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第8話 情報収集

 翌日は早く寝たおかげか、疲れていたとはいえ早く起きることができた。


「6時か……」


 日本と、というか地球と同じく1日が24時間であるため分かりやすい。ちなみに時計とカレンダーはステータスを開くと端の方に表示される。どういうシステム? 


 昨日は10時には寝たから8時間は熟睡していた。こんなお世辞にも質のいいとは言えないベッドでだ。


「いててててて!!!」


 あ、やばい全身がいてぇ! これってもしかして筋肉痛!? 嘘だろ? もしかしなくても今日スライム狩りに行けない?


 くそ、身体を起こすのがやっとだ。仕方がない、今日は一日街で過ごすか。とはいえ休むつもりはない。情報収集だって立派な仕事だ。


「とりあえず当面はこの街にいるつもりだから他の街のことはいいか。この街周辺のモンスターをメインに調べようかな」


 そういうのを調べるならやはり冒険者ギルドだろうか。ミーナ辺りは教えてくれそうだがここはスマホが無い世界、不便なことに連絡手段がない。


「発達した科学技術は魔法と見分けがつかないって言うけど、魔法を超えちゃってるんだよなぁ」


 それともそういう魔法があったりするのだろうか。瞬間移動とかあったら科学は敗北してしまう。そうか、そういうのも調べないとだな。やることは山積みだ。



 1時間ほど格闘していたら筋肉痛の身体を動かすのにも慣れてきた。少し腰を曲げたりするのでも痛いので姿勢をなるべく変えないようにしながらギルドへ繰り出す。


「またスライムですか……?」


 アリサさんと出会って開口一番がそれだった。美人が変態を見るような目をしている。これはそういう業界の人には多分ご褒美なやつだ。でも残念ながら今日はスライムじゃないんだよね。


「依頼は受けておくんですけど、今日は狩りに行かないで勉強をしようかと思いまして」


「え、狩りに行かないでお勉強するんですか?」


 え? 俺なんだと思われてる? もしかして脳みそスライム野郎とか陰で言われてる? まあ筋肉痛が無ければスライム狩りをしていただろうから完全に間違いだとは言えない。


「図書館とかってないですか?」


「あるわけないじゃないですか……そんなの王都か印刷産業が盛んな学園都市『エスタ』くらいにしかありませんよ」


 あ、あるところにはあるんだ。それに学園都市なんてものもあるんだな。


「じゃあ冒険者の人はどうやってモンスターのこととか勉強するんですか?」


 初見のモンスターとかどうするんだろうか。行き当たりばったりで対策も無しに戦うとか危険すぎる。そういうとアリサさんは1冊のノートを取り出した。


「これです」


「ちょっとお借りしてもいいですか?」


 題名には冒険者ノートと書かれている。拝見させてもらうと、モンスターの見た目や出現した場所など、戦ってみたときの特徴について書かれていた。

 たびたび主観で供述されているところも多々あり面白い。

 例えば、『ロックロック』というモンスターだと……。


『ディザド』の街からさらに西にある『イールポート』に向かっていた時のことだ。あの辺りは雨があまり降らないから植物が育たず、足元はほぼサラサラした砂場なんだ。それだけならまだいいんだが、そこら中にゴツゴツした岩があり地面が凸凹しているせいで馬車が使えない。徒歩での道中、俺たちのパーティは休憩をしようとちょうどいい岩に腰掛けたんだ。そして俺が水を飲もうとボトルを開けた瞬間、座っていた岩が勝手に動き出して俺は水を全部ぶちまけちまった。幸い、水は多めに用意していたから事なきを得たが、あれが最後のボトルだったらと思うと肝が冷えたね。


 何がすごいってロックロックの情報がほぼない。しかし、こういったハプニングを追体験することでエピソードとして記憶に残りやすい。とはいえ今はこの街周囲のモンスター情報だけでいいので全部は読まずに読み飛ばす。


「とりあえずこの辺りのモンスターについては分かったかな」


 スライム、ウルフ、ホーンラビットは俺の活動拠点になりつつある北の草原のメインモンスターだが、草原を抜けた森には『トレント』という木に擬態したモンスターが出るらしい。リーチの長い枝を武器に戦ってくる非常に厄介なモンスターだが、火属性の攻撃にめっぽう弱いそうだ。


 火属性の攻撃が出来ない俺はあまり森に深入りしない方が良さそうだ。


 また、スライムに関する興味深い記述もあった。スライムの中には見た目の違いがあまり分からないが、レアなスライムがいるらしい。スライムにしては素早かった、耐久力があったなどという曖昧なものだが普通のスライムではないのだろう。


 どうしよう、すごくスライム狩りに行きたい。


「ありがとうございました。これお返ししますね」


「はーい。あ、そうだ! 教会に行けば少し本が置いてあるかもしれません。聖職者に関連するものばかりだとは思いますが」


「教会ですね。ありがとうございます」


 教会ねぇ……。どこの世界にも宗教ってあるんだなぁ……。せっかくなのでギルドから出て早速教会を訪ねてみた。


「こんにちは、お祈りですか?」


「あぁいや、悪い。そういうわけじゃないんだ」 


 教会に入ったら若いシスターさんに声をかけられた。言ってから敬虔な信徒さんだとしたら気を悪くするかと思ったが、どうやら俺の心配は杞憂のようだった。


「大丈夫ですよ。冒険者さんも来られますので。転職ボードはあちらになります」


 てんしょく……、転職……転職ボード……!? 魔法とかどうやって使うんだろって思ってたけど教会で転職出来るのか!


「上級職への転職は王都の神殿でないと出来ませんのでご注意くださいね」


 上級職! つまり剣士のさらに上があるってことだよな? そりゃみんな強くなったら王都に行くわ。本の興味よりも転職ボードの興味が完全に勝ってしまった。もはや本はどうでも良くなったので早速転職ボードなるものを使ってみる。


 転職可能職一覧

『剣士』

『戦士』

『武闘家』

『僧侶』

『魔法使い』

『狩人』

『シーフ』

『鍛治師』

『占い師』

『遊び人』

『商人』


 多い多い多い……! ちょっと待って、基本職でこれ!? 上級職があるってことはこれが更に派生していくってことだよな? 魔法使いという文字に惹かれるがグッと我慢する。あと、遊び人は職業なのか?


「とりあえずは剣士レベル30……!」


 俺は魔法使いへの転職の誘惑を断腸の思いで断ち切ると、剣士レベルが30になったら絶対魔法使いになると、そう決意して教会を去った。

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