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第48話 オークションデート

 オークション開催まで2週間をきった。商業ギルドが出したカタログでは俺たちの商品であるダイヤモンドは表紙を飾っていた。


「凄いな。色付きの表紙じゃないか」


 俺たちもカタログを貰ったのだが、今回の目玉商品というに相応しい出来栄えになっていた。その他のページが白黒のイラストや文字だけなのに対して表紙だけはダイヤモンドの輝きを感じさせるようなカラーで描かれていた。


「しかし商業ギルドもえげつないことするよな」


「マーケティングの方法ですか? 流石にこの方法は我々には無理ですね」


 カタログの話ではない。最近になってどこの貴族がダイヤモンドの購入を考えているだの、どこどこの貴族がいくらまで出すだなんて噂が飛び交い始めた。貴族界隈でこういう噂が立つと対立派閥の貴族が煽られて更に金額を跳ね上げる。そこは売り言葉に買い言葉で、今の時点ですでに30億ゴールドまで出すだなんて言ってしまっている。貴族って金持ってんだなぁ……。


「なんか良さげなやつあったら買ってもいいんだぞ?」


 と言ってもほとんどが絵画や骨董品で俺たちには無用の長物だ。これなら装備の一つでも買った方が有意義というものだろう。


「さ、流石に壺の良し悪しは分かんないかな〜」


「うむ……私の目ではこの絵がどう凄いのかも分からん」


「ココもお菓子の方が嬉しいの……」


「そうだね〜。美味しいものの方がいいよね〜」


「「ね〜」」


 うーん、反論できない。言いたいことが良く分かってしまう俺の美術的センスの無さよ。専門家なら芸術的価値とかを教えてあげられるんだろうけど俺には無理だ。


「なんか甘いものでも買いに行くか」


「わーい!」


 まぁこの絵画はどうだとかこの焼物がどうだとか言ってくる女の子嫌だし、こっちの方が断然可愛いからいいか。



 そしてやってきたオークション当日。オークションは商業ギルドが保有している中型のイベントホールで行われることになっていたのだが、参加者が殺到してホールに入りきらないと急遽大型ホールに変更して更に客を絞ったらしい。俺たち出品者は招待状を貰っているため溢れる心配はなく、それどころか休憩するための楽屋まで用意されていた。なので俺とトワは個室でのんびりとオークションが始まるのを待っていた。


「有力貴族には招待状を送っております」


 そう言うのは会場変更の経緯を教えてくれたファゴッドさんだ。流石にそのあたりは抜け目がない。


「では、順番の1つ前までにはここにお戻りになるようお願いいたします。会場の警備は『月と太陽』さんにお任せしておりますので、不審な人物や不審な物を見かけた場合は我々商業ギルドのスタッフか『月と太陽』さんまでお知らせください」


 へぇ、帝都で一番のクランを引っ張ってくるなんて結構お金がかかってそうだな。まぁでもここに金を落としにくるのは要人ばかりだからそりゃ実力派のところに頼むか。

 ちなみに出品者は商品を各々で保管しておかなければならない。まぁ警備がいるとはいえ貴重な品を商業ギルドで預かって何かあったら大変だからね。自分の順番の直前になって商品をファゴッドさんに渡すまでは紛失、盗難に関しては自己責任となる。みんなアイテムボックスのスキルを使えるだろうから嵩張るとかそういう不便さはないんだろうけど。


 ちなみに俺たちは14番手だ。後半戦が始まって徐々に盛り上がってきたところに持ってくるという算段らしい。なのでそれまで3時間ほど時間がある。


「会場の方に行ってみるか?」


「そうですね」


 無為に時間を過ごすよりはいいだろう。ただトワとしてはここでオークションを見ているよりもダンジョンに行きたかったんだろうと思うと申し訳ない気持ちになる。


「トワもダンジョンに行きたかったか?」


 今ここにいないミーナとフィーはギルドからの招待状を貰っていない。一般参加で後から合流するという話もあったが、2人はオークションに興味がないからとダンジョンに行ってしまった。それならレベル上げがしたいトワもダンジョンに行かせてやれば良かったと思わなくもない。そう思ってトワに聞いてみたが、今日はそこまでダンジョンに行きたいという気分でもないらしい。


「せっかくのデートですから……。わたしのような愛想のない女と恋仲と思われるのはお嫌ですか?」


「いや? トワみたいに気品があって素敵な女の子となら大歓迎だよ」


「またそういう歯の浮いたことを……お姉様たちにも似たようなことを仰っているのでは?」


 えぇ!? なんかジト目で責められた。みんなに言ってるかもしれないけど本気で思ってることしか言ってないから。


「余計にタチが悪いです」


 うーん、怒っちゃったかな。まぁ言われてみると俺の発言は軽はずみに聞こえてしまうかもしれない。今後は注意しないとな。


「……では行きましょう」


「ん?」


 俺がどうやって機嫌を取ろうかと悩んでいたらトワの方から手を差し出してきた。なんか出されたからとりあえず握ってみたけどこれってエスコートしろってこと? なんかさっきは怒ってるように見えたけど今はどことなく満足気な表情だ。よく分からん。


 まぁ機嫌が直ったならいいか。女心は難しい。

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