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彼ピが来る前に

作者: 海水

この作品は

『彼氏が来る前に消さないといけないもの、いったい何?』

というお題に合わせて書いた上記お題を元にした大喜利短編企画参加作品です

「あ、僕だけど、あの、今からそっちに行ってもいいかな。五分くらいで行けると思うんだ、突然ごめんね」


 付き合い始めて数か月の彼ピから突然のコール。初めて彼ピが部屋に来る。

 スマホから聞こえる彼ピの福音も、今の私にとってはそうではない。


 婚期を逃しそうな世の女子なら手ぐすね引いて罠を仕掛けて決して逃がさない完全犯罪級の既成事実を作り上げるのだろう。きっとそうだ。私もそうだ。本当ならば。


 だがしかし、だがしかし。

 今の私の部屋を見せるわけにはいかない。


 私の彼ピは、自慢じゃないけどかわいい。先日一緒に飲み屋にいったときも「オレンジジュースでいい?」って言われちゃったくらいだ。

 ランドセルを背負えば合法ショタのできあがりってくらい。 

 親子ですかって言われた時は殺意を覚えたけど。

 かわいいお子さんですね、じゃねぇぇぇ!!


 だがしかし、だがしかし。

 私は、実はイケオジ専なのだ。


 かわいいは大正義。それは間違いない。彼ピは可愛いそして大正義。

 でも私の部屋には、各種イケオジが勢ぞろいしている。

 ゲームやリアルなイケオジさま方のポスターフィギュアは前菜として抱き枕に等身大パネルもある。

 部屋はイケオジを満喫できる空間にしてあって、私は毎日癒されているわけで。


 だがしかし、だがしかし。

 間違えてほしくないのは、彼ピは純粋に好きなこと。


 理想はイケオジ。現実はkawaii。

 仕方ないじゃない。


 その彼ピが来てくれる。皆の者戦じゃあ!と叫びそうだった。

 彼ピを堕とせる下着は購入済み(使う機会がなかった)

 手料理は、実は得意(ふるまう機会はなかった)

 なんなら速攻で押し倒す。


 だがしかし、だがしかし。

 片づければいいだけな話だけど時間がない。


 タイムリミットは五分。

 カップラーメンのできあがりを待って、食べ終わらないうちに終わっちゃう。

 

 そして今、化粧をしていない。

 まずい。非常にまずい。

 ビッグピンチとはこのことか。


 いっそ開き直って、素の私を見せて、普段とのギャップを狙うか。

 ダメだ、ドン引きされたら終わりだ。


 彼ピはかわいいけど、かわいいといわれるのは好きじゃないみたいで、イケオジに溺れる私だとわかってしまったら……


 ダメだ、もっとダメだ。

 すぐ火急に可能な限り速やかに片付けよう。


 あれもこれもクローゼットに放り込んでおけばいいでしょ。

 女の子の秘密を覗いちゃいけませんって言っておけば見ないでしょ、たぶん。

 よっしゃやるかぁぁぁ!

 

 ――ピンポーン


 時は無情だった。

 片づけも佳境に入ったところだったのに。

 玄関ドアののぞき窓から訪問者を確認。


「は?」


 レンズ越しに見えたのは、超イケオジ。

 思わず目をこする。十回くらいはこすった。

 再び見たら、かわいらしい彼ピの顔が。


「あれ?」


 見間違えだろうか。

 あまりにもイケオジを求めていたから幻視でもしてしまった?


「ちょっと今片づけててー、あと一分まってー」


 落ち着いた声色で、焦りを隠して、部屋に猛ダッシュ。

 とにかく隠した。

 抱き枕は毛布にくるんだ。ベッドインの時には明かりを消せばいいんだ。

 等身大パネルは風呂に入れた。一緒にお風呂作戦は使えなくなったけど、贅沢は言ってられない。


 口紅だけ塗って、ドアの前に。

 深呼吸、いちにっさん。


「ごめんねー部屋が散らかっててー」


 困り顔を作ってドアを開けた瞬間、私はイケオジとかわいい彼ピを見た。


「突然の訪問もうしわけありません、はじめまして、その、息子がお付き合いしている人ができたといってきてまして、一度お会いしてみたくて」


 スーツ姿のイケオジが、その麗しいお口から言霊を吐かれていらっしゃる!

 私の口から魂が出家しそうになった。


「父さん、名乗りもしないでいきなりは失礼だよ!」

「おっといかん、そうだったな。失礼いたしました」


 イケオジとかわいい彼ピはフランクな会話を。

 もしや?


「あの、もしかしたら、御父様でいらっしゃいます?」

「はは、そうです、息子がお世話になっております」


 目じりの皺を色気満載に深くする笑みに意識が飛びそうになった。


「なに息子の彼女に色目使ってるのさー」


 彼ピがふてくされている。

 こっちはかわいい。頬が緩んじゃう。

 なんだここは天国か?


 しかしここで、私はあることに気がついてしまった。


 二人は親子である。

 親子は似る。

 似る。


 かわいい彼ピだけど、もしかしたら、あと十年後くらいには、イケオジの卵になっていて。

 そしてそして、私が嫁いだら、このイケオジが義父さんになるわけで。

 同居なんてした日には毎日そのご尊顔を拝見できて。

 なおかつ、日に日にイケオジに変身していく彼ピをも見れるわけで。


 おっとやばい、よだれが出てきた。




 この後どうなったかはご想像にお任せいたします……

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ぜひぜひ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公のキャラが良かったです! イケオジグッズを隠すところなんて最高ですね! お風呂にある等身大パネルを想像すると笑ってしまいます。 [一言] もし彼氏のお父さんに、この部屋にあるものを見…
2024/02/26 12:42 退会済み
管理
[良い点] 「隠さなきゃいけないもの」がちょっと捻ってあってよかったです。このイケオジだらけの部屋、かなり気になります。見てみたい~! 等身大パネルを風呂に入れたところが最高でした。 (´艸` ) そ…
[良い点] 文の編み方大好きです(`・∀・´) 主人公の思考回路どうなってんだ! 大好き! [気になる点] お泊まりすることになって、父親がお風呂に入った時の反応(*´∀`*)
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