妄想の帝国 その83 ニホン国難民特別入管
大災害に見舞われたニホン国を見捨てたニホン国政府与党ジコウ党や財界人他の人々たち。どこの国にも拒否され、なんとか某ミャンミャン国にたどり着いたが…
20XX年、観測史上初の大型台風30連発直撃に、南海トラフ他各種の大地震の頻発、フジサン、アソウサン他火山の未曽有の大噴火に見舞われたニホン国は壊滅状態となった。ネズミどころかゴキブリすら生息困難ではないか、とまでの国土の荒廃に、ジコウ党の政治家たちやら、財界人をはじめ、マスコミやら芸人やら、いわゆるネトキョクウやらがニホン国を捨てて、秘密裏に国外に向かった。必死でニホン国再建に奮闘する野党レイワン、共産ニッポン、いわゆるリベラル勢力らを残して…
そして、
某ミャンミャン国に入管にて
逃げだした国会議員らが入国審査を受けていた。
「うー、ぎゅうぎゅう詰めの船で何日もで、ようやく陸に上がれましたよ、ハギュウダンさん。まったくニホン国の元議員なのになんで、こんなことに。あまりに狭くて議員バッヂも失くすわ、各種証明書類も捨てざるをえなかったし」
「私のような大臣経験者や首相でさえ、あんな船に押し込められたんだ。バーバ君、メイジの党党首とはいえ君らのような新参の野党モドキなら、そうなるだろう。しかし、結局遭難してボートで脱出したが。なんで誰も助けてくれないんだ」
「まあ、国会議員である我々が離れるのは大っぴらにできないんですよ、その職務にあるまじきとか言われて。でも、なんで、この建物に案内されたんでしょうね。同じころにボートでたたどり着いた、子供とかは別のところでしたけど」
「港の職員らしき男に実はニホン国与党のジコウ党の議員なんだぞ、と言ったら、なぜかこちらに通されたんだ…。わかった!やはり国会議員特権とかあるのだろう、公にできないだけで。真っ先に逃げ出したかいがあった。レイワンだの共産ニッポンの奴らのように“国民のために最後まで残るーとか言ってる連中なんて馬鹿だよな、バーバ君。」
「そうですね、ハギュウダンさん。わがメイジの党も国会議員としてニホン国再建のために残れーとかいわれましたが、無駄ですよ、無駄。すでにニホン国はトンキョーもオーサカも国会議事堂も、議員会館も霞が関のビル群も、めぼしい建物は壊れ、さらに重要インフラも請われまくってますし。円はもう価値がない。再建のための工事とかも全部外国の援助ってことで、国外の会社が主流でしょう、我々にうまみは全然ない」
「利権でギャンブルまで誘致しようとしたメイジの党らしいな。手を組んでいた土建屋やら、なんたらコンサルタントなどの無事かは心配じゃないのか」
「利権だけの間柄です。それより、わが身ですよ」
「さすがに自分とこの創設者や元党首すら見捨てるだけあるな。タワマンに取り残されたハシゲン一家、オーサカの庁舎で秘密裏に宴会してたマツイダやらヨシダンらも見殺しだろう」
「あれは仕方ないですよ、さんざ地震が起きたら危ないって言ってたのに避難しないし、それに行政の長なのに、“本当に巨大地震が起きるわけない、連日庁舎に泊まり込みなんて退屈”とかLINEをよこしたぐらいですから」
「確かに自業自得だ、まあ、気が緩んで宴会してた連中はわがジコウ党にもいたからな。そんな奴らは助ける価値無いし」
「ハギュウダンさんのライバルの人たちでしょう、それ」
「まあ、とにかく、我々はなんとかここまでたどり着いたんだ。元国会議員だし、それなりの待遇を」
「そういえば、我々だけ、この建物に通されましたね。貧困の支援団体の奴らとかは別のとこに案内されて。議員だからか…いや、我が党の支援者や、例のジコウ党のSNS工作会社ダダッピの連中も何人かこっちに来てましたよ」
「カルトといわれつつ我が党が手を切らずにいたトン一教会の幹部もいたようだが…きっと、ニホン国の上級とその仲間だけ特別扱いなんだ、そうに違いない」
二人が嬉しそうに話している部屋に
ガチャ
職員らしき浅黒い肌の壮年の男性が入ってきた。
「あー、ニホン国の議員…ジコウ党の…」
「知ってますよ、私はこちらの入管で主任職員をしておりますウニュガンです。こちらはジコウ党のハギュウダンさん。それにメイジの党の党首だったバーバさんでよろしいですか?」
職員の言葉にほっとしたようにうなずく二人。
「そ、そうだ、私は与党ジコウ党で国会の重要な役職を歴任し、大臣経験もー」
「その割には英語も満足に話せないそうですね。ハギュウダンさん」
「えーと、その、ニホンゴお上手ですね、そ、それに私のこともよくご存じのようで」
「もちろん、ニホン国に滞在していましたからね」
「で、では、ニホン国は良い国で、我々がいかに善良かを」
「は?国を見捨てた国会議員が?しかも、我々に対し、ジコウ党らが何をしたか、忘れたというんですか?」
「え?あの、この国に対して、その、…援助が足りませんでした?」
「やっぱり頭悪いんですね、ジコウ党の人は。アナタ方が近年成立させた悪法を知らないとでも、生活保護改悪に、マイマイナンバー制度、極めつけは入管法の改悪です!」
「そ、それはアナタのような、り、立派な職員さんには関係ないんじゃ」
「関係ない?大ありです、ニホン国に行こうとしたすべての外国人に関係あります!ニホンで暮らそうとする人間にもね!だいいち私は難民として行ったんですよ!」
「え、そんな職員さんが?」
「本当に無知なんですね。我が国は数年ほど前まで、酷い政府が支配し、逃げ出す人々が続出。それを金があるから、難民じゃない、手段があるじゃないか、とか難癖つけて、難民申請を認めなかった、さらに暴力も振るわれましたよ、ニホン国のナゴヤンの入管で」
「で、でもニホン国に滞在…」
「リベラルというんですか、そういう難民を助ける人々の助力で何とか生活しようとしてたんです。共産ニッポンとかの議員さんも力になってくれましたが、あの法律のお陰で、ニホン国にもいられなくなってハン国に行きましたよ」
「あ、あんなハン国のほうがいろいろ、その遅れてるし」
「確かにいろいろ違いましたけど、まともに人として扱ってくれましたよ。アナタ方はあの国を馬鹿にしていたが、人権意識はアナタ方なんかよりずっと良かった、少なくともよくしようと努力はしてましたよ、アナタ方のような世界に逆行するような馬鹿な真似はしなかったですよ」
「その、あの、…入管法を変えたのは、その…外国人の盗みとか犯罪もあったし」
「確かにそういう輩も居ましたが、それはニホン国の人間だって同じでしょう。しかも米軍の犯罪にはロクに抗議もしないくせに。だいたいナンタラ研修生とかニホン国に来てくれと言いながら、最低賃金ギリギリしか給与も払わず、待遇も悪い。妊娠するなとか、事業主から性的な関係を強要されるなどのセクシャルハラスメントや殴る暴言、宗教的自由を認めないパワーハラスメントが横行しても改善しなければ、絶望してやけになる人も居るでしょう。罪を犯させているのはアナタ方の失政のせいでしょう」
と流ちょうなニホン語で畳みかける職員ウニュガン。
まともに反論できず、あーあーいうハギュウダンに代わり、今度はバーバが口を開いた。
「それはいいがかりだ!改善を…」
「いうことだけは立派に見えますね、バーバさん。メイジの党の元党首らしいですね、実態は何もしないどころか、改悪ばかり。オーサカの人々の健康他の生活の悪化をみればよーくわかりますよ、先の地震での死亡率はワーストでしたよね、新型肺炎ウイルスの死亡率も」
「そ、それはその」
「まあ、いい。ジコウ党ハギュウダンさんとメイジの党のバーバさんと確認は取れました。ということで、審査完了」
「じゃ、入国できるのか」
「いえ、健康診断を受けてもらって」
「う、受ける、受けた後、この国で暮らせるんだろう」
「いえ、臓器工場行きですかね、健康ならば」
「は?」
「IPS細胞を使って、他人の腎臓や肝臓などの培養器になる、心臓は二つ目をつくりますがね。豚でやってもいいんですが、人間の方が効率がいい。そうでなければ、使える部分だけを取り出して、ミンチにして豚のえさになる、食用、臓器培養用の両方のね。さんざ悪法を作って国を見捨てた議員やそれを助けた連中にふさわしい扱いでしょう?秘密裏に逃げてきたから我が国に入国したっていう事実も簡単に誤魔化せますしねえ」
「そ、そんな酷い」
「ひどい?入管で、ぐるぐる巻きにされて暴行された男性、医師でもないのに勝手に詐病と診断して放置して亡くなった女性、拘束されて殴られた男性、他にも大勢の犠牲者が出ているのを知りながら、入管を罰するどころか咎めもしなかったでしょ」
「一応、その調査を」
「ええ、その結果虐待や暴行の証拠映像がでてきても、ほとんど反応もなし。ニホン国になんとか逃れてきた人に対して気分次第で壊せるおもちゃのような扱いをしてたんですよ、ニホン国の入管。他国、特に非欧米系の人々にたいして差別意識まるだしで、人権意識がまるでない、それが先進国入管の職員、それを許しておいて非人間的ではないと?そのうえ、さらにそれを助長するような悪法を作っておいて、どの口が言います?」
「わ、私たちだけが賛成したわけじゃ」
「そう、だから、ちゃーんと、そういう人間は区分してますよ。その職にふさわしくない差別主義のニホン国入管の職員たちはもちろん、難民認定されていなければニホン国にいるのは犯罪だなどとSNSなどで抜かした奴らも、研修生と称した労働者をこき使った財界人も、わたしたちを支援した人々を逆に貶めたマスコミ連中もですよ。もちろん、法案なんて知りませんでした、私はグルメ好きで犬好きでそういった番組しか見ないでニュースとか、国会とかよくわからなかったんですという民主主義社会の市民にあるまじき無知無恥無関心の自称善良な国民も」
「そ、そこまでしなくても」
「人の命にかかわることに無関心でいるからですよ、無恥も無知も罪になるんです、知ろうとせずに耳をふさいで、自分たちの周りだけ満足すればいいというような輩はすでに地球市民として失格なんですよ、グローバル社会の恩恵を受けてんですから。自分がそういった目に遭うまで、何も気が付かない、自分たちだけは特別と思って人の痛みをおもいやらず、わかるどころか知ろうとしなければ、やがて自分も同じかそれ以上の目に遭う、いやあって当然なんです。自己責任ってやつですよ。バーバさん、ハギュウダンさんアンタがたの大好きな言葉でしょう?」
愕然とする二人。
いつの間にか入ってきた屈強な制服姿の男性たちが二人の両脇に回り、口を布で塞いだ。
「うっ…」
「おしゃべりはこの辺で、健康診断に入りますか。二人とも…不健康そうだな。餌確定ですかね。まあ臓器培養はあまり大っぴらにできない産業だから、餌にして生死不明にするのもいいですが。本当にジコウ党やらメイジとか、こいつらの援者というかお仲間の差別主義者は不健康な奴が多いですよ。SNSで、なんソラ・アンカネとか名乗ってたアレとその信者らはあまりにもあんまりなんで、我が国の海域外で遭難ってことにしましたが、サメも喰わなかったらしいですよねえ。精神の不健康さが体に出たんでしょうかねえ。まあ、いい、まだまだロクデモナイ、元ニホン国民とやらが押し寄せてきますしね」
「そうですね、ウニュガンさん。ニホン国を見捨てた議員とかいうのが、次々にきてます。まあ、たいてい証明書なんて、なくて自己申告ですけどね。証明書なんてなくても、普通入国ぐらいはさせますけど、あのニホン国のジコウ党だのの議員ですからねえ、どこの国も嫌悪と憎悪と軽蔑で受け入れられないどころかいっそ遭難したほうがいいといわれてるぐらいですで。他国ではなんのかんのといって難民申請を受け付けないどころか入国すら断ってますからね、こんな人の権利を踏みにじって平気なくせに、自分がそうなったら助けてくれと恥も外聞もなく頼るくせに過去の反省もしない最低な奴ら」
「我が国は一応、最初は受け入れますからね、この入管までは。最も審査は厳しい。悪法に抵抗したと証明できた人々や難民、移民、貧者の側のNPO団体、あと議員ではレイワンや共産ニッポンの病気などがある人々ですかね。入国し難民として認定されたのは」
「いや、一応こいつらだって入国はしてるでしょう。前のような贅沢でわがままができず、今までの報いを受けることになるだけで」
「まあ、確かに工場だろうと餌になる運命だろうと、この国に上陸はしてますね、確かに。それでは、ご挨拶をようこそ非人道的行為を重ねて挙句の果てに国を捨てた、豚餌さん」
気を失っているハギュウダンたちにあざ笑いながら、入管の職員たちは二人を部屋から連れ出し、ミャンミャン国に入国させた。
どこぞの国ではたどり着いた人々にひどい仕打ちをしたうえ、さらに人権無視を突っ走るような法案を成立させるようです。自分らがメルトダウンした原発やら壊れかけた原発を抱えた地震・台風・噴火などの災害大国だということをすっかり忘れているんでしょうか。自分とこの国から逃げる羽目になったら、どうするんでしょうねえ。