろう」


 義仁がスッと手を差し出すと、真理は魅入られたように一歩一歩前に進み始めた。夢遊病のようにフラフラとした足取りで、池へと向かっていく。

 真理は、行く先が池であることをまるで見ていないようだ。水面は歩けない。そんな当たり前のことを忘れてしまったらしい。

 マテウスは、真理の腕を掴んでその歩みを止めさせた。


「そんな結論を急がないほうがいいと思うぞ、まだ若いんだから。入水なんて苦しいからやめとけっての」


「入水?」


 足元を見た真理は、慌てて一歩後退した。目の前は既に水辺だったことに、ようやく気がついたようだ。

 マテウスは、義仁を真っ直ぐにらみ付けた。


「で、望む世界ってのはどんなんですか? 二人きりの世界に割って入って恐縮だが、馬に蹴られて死んでやるから教えてくれたまえ」


 義仁の、生気を失った目は動じない。どこか虚空を見るように虚ろな目のままで、返事する。


「俺たちが結ばれる。そんな世界があるとしたら、それは向こうの世界しかないじゃないか」


「つまり、真理を殺すってことか?」


「無粋だね。旅立つんだよ。こっちの世界も悪いところじゃない」


 ふんふん、とマテウスは頷く。

 向こうの世界には行ったことがないので、悪いところなのかどうかはよく分からない。ただ、義仁の様子を見ていると、どうにも楽しくなさそうな場所のような気がする。

 第一、死ななければ行けないというのが問題なのだ。偏見か事実かはさておき、死というのはネガティブなイメージしかない。

 返事など、一つしかありえなかった。


「断る」


「……君が選ぶことじゃないんだよ。俺と真理の問題なんだ」


「こちとらな!」


 マテウスは大きく叫ぶと、憎い敵をこれでもかと言わんばかりに力強く指差した。


「こちとら、貴様ごとき愚民を生き返らせることで合意したばかりだ! 今更中途半端に生き返って話をかき混ぜるんじゃない! 果報は寝て待ってろ!」


「戯言を……。生き返らせる? 俺を? どうやって? 無理に決まっているじゃないか」


 やれやれ、とでも言いたげに、義仁は首を横に振っている。


「真理、分かるだろう? 俺たちが結ばれるためには、あっちの世界に行くしかないんだ。さあ、こっちへ……」


 真理は義仁をじっと見つめる。瞬きを忘れたように、二人はずっと見つめあう。互いを目に焼き付けるように。

 そして、真理はゆっくりと目を閉じた。次いで目を開けると、マテウスの顔を見る。


「ごめん、義仁」


 真理は小さな声で呟くと、頭を下げた。


「義仁は、私のせいで死んじゃったよ。私を庇ったから、私がはしゃぎすぎちゃったから。痛かったよね、車に轢かれるなんて。ごめんなさい」


「いいんだよ。俺がそうしたかったから、そうしたんだ。真理の気にすることじゃない」


「でもね、私、今義仁のために死ねないの。だって、そうしたら、今度はマテウスも死んじゃうから。だから、死ねないの」


 真理は、いつの間にか笑顔で涙を流していた。


「だから、義仁を生き返らせてみせる。待ってて」


 虚ろな義仁の瞳が、突然焦点を得た。真理を怒りの眼差しで睨んだかと思うと、悔しそうに歯をギリギリと鳴らしている。


「俺だけ殺しておいて、自分は助かろうってのか……!?」


 義仁の黒い髪が逆立ち、青く変化していく。黒い瞳は紫色へと変化し、あふれ出る魔力が平静を保っていた水面を大きく揺らす。

 蝋人形のように無表情だった顔は憎しみに彩られた形相へと変貌し、マテウスたちは息を飲んだ。

 魔族。その言葉が、脳裏に浮かぶ。


「どうやら、マスターピースが揃ったようだな」


 沈黙を守っていたマクシミリアンが、呟いた。

 確かに、義仁の力は魔族の少女、紗代よりも格段に強そうだ。

 邪神。人を生き返らせる力を持った、世界を滅ぼす存在。

 マテウスは、それに気づいてマクシミリアンに問い返した。


「あれが邪神か!?」


「いや、違う。しかし、あれは義仁に間違いないんだろう?」


 真理の足は震えていて、今にも泣き崩れそうだ。恋人の豹変を見てしまったのだから、仕方の無いことかもしれない。

 それでも、マクシミリアンの問いに、真理は何とか頷いていた。


「なら、反魂の法の条件は揃った」


「どういうことだ?」


「邪神の使う反魂の法は、古くから人の夢として研究されてきた。結果、人体の生成までは成功している。しかし、魂の定着がうまくいかなかった。そもそも、どうやって魂を持ってくればいいのか、作ればいいのか、結局のところ分からなかったわけだ。だが、そんな正体不明のものが目の前にある。生成した人体にあの魂を突っ込めば、反魂の法は成るはずだ」


「なんだと!?」


 マテウスは、マクシミリアンの胸倉に掴みかかった。

 こういう時のマテウスの頭の回転は尋常ではない。マクシミリアンの言葉の裏に、真実が隠されていることをすぐに見抜いた。


「ていうことは何ですか? 貴様、人体生成の実験してやがったな!?」


「ああ」


「ああ、じゃねっつの!! スカートめくりで天罰なんて割に合わないと思ってたが、やはりそういうことか! 人体生成は禁法だからやっちゃ駄目だって、魔法学校初等部で習ったでしょおお!? ほとんどてめえの(カルマ)のせいで天罰食らったようなもんだろ!? 巻き込まれたのは俺のほうじゃないのか!?」


「それはない」


「どこが!?」


「お前が術式の真理(メイン)で、俺が紗代(サブ)だからな」


「あ、そうね」


 やはり自分が悪かったことを悟ったマテウスは、そっとマクシミリアンの胸倉から手を離した。

 ゴホン、と誤魔化すように咳払いし、魔族と化しつつある義仁と対峙する。


「で、天才。反魂の法を成すにはどうすればいい?」


「反魂の法は、火を持って太陽とし、土を持って大地を成し、水を持って海を作り、風を持って全てを廻す。つまり、四系統の強力な魔力が必要になる」


「じゃあ、今は逃げろってことか?」


「ああ。今のうちに逃げるぞ」


 義仁は、未だ魔族の力を完全に解放できていないのか、真理を睨みつけながらも襲い掛かることが無い。

 逃げるとすれば、この機会を逃して他にはない。よろよろとした足取りの真理を支え、四人はその場を走って離れる。

 真理は博物館を離れる間、しきりに後ろを振り返っていた。

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