表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

一限目 西方魔術

 それでは私、マリア・ロールベルが西洋魔術について教えます。


 まず呼称について。大陸中央の山脈『中央山脈』以東をアコク地方、以西をミリー地方と呼びます。東方にも魔術はありますが、あまりにも形態が異なることから、区別が必要なときは『西方魔術』と呼称します。


 西方魔術の起こりは、『フィオラ』、そして『トライア教』に由来します。トライア教はミリー地方全体に布教されている多神教で、その聖典は『神の章』と『人の章』に大別されます。

 そしてどちらの章にも、ある花が登場します。私たちの胸元にあるフィオラです。神の章に登場する愛の女神が、世界に種を蒔いたとされています。しかしフィオラには雄しべと雌しべがなく、すでに生えているところの近くから生えてきます。しかも不思議なことに自然には決して枯れません。故にトライア教では聖なる花と定められ、厳重に保護されながら研究が進められています。

 フィオラの生態に関してはまだ不明な点が多く、先ほど言った増殖のメカニズム、自然に枯れないという点に関しては研究が進められています。

 ただ、トライア教の研究機関は秘密主義で、結論が出るまでなかなか成果を報告しません。

 

 フィオラの特異性が発見された発端は、そのトライア教の研究者にあります。当時、トライア教の研究者はその証しとして、胸元にフィオラを挿していました。

 あ、ちなみにトライア教の研究者にも、普通に物理学の研究とかをしている方はいます。

 ある研究者が研究している際、目の前で魔術反応が起きたことで、その性質を発見するに至りました。これが西方魔術における第一起点と言えます。


 この性質、具体的に何が起きているかというと、フィオラを身につけている者が認識した空間内で、物質の分子運動のエネルギーを奪っています。結果として気体が液体、固体へと変化し、奪った熱が火球として現れます。何かが燃えているわけでもないのに火球として現れる理由に関しては、使用者のイメージに従っているとされていますが、詳しいことはわかっていません。人間が認識した物を対象とする必要があるので、基本的には水を対象にしています。


 魔術自体にある程度具体的なイメージが必要なので、誰でもできるわけではないです。また、扱えるエネルギー量も個人差があります。そういう意味では、あくまで特殊技能の範疇であり、誰でも便利に使える仕組みを確立することは難しいでしょう。


 フィオラのもう1つの性質としては、エネルギーの変換です。先ほどのカニストくんの決闘でもわかるように、取り出したエネルギーは熱から別の形に変換することが可能です。一般的には物を動かすことに用いますが、使い方によっては人を動かすことも可能です。この性質に関してはフィオラの研究中に偶発的に見つかったそうですが、詳しくはわかっていません。

 これが第二起点です。これ以降、日常で用いられている様々なエネルギーを魔術で代替できないかという動きが強まり、魔術を工学の側面から捉える動きが強くなっています。ただし先ほども言ったように、どうあっても人の手が必要になりますから。何でもかんでもエネルギー代替できるわけではないです。

 一時は永久機関が作れるのではと騒がれたようですが、やはりそこは直接とは言わないでも人力を介するので、実質不可能に近いです。

 イメージが必要ということに関しては様々な見解があり、まぁ断定できるわけではないことを話しても混乱するのでいったん省きます。


 魔術の発展は工学にも影響を及ぼしています。現状ミリー地方で従来の工学を扱っている大学は少なく、その要因としては、機械化するよりも、魔術師を交代で働かせた方がコストカットできるからです。

 例えば物資運搬を機械化する場合、運搬用の機械と何かしらの動力が必要になります。そして運搬用の機械はその動力装置と燃料を運ぶ必要があります。必要な人材は運転士、燃料補給係、搬入と荷下ろしの要員、定期的な保守作業要員。対して魔術を使用するなら、魔術師が2名いれば、燃料は外気中に含まれるほぼ無限と見なせる水で達成できます。幸いミリー地方は水資源が豊富で、水には困っていません。


 決闘に始まるように、軍事的な意味合いでも取り入れたりはしているようですが、そもそもこの大陸では戦争の火種になるような問題がありませんから、そこまで真剣に取り組んでいる国はありません。


 こちらの文化を理解するという意味では、聖事象の説明も必要なのでしょうね。ミリー地方特有の概念ですが。

 魔術史が始まって以降、稀に科学に反した事象が発生することがあります。基準としてはエネルギー保存則を破っているものを指します。いずれもトライア教の研究機関の研究対象であり、その全てがトライア教の神話における『神の章』に登場する奇跡と酷似していることがわかっています。故にトライア教はこれらの事象、そしてそれを引き起こした存在をそれぞれ、『聖事象』と『聖存在』と定義しています。全てのミリー地方諸国が加盟しているミリー連合は、これらを保護するために全体で共通した内容の『聖法』という法律を整備しています。

 これにおいては先ほどの「聖」の字をつけていい存在の定義、そしてその扱いを定めたものになっています。


 ちなみに聖存在のうち、人間を『聖人』と呼びます。聖人の特徴として、エネルギー保存則を無視した事象を引き起こすことができますが、それは魔術としての話であって、フィオラが無ければそのような現象は引き起こせません。そんな人がいればいろんなことができそうですが、多くの場合、聖人は人類社会のために協力することはありません。子供のように無邪気で、老人のように穏やかです。

 彼らは聖法のもとに主権が保障され、保護されます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ