第7話 生活スタイルの確立
スライムの討伐依頼を再度受注した俺は1700ゴールドと戦利品の剣を手にギルドから出る。ちょっと帯剣しただけで剣豪気分だ。男の子だから仕方ない。
それにしてもアリサさん、変態を見るような目をしてたなぁ……。
スライムを狩るのはやはり一般的ではないらしい。まぁ200匹狩ってもホーンラビットより安いからなぁ。
みんな俺みたいな極貧宿で生活しているわけでもないだろうし、食事や装備のことも考えるとスライムでは厳しいのかもしれない。それにパーティを組んだとなったら尚更だ。
稼ぐ必要がないというのはソロの利点と言えるかもしれない。
ギルドに面した大通りには朝から色々な屋台が並ぶ。俺が昨日から気になっていたのはホーンラビットの焼き串だ。ミーナが美味いと言っていたからな。
「2本、いや3本くれ」
「あいよ! 210ゴールドだが10ゴールドはサービスだ! 200ゴールドでいいぜ!」
気前のいいおっちゃんだ。2本140ゴールドの場合はどうしたんだろうか。キリがいいから150ゴールドにしとくぜ! になるのか? ならないわな。
そんなことを考えていると紙袋に包装されたホーンラビット串が出てきた。1人で3本も持ちきれないことを見越してのことだろう。サービスがいいな。
「ありがとう」
「おう、また来いよ」
店主から紙袋を受け取るや否や、俺はホーンラビット串を1本取り出す。歩きながら食べるのは行儀が悪いが、屋台に関してはこれが醍醐味であり一つのマナーと言えるだろう。周りにも食べ歩きしている通行人の姿を確認しているのでこのまま食べても問題はないだろう。
見た目は大ぶりの焼き鳥と相違ない。ただ焼いただけの肉に塩がまぶしてあるだけのようだが味はどうだ?
「う、うまい!」
下手な味付けがないからこそ素材本来の美味しさが分かる。噛んだ時に溢れ出る肉汁の中に旨味が凝縮されている。これは美味いわ。
飽きるかと思ったが3本ぺろりといけてしまった。しかし、タレでも食いたいところだな。あとそれに米があれば申し分ないんだけど。この辺りでは米はメジャーじゃないのか? 探せば日本と似た食文化のところだってあるかもしれないな。
ま、いずれにせよそのためには強くなって身の安全を確保する必要がある。とりあえず狩って狩って狩りまくろう。
「す、スライム750匹、ウルフ120体の討伐で12300ゴールド……討伐依頼と合わせて12500ゴールドです……」
こいつマジかよって目で見られた。あれから日が暮れるまで昼飯も食べずに狩ったらこうなった。武器の力ってスゲー。
初めはたまにしか1発で倒せなかったウルフが終盤は確実に1撃で倒せるようになった。何故最初1回で倒せたり倒せなかったりしたのかというと、それは会心率が関係しているみたいだった。
剣士レベル3で習得した連続切りは攻撃判定が2回入るため、単純に会心攻撃が出やすいという利点があった。会心攻撃の時はエフェクトがいつもと違うのだが、発生率は体感10%くらいである。なんとか数値を見たいが隠れステータスなのか?
ちなみに今のステータスはこれだ。
テンマ(18):レベル12
体力:50
攻撃:76
防御:45
魔力:20
器用さ:33
精神力:35
素早さ:50
職業:『剣士』 レベル8
称号:『異世界人』
剣士レベルが5に上がった時に攻撃力+5というボーナスが貰えた。攻撃に補正が掛かるということもあって攻撃の伸び代がいい。剣士レベル8になった際に『スラッシュ』というスキルも習得できた。
試しに使ってみたら斬撃が飛んでいった。いよいよファンタジーが増してきた。
「さて、今日は贅沢しようかな」
数日分の収入を得たので資金には余裕が出来た。今日一日美味しいものを食べるくらいは許されるだろう。
さらに嬉しいことに街が運営している大衆浴場があるらしい。これは毎日通うしかないな。
入浴料は500ゴールドと行政が管理している割には少しお高い気がするが、衛生に力を入れるためらしいので仕方がない。
銭湯用品や着替えなどを購入したら5000ゴールド近く飛んでいったがこれも必要経費だ。
銭湯から出ると宿の部屋にすぐ戻って銭湯グッズを置く。
「さっぱりしたなぁ」
やはり風呂はいい。今日一日走り回ってかいた汗を全部洗い流せた。今まで着ていた服は洗濯したてのため水浸しだ。この狭い部屋には衣服をかけれるようなところは2つしかない。
最悪下着は服の上に載せる。明日に乾くだろうか。
「宿を変えることも検討した方がいいかな……」
今日15000ゴールド稼いで、出て行ったお金が8000ゴールドいかないくらいか。うん、あと2000、いや3000ゴールドくらいなら出してもいいかもしれない。
ただ自分で良い宿を探すのも時間がかかりそうだ。こういうのは評判なところはどこか誰かに聞いた方が早い。とはいえ……
「また明日でいいか」
今日はもう疲れた。1日中走り回ったせいで疲れ切っていた俺はベッドに横になった瞬間、泥のように寝た。




