第6話 異世界生活2日目
翌日、アリサさんに言われた宿で睡眠を取った俺は開門と同時に街を出た。ちなみに宿は本当に寝るためだけの部屋って感じだった。漫画喫茶の個人ブースからパソコンを無くしたものを想像してもらえると分かりやすいかもしれない。
「あー、風呂に入りたい」
100ゴールドを追加で支払ってお湯とタオルは借りれたが、本当にそれだけだ。こんなところで異世界の洗礼を受けた。
「お、スライムだ」
北の草原を散策して数分、今日はじめてのスライムを発見した。どうやらこの辺りからモンスターが出現し始めるみたいだ。
俺はスライムを蹴って倒す。戦闘時間は5秒に満たない。本当に戦闘効率がいい。
スライムは弱いモンスター、いや弱すぎるモンスターだ。俺にとってはその弱すぎるというのは追い風だった。なんでも、弱すぎるが故に狩られにくく討伐される速度よりも増殖していく速度の方が多いようで、それでギルドはスライムの討伐を常設依頼のほかにGランクの依頼にも組み込んでいるらしい。
繁殖力? がどれくらいかはよく分からないが、たしかにウルフを1体見つけるよりスライム3匹を見つける方が早いので経験値効率は圧倒的にいい。なんなら……。
「お! スライムが群れてる!」
このように5匹くらいの群れでいる姿も確認できる。これで経験値10、職業経験値10だ。戦闘時間は10秒に満たない。これ、本気でやり続けたら大変なことになるんじゃないか? とりあえず1時間本気でやろう。
1時間で俺のレベルは2上がった。
テンマ(18):レベル5
体力:30
攻撃:30
防御:26
魔力:11
器用さ:18
精神力:20
素早さ:30
職業:『剣士』 レベル3
称号:『異世界人』
剣士レベルも3に上がった。全然ステータスが上がった感じがしないな。
剣士レベル3の時に連続切りというスキルを習得したが、生憎剣を持っていない。
「スライムは150体くらい狩れたな」
常設依頼で1500ゴールドは確保出来た。とりあえずあと1000ゴールドくらい稼げば1日の食事と宿代を確保できる。
「ホーンラビットいらないな」
そう考えたらホーンラビットを無理に狙う必要はないな。いや、角だけを確保して肉は放置するというのも手か。
2000ゴールドは大きいが、職業経験値30はしょっぱい。それくらいスライム狩りの効率がいい。ウルフをワンパン出来るなら見つけたときに逃げてやり過ごす必要も無くなるのでさらに効率が良くなるだろう。
「うーん、1回試してみようかな」
というか、剣を手に入れればいけるのでは? 蹴りと木の棒で戦ってあんな感じだったんだからまともな剣なら1撃で倒せるんじゃないか?
うーん、今は朝の8時か。とりあえず街に帰って屋台のご飯でも買うかな。一度ギルドで精算して剣のことを聞こう。
「す、スライム150匹……!?」
ギルドに戻って依頼達成の報酬金を貰いに行ったところ、昨日担当してくれたアリサさんがまた俺を担当してくれた。達成の証拠ということだギルドカードを提示したところ、何故か俺は変人を見るような目で見られた。
「あと、Gランクの分もお願いします」
「そ、そうですね。えっと、合計1700ゴールドです。現金でお渡ししますか? ギルドカードに入れますか?」
「現金でお願いします」
昨日宿に行く前に屋台でご飯を買う場合は基本現金オンリーだと知った。なので昨日は食べたかったものが食べられなかったんだ。っと、屋台に行く前にまだ聞くことがあったんだった。
「そういえば剣ってどこで買えますか?」
「剣、ですか」
鍛冶屋とか武器屋があるんだろう。アリサさんはその場所を教えてくれるのかな、と思いきや裏手に行ってしまった。地図か何かを持ってくるのかと思いきや、アリサさんの手には刃渡り50センチほどの剣が握られていた。
「これは鍛冶屋の見習いさんが打ったものなんですけど、商品にならないけど廃棄するほどでもないってことでギルドに提供されたものです。よろしければこれを使ってください」
「いいんですか?」
今の俺は何を使っても攻撃力が上がる状態だから貰えるものは何でもありがたい。驚くことにこれを装備するだけで攻撃のステータスが12上がった。この見習いが作った売り物にならない剣ですら攻撃だけで言えば5レベル分くらい上昇されたんだ。まともな装備を揃えれば10レベル、下手したら20レベル分くらい底上げすることも出来るかもしれない。
そうしたらもっとスライムよりも効率良くレベル上げが出来るか……?
いや、常に1対1ならばいいけど複数体と遭遇する可能性がある。スライムの群れなら嬉しいけど、ウルフの群れを安全に狩れるかと問われたら無理だと思う。
ウルフは単体での強さはGランクからFランクに昇格するための門番的な存在だが、複数体の同時討伐はEランク相当の難易度になるそうだ。
ウルフが1体だった場合は積極的に攻めてもいいだろう。武器も手に入れたしね。まぁでも、とりあえずは……。
「このスライムの討伐依頼をお願いします」
「……」