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今回予定していた分が予定よりだらだら長くなったので、2つに分けました。今日、明日とで続けて投稿致します。読んで頂けると嬉しいです。

 

 ルラの1日はいつもだいたい決まっていた。

 朝起きて母屋に行ってご飯をもらい、帰って食べる。昼ご飯はたいてい乳母が持って来てくれて、その時に洗濯物があればお願いした。夕ご飯もまた然り。洗い終わった洗濯物は、翌々日の朝には出来上がっていて、朝ご飯と一緒に持ち帰ることが多かった。そして残りの時間はトゥックと遊んだり、トゥックに勉強を教えてもらったり、もしくは1人でぼんやりしたり····。



▫▫▫▫▫


「ルラも、学校へ行きたいの?」


「え?」


 突然にトゥックの声がして、納屋の2階の窓からぼんやり外を眺めていたルラはハッとした。


 2階といってもこれは本当の2階ではなく、風通し用に高い所に設置された窓を開閉するために作られた小さな足場で、梁に乗せるように取り付けられたただの板だ。それに梯子が掛けられている。


 ルラは、ぶらぶらさせていた足を止めた。


「学校に行く子らを見てるのかと思って。」


 トゥックに言われ、ルラはなんとなくもう一度窓の外を眺めた。窓から見える遠くのあぜ道では、数人の子ども達がじゃれ合いながら歩いていた。「あ、だからか。」と、ルラは納得した。


「ううん、なんとなく見ていただけ。」


「····もしルラが学校へなんか行っちゃったら、僕は寂しくて死んじゃうかもしれないな。」


 横にぺったりとくっついて座っていたトゥックは、自分の手のひらをモジモジ見詰めながら言った。

 ルラも学校へ通えるくらいの年齢ではある

──ただブラウン家の人間がこの事をどう考えているか、もしくは考えてもいないのかは分からないが──


「え?ほんとに?」


「うん。僕死んじゃう。」


 今度は上目遣いにルラを見て、瞳も潤ませた。ぎゅっ、とか、撫で撫でを期待して。

 ところが、トゥックの真剣な表情にルラは思わず吹き出した。


「ふふふ。精霊さんなのに、死ぬことなんてあるの?」


 それにはトゥックはむきになって答えた。


「っあるさ!寂しくて寂しくて、魔力が無くなって、そしたら死んじゃうんだ。」


 魔力が無くなると死んでしまうっていうのは、本当だ。精霊の場合、消えるって表現になるけれど。


「えぇ。それは大変。でもトゥック、私は学校へなんて行かないから大丈夫だよ。」


 トゥックの柔らかい、淡い水色の髪は綿みたいにふわふわで、ルラはそれを優しく撫でた。


「良かった。じゃあ僕はまだ死なないや。」


「うん。···」


 でも、ふと思った。学校かぁ··って。ルラは今までは行きたいだなんて思ったことは1度もなかった。


 考え込んでしまったルラの手を、トゥックはわざとぎゅっと握った。


「···へへ、何して遊ぼっか?」


 ルラがこっちを見たから、トゥックは安心した。


「僕ね、お外で鬼ごっこしたい。」


「いいね。」


 ルラの顔がぱあっと明るくなった。トゥックの鬼ごっこは特別だ。突然つむじ風が踊りだして落ち葉を舞い上げたり、大きな木の枝を揺らしたり、木の実だって落ちてくる。そして、どこに潜んでいるか分からない鬼は、一瞬のうちに目の前に現れたり、遠くにいると思ったらふっ、とルラの髪を掠めて通りすぎたり、とにかく奇想天外なのだ。



「わぁっ、トゥック、ずるーいっ!」


「ずるくなんかないよ。だって僕、精霊だもの。」


 きゃっきゃっとはしゃぐルラを見ながら、トゥックは『この子とずっと一緒にいたいな』なんて、漠然と思うのだった。


ありがとうございます。

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