6.罠
「ふぅ」
『聖天』。浄化魔法の最上位に位置する広範囲殲滅魔法の一つだ。攻撃性という面では邪な物に抜群の効果を誇り、範囲内の人間に対しては回復効果がある。その分術の行使に莫大な魔力に精密な魔力操作技術が要求され、聖職者としては発動ができれば上級と言われているが、ミーシャは僧侶、治癒術師だ。
「さて、次の階層に進みましょうか。ポーションください」
「う、うん」
「」
目の前で高位の術を披露され、何事もなかったかのように振る舞われては反応に困る。
~第五階層~
「我こそが『常闇の主』だ。矮小なる人間よ、恐れおのの──」
「聖天」
「グギャァァァァァァ!?」
~第六階層~
「私はエルダーリッチーの──」
「聖天」
「ウグァァァァァァァァ!」
~一気に飛んで第八階層~
「余がネクロマンサーの第二の臣下──」
「聖天」
「ウグッアアアア!何をする、まだ自己紹介の途中であろう!消し炭にするぞ汝等!」
「効いてない!?聖天!」
「グォェォォォォォォ!話を!話を聞けぇ!」
「くっ、さらに高位の術を使います、時間稼ぎを!」
「仕切り直して、余がネクロマンサー第二の臣下『召喚者』・・・・の僕のハイリッチーである。汝等、恐怖に狂うことを許可する」
「聖純浄化魔法、『昇華天・・・・・・」
「ちょちょちょ、降参である、降参である!余はしにとうない!するから!最下層まで案内するから!」
「「「・・・・・・」」」
一同は、顔を見合わせ頷いた。
◇◇◇◇
「ここからいけばすぐに最下層であ・・・・です」
たどり着いたのは第三階層の岩陰。
曰く地上へ出る許可が降りた際に、この穴から上位の者は出ていくらしい。
許可とは誰の、とは思うもののこいつは知らなさそうだ。
「ご苦労」
ミーシャ、アレン、サラの順に階段状の通路を下っていく。
どんどん高度が下がっていく。が、一向に辿り着かないどころか出口も見えない。振り返れば寸分変わらぬ景色が広がっている。
何度か壁をぶち破るか、と思ったが十分なスペースがないため威力が足りず、ヒビすら入らない。
「引き返しましょう。騙された可能性が高いです」
「うん、そうだね。サラ、戻る・・・・よ・・・・」
振り返るが、誰もいない。
慌てて正面に視線を戻しても同様だ。
「・・・・え?」
分断されたらしい。
×××××
「引き返しましょう。騙された可能性が高いです」
「うん、そうだね。サラ──」
沈黙。
「どうしました?」
と振り返るも誰もいない。そこで、敵の罠にかかっていたとようやく気づくことができた。
「非常にまずいですね」
×××××
「引き返しましょう。騙された可能性が高いです」
引き返す、という言葉を聞き振り返って安全を確認する。最後尾である自分の当然の責務だ。
「うん、そうだね──」
「?」
突然周囲から音が消え、何事かと振り返る。
3人は、別々の場所に分断された。