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姉ちゃん  作者: さだ 藤
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姉ちゃん?

 

 みなさんこんにちは。


 つい先日、勇者召還されていた国からやっと生まれ故郷に戻ってこれた途端に姉と再会、成り行きで勇者をしていたことがバレ、実の姉に痛い子のように見られた一小市民の一高校生です。


 ちなみにその後帰ってきた他の家族、家は四人家族なので父と母の反応ですが、父は俺を見てゆっくりと頷き、眩しそうに俺を見ていました。


 ……いや、いや、父さん。俺、自分探しの旅には出てないよ。

 子供の成長を目の当たりにした父親に浸らないで下さい。

 実際、勇者業はいろいろあったけどね、あったけど、旅でもあったけれど、あったけれど、自分探しには出かけてないので間違わないで欲しいところです。


 そして母。目をうるうるさせて立派になって、なんて父さんに続かないで下さい。


 違うよ!? 違うからね?


 何だか、家族との温度差に妙に泣きたい気分になりました。


 まぁ、客観的に見て勇者して来ました。と、自分探しの旅して来ました。なら自分探しの方が現実味あるけどね。あるけどさぁ。


 …………なんかね、拗ねたくなりますよ、まる。


 ぐすり。


 そんなこんなで今日も若干ご機嫌斜めな俺ですが、買い物に出ていた母が酷い擦り傷を膝にこさえて帰ってきました。


「ちょっ! 母さん大丈夫!?」


 見事な傷にぎょっとして慌てれば、母はおっとりと笑い片手を頬に寄せ、大丈夫。なんて気丈に返してくれる。

 まぁ、特に大きな傷でも骨折とかの怪我でもないけれど、やっぱりそれなりに見た目はともかく若くはない母の傷には慌ててしまう。


「何処で作って来たのよ、その傷」


 姉ちゃんは特に慌てはせずに、母さんの傷をしっかりと見据えて尋ねれば、眉を下げて母さんは応えた。


「うん。ちょっと転んじゃって」


 しゅんとした様子に姉ちゃんはふ~んといいつつ、座っていたソファーに母さんを座らせて薬箱を取りに傍を離れた。

 俺はその間に母さんの前にしゃがみ、じっくりと傷を見る。


 う~ん、この位なら手慣らしにちょうどいいかも。


 傷を見ながら、アレ? ちょっと遠くから見れば俺今変態チックに見える? なんて思考が働くけれど、そこは家の中だからプライバシーは守られると自身を納得させて、手をにぎにぎ。


「ねぇ、母さん」

「なあに?」


 軽く問いかけるように母さんを呼べば、母さんはほわわんと首を傾げる。


「ちょっと、試してみてもいい?」


 にぎにぎしていた手を、ひらひらと母さんに見せて許可を貰おうとすれば、母さんはにっこり笑って何だかわからないけど、いいわよ。と快く返してくれた。


 それでは遠慮なく、と母さんの膝に掌を数センチ離れた所まで近づけて力を溜めていき、ゆっくりと溜めた力を放出。


「てぃってぃー、治癒まほーう」


 を、実行。


 淡く色づいた力が母さんの膝にできた擦り傷を覆い、しゅわしゅわと小さな音を立てて消えていく。

 消えた力の後には、うっすら浅くなった傷。ところどころに出来たかさぶた。


「あー、こん位かぁ」


 いまいち物足りなかった治癒魔法の効力に眉を下げながら母さんの膝をみていると、姉ちゃんが薬箱を片手に戻ってきていた。


「あんた、何言ってんのよ」


 姉ちゃんの顔は不満げだ。 

 え、やっぱ魔法とか何とかは痛い子認定なんだろうか?

 びくびくしながら姉ちゃんを見ていると、姉ちゃんは邪魔だと俺をどかせて母さんの前に座って、俺に横目を向けてこういった。


「いーい? 傷の時はこうやるの」


 母さんの傷に視線を戻した姉ちゃんは傷に触れないように片手で覆い、ぐるぐると円を描きながら口を開く。


「痛いの痛いのとんでいけー」


 姉ちゃんは真面目な顔つきで、笑う事無くはっきりとした声を部屋に響かせていいきった。

 終わった後の姉ちゃんの指先は、ちゃんとあさっての方向に向いている。


 …………姉ちゃん、純粋なんだね。

 何だか感動めいた感情が胸に溢れて、ほらと言った姉ちゃんの視線の先、母さんの膝に目をやると。



 …………。



「っええええええぇぇぇぇええええ!!」


 俺の治癒魔法で完治には程遠かった傷跡がそっくり無くなり消えていた。


「ちょ、え。え? えぇ?」


 混乱した俺は単語しか口に出来ない。

 母さんは消えた傷跡に目を瞬いて、あらあら。まぁ。と呟き。


「凄いわ、お姉ちゃん。さすがお姉ちゃんね」


 なんてのほほんと笑った。

 いやいや、母さん。それも違うでしょう!?


 まぁね、なんて姉ちゃんもどこか誇らしげにしてないで。


 え、ちょと、何? どういうことですか? お姉さま。




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