集会の場所-⑧
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「冬野さん、朝食のお時間です。起きられますか?」
「ん~~はいなのだぁ…」
眠たい目を擦り、身体をゆっくりと起こす…
まだ覚醒していない身体はやたらと重く感じる。
けど、今日はまだ体調が良い方なのだ
「昨日お友達が来られたんですか?」
「……へ?」
ふいな看護婦さんの言葉に間抜けな声が出てしまったのだ。
昨日の事を思い出しながら、
知り合いや家族は来たか思い返すが
誰も来ていない筈だ。
それに昨日はリハビリが辛くて早く寝てしまったのに…
看護婦さんは何を言ってるのだ?と思いながら身体を起こした足元に
可愛らしいプレゼントの箱が乗っていた。
「な、なんなのだこれ…?」
「お友達からのではないんですか?」
看護婦さんが不思議そうにしている。
自分ですら少し困惑している
が、プレゼントのリボンに添えられた青い薔薇で
もしや…まさかと、思った。
「多分、家族からなのだ……」
「冬野さんが寝てる間に置いていかれたんですかね?」
「うん……」
看護婦さんは朝食配膳を横のテーブルに置いてくれて、
気を使ってくれたのか直ぐに
病室から出て行った…
昨日、良い夢を見た気がしたのだ…
きっちゃんが居たような、
きっちゃんとの楽しい思い出が夢に出ていた気がしたのだ…
頬に優しいきっちゃんの優しいぬくもりを感じた。
「起こせなのだ、ばか……」
夢じゃなく、本当に
きっちゃんが来てくれていた?
ボクの寝ている間に?
わざわざプレゼント置いて?
「ばかなのだ……」
白い布団に灰色の沁みがポタポタと出来る。
頬に流れる涙が
風に吹かれて妙に冷たい。
震える手で重たい身体を前に起こして
プレゼントへと手を伸ばす
ふいに懐かしい香りがして
あの時の冬の海での香りを思い出す。
そっと傷が付かないように薔薇をとって
青いリボンを解く。
ピンクの大きな箱の中には沢山の物が
詰め込まれていた…
それはあのロスサントスで見た懐かしい物から
きっちゃんからであろうプレゼント
それはもう沢山の物が……
「起こせなのだ……こんな…」
素敵な物贈ってくれるくらいなら、
起こしてほしかった。
ちゃんと目を見て、お礼を言いたかった…
会いたかった……
イルカのぬいぐるみや、ALLINのモチーフコイン
お薬飲めたわね?や…ALLINの皆の写真…
本当に色んな物がある中で…
きっちゃんからの手紙も入っていた。
そこには、ボクと別れてからの事…
ALLINでの出来事
久々に出会えた友達の事
薬局で働いた事
ここ数か月のきっちゃんの事が沢山書かれていた
そして、
「”早く良くなって帰ってきて”」
手紙の文字が涙で歪む……
「”会いたい”」