表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

“屋根裏ネコ”とネズミのお嫁さん

作者: しろかえで

<その時>


許せないと思った。

命を繋ぐ為では無く、ただの遊びでネズミに爪を牙を掛け転がすコイツらを!!


僕もあちこちやられたがそれよりもっと深い傷を負った4匹は散り散りに逃げ去って

僕の足元には小さく震える毛玉がひとつ。


なんて僕は愚かなんだ!! この子の命が消えようとしているのに!!

僕は母にしてもらったようにこの子をふんわりと咥え、屋根裏に連れ帰った。


<そして>


目が覚めると私はネコさんの腕の中にいた。その“温かな毛布”からそっと抜け出すと体中にネコさんの匂いがして……私はネコさんに救われたのだと知った。

だから私は……少し舌を覗かせて寝入っているネコさんにキスをして囁いた。


「素敵な王子様! あなたの名前を教えてください。そして名も無い私にどうか名前を付けてやって下さい」って


<かわいい>


はなちゃんが僕を起こす時はおひげの先で鼻をくすぐり、くしゃみでぴょこぴょこ動いた僕の耳にトクトク脈打つ胸を押し当てるんだ。

「起きて起きて起きて」って囁きながら



<愛しの>


バトラ様の右瞼には私を守ってくれた時に付けられた爪痕が残っている。

それが切なくて私は傷跡に何度もキスするのだけど……ツレナイ彼はちっとも起きてくれない。

私はイジケ虫を発動させて彼の鼻先を悪戯し、早鐘打つこの胸を耳に押し当てる。

「早く起きて私と遊んで! 私にはあなたほどの時間はないの!! 」と


<花が大好きな>


はなちゃんがこの頃僕を表に誘わない。

一日中僕の懐に抱かれて一日中僕とお昼寝をしている。

そう言えば最近押し当てられる胸の音が「トクントクン」になって来た……


<死から> 


私を救い出し惜しみない愛を注いでくれたあなたにわがままを言います。

どうかその牙で……私に甘い死をお与えください。

どうか私を平らげて

私をあなたの一部にして

ずっとずっと一緒に居させて下さい。



<はなちゃんの願いを>


僕は聞く事ができなかった。

僕は彼女をふんわり咥えて、彼女が好きだったお庭に掘られた穴に降り立ち、更に深く手堀りして彼女をそっとおさめた。



<夢の中なら>


彼女の鼓動を聞けたから、僕はずっと屋根裏に居た。

季節は廻り、屋根裏を訪れた桜の花びらが僕の鼻先をくすぐる。

外を見ると“彼女の上”は満開の桜だった。



<どうかどうか>


僕が死んだら

桜の木の下に埋めて下さい。

そしたら僕達はひとつの桜の精となり

あなたの窓辺に

毎年毎年幸せをお届けします。







ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
メッチャ素敵! 悲しいけれど、それは避けようのない悲しさ。 だから受け入れるしかないけれど、その受け入れ方がとても素敵です! いいな、こういうの。 ホント、君たちの純粋さに、癒されました(^▽^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ