第67話 ぅゎょぅι゛ょっょぃ
すみませんポケモンしてました……
その後、孤児院のシスターにアロエを引き取ることを伝えてからアロエのための服を購入した。
「こ、こんなの勿体ないですよ」
「服は必要だろ」
人間が生きていくうえで欠かせない要素、それは衣食住だ。子供でも聞いたことがあるような有名な言葉だが実はこれは優先度の高い順番で並んでいる。衣類が1番大切というわけだ。いや、服があっても食料が無かったら生きていけないなんて野暮なツッコミは無しだ。
そんな1番大切な服だが、アロエによると孤児院では新品の服なんて着ることは無かったそうだ。機会があったら服も送ってやらんとな。
「着替え良し、食糧良し、馬車良し!」
少し寄り道になってしまったが、これで帝国へ行く準備が整った。最初はミーナに御者を任せてみんなは馬車に乗り込んで行く。あとは休憩するために村に寄る時以外は座っているだけだ。
「ようやく落ち着いたな。じゃ、改めて俺たちのことをアロエに話しておこうかな」
慌ただしくてまともに自己紹介も出来ていなかったからな。いつまでも素性の知らない人というわけにもいかないだろう。まぁ勿体ぶるような情報もないんだけどね。
「もう知ってるとは思うけど俺がテンマ。今御者をしているのがミーナで、こっちの元気なのがフィーネ。で、クールなのがトワだ」
なんて雑な他者紹介だ。自分でも酷いと思ったわ。でもそれ以上に伝えるべきこともないし、気になることがあればアロエに質問してもらおう。
「あの、もしかしなくてもトワさんってトワイライト様ですよね……」
あ、勿体ぶる情報あったわ。
「すごい! よく気付いたね〜」
「以前孤児院にいらしたことがあったので……」
そんな前に一度見ただけの顔を覚えているなんて記憶力が良いんだな。
「ということは怪盗エースっていうのは……」
「うむ……! 素晴らしい洞察力だな!」
おいやめろ俺の黒歴史を掘り起こすな。ミーナも御者台から嬉しそうに返事するんじゃない。深掘りされる前に話題を変えないとな。
「あとクランハウスにはココットっていう妹みたいなのがいるから、また紹介する」
「妹さんですか……」
「そ、可愛い妹だよ〜」
その可愛い妹の威圧でパニック状態に陥ったのは黙っておいてやろう。可愛い妹であることは間違いないからな。
しかしこの妹達がのちに騒動を起こすことになるとは露ほどにも思わなかった。
馬車を数日走らせてようやっと帝国領へと入る。たまに野宿になることもあったのだが、嬉しい誤算だったのはアロエの料理が思いのほか上手だったために道中の食事の質が以前と比べて飛躍的に向上したことだ。そのこともあってこの数日でみんなアロエとの距離が縮まった。
「お兄様、今日は何が食べたいですか?」
俺の名誉が著しく損なわれそうなので弁明しておくがこれは俺の趣味で呼ばせているわけではない。なんならアロエの雇用条件について話していたときにご主人様呼びになりかけたのを制止した結果だ。
「そうだな……せっかく家で飯が食えるわけだし唐揚げとかどうだ?」
美味しいご飯が食べられたのには間違いないが、どうしても食事の内容はスープ系や焼き物に偏っていた。なので今は結構揚げ物欲が高まっている。
「唐揚げですか……でしたらホーンラビットの肉を買って帰りましょう」
いいね。ホーンラビットの肉は鶏もも肉のような感じだから唐揚げにもあいそうだ。いやぁ美味そうだなぁ。
「あー! もう食べたくなってきちゃったよ〜!」
「全くだ。早く肉を買いにいくぞ! いやなんなら出てこい! 買いに行く時間すら惜しい」
ミーナとフィーは飯テロに屈していた。まぁ腹減ってる時に唐揚げの話されたら誰だって食いたくなるわな。なんせ珍しくトワまで「唐揚げ……」とそわそわしている。なんぴとたりとも唐揚げの魔力には逆らえない。
市場でホーンラビットの肉を買ってから久しぶりの我が家兼クランハウスに帰宅する。家のドアを開けたら2階にいたココが天井をにょろんとすり抜けてきてお出迎えしてくれた。
「おかえりなの〜」
「たっだいま〜! ココちゃん寂しく無かった〜?」
ココとフィーが感動の再会と言わんばかりの熱い抱擁を交わしている。俺たちからすればいつもの微笑ましい光景なのだが、初めて見たアロエにはショッキングな光景だったみたいだ。いやそりゃそうか。いつの間にか壁抜けとか当たり前みたいになってたな。
「お、お兄様……! い、今、天井を……」
「あれが前に言った俺たちの妹分のココットだ。一応種族的にはリッチとかいうやつらしい」
モンスターだっていうのもそれこそ壁を通り抜けてるところを見ない限り分からないだろうな。なんならそこら辺でイキってる冒険者なんかとは比べられないくらい強いって言っても信じられないだろうな。
「あれ? お兄ちゃん、その子だあれ?」
「あ、あぁ……この子はだな……」
アロエのことを紹介しようと思ったところ、ふと周囲の空気が冷たくなるのを感じた。この空気のことを知っていたはずなのにすぐに気付くことが出来なかった。
「ひっ……!」
「ココ! やめろ!」
これはココの威圧だ。アロエが青褪めてへたり込むまでこの圧に気がつかないなんてとんだ間抜けだよ。しかし、ココはなんでいきなりこんなことを……。
「お兄ちゃんはその子のことを庇うんだね。ココのことよりもその子の方が大事なんだ」
「誰もそんなことは思ってない!」
「うるさい! お兄ちゃんなんか知らない!」
「おい待てココ!」
俺の静止の声は届かずココは天井をすり抜けて2階へと行ってしまった。ココのことも放っておけないが、今はアロエのメンタルケアが先か。
「ありゃりゃ……大変なことになっちゃったね〜」
「うっ……ぐすっ……お兄様……見ないで……」
どうやらアロエは恐怖のあまりお漏らしをしてしまったらしい。年頃の女の子だ。「気にするな」と言っても気にするだろう。マジマジと見るのも可哀想だ。
「アロエのことは私たちが、テンマはココットのところに行ってやれ」
「すまん……」
俺はなんて無力なんだろうか。




