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第45話 トワの決意

「みんなおかえりなの〜!」


 家に帰るとココが出迎えてくれる。ココは地縛霊的な何かなのか屋敷の敷地内から出ることが出来ないので可哀想だがいつも留守番だ。俺たちがいない間の屋敷を守ってくれている。


「何ともなかったか?」


「異常なしなの!」


 ココは見た目は幼い少女だが、その実はAランクモンスターのリッチだ。そこらのゴロツキや盗人程度に遅れをとることはない。


「お掃除もお洗濯も終わったの! お風呂も沸いてるの! みんなで入ってくるといいの!」


 なんだか家政婦みたいになってしまって申し訳ないが、本人が楽しんでやっているみたいだから彼女の自主性に任せている。


「ココット、いつもすまないな」


「??? 好きでやってるから大丈夫なの!」


「偉い! そんな偉いココちゃんにはお菓子を贈呈しよう」


「わーい! フィーネお姉ちゃんありがとうなの!」


 ミーナやフィーにはすでに彼女がモンスターだという意識が無いみたいだ。いの一番に状態異常攻撃にやられていたのにな。ただ、2人を手玉に取れるココにも苦手意識があるみたいだ。


「あぅ……トワお姉ちゃんもおかえりなの」


「ココット、いつもありがとうございます」


 どうやらココはトワが苦手というか怖いらしい。アンデッドに強い白魔道士だから? あとは霊体で隠れてたのを『看破』で見破ったりしたからな。モンスターの本能で天敵だという意識が出てしまうのだろう。


「わたしよりもそのお二人の方がよほど強いはずなのですが……」


「あぅ……ごめんなさいなの……」


「責めてはいませんよ」


 トワが攻撃してこないというのはココも理解しているのだろう。それに苦手意識を克服したいという気持ちは重々感じられる。トワもそれをちゃんと分かっているから大人の対応だ。でも心の内ではちょっと寂しいって思ってるんだろうな。最近になってようやくトワが強がっているだけということに気付いた。


「あの、テンマ様? どうしてわたしの頭を撫でておられるのですか?」


「あ、すまん。完全に無意識だった」


 強がってるのがいじらしくてつい手が出てしまった。子供扱いされて良い気はしないよな。


「いえ。それは良いのですが、わたしのような愛想のない女の頭を撫でても面白くないでしょう。こういうことはお姉様やココットにして差し上げるのがよろしいかと」


 やっぱり怒ってらっしゃる!? 


「トワ、口元が弛んでるぞ」


「はっ……!? べ、別に嫌というわけではありませんから。テンマ様がお望みならばいくらでも撫でていただいて結構です」


 良かった。怒ってなかったみたいだ。


「あーあ、ココはお掃除してからお風呂に行くの。みんな先に行っててなの」


「ん? 掃除は終わったんじゃなかったのか?」


 ふとココの方を見ると、フィーが鼻血を出しながら倒れていてその手元には血文字で可愛と書かれていた。いや怖いよ。



 風呂からあがってあとは就寝というところで俺の部屋がノックされた。


「トワ? どうした?」


 この家で部屋を開ける時に律儀にノックするのはトワ以外いない。じゃあ他の奴らはどうなんだというとミーナは律儀に外から声をかけてくる。なんでノックしないんだと聞いてみたらいるのが分かっているのにノックする必要があるのか? って言っていた。まぁ声かけがあるだけマシか。フィーは勝手に入ってくるしなんなら解錠して部屋主の俺よりも先にいるなんて日常茶飯事だ。そしてココはすり抜けてくる。壁を。


 神妙な顔をしながらトワが入室してくる。なんだろうか、真面目な人が真面目な顔をしているとなんか不安になる。


「お休みのところすみません。少しお願いがあるのですが……」


 なんだお願いか。良かった……俺に対する不平不満とかじゃなくて。危うく3日くらい寝込むところだった。でもお願いって、それはそれで珍しいな。あんまりトワからあれしたいこれしたいっていう要望は無かったからな。なんだろうか、何か買いたいものがあるとか? それならそんな改まって言うことでもないか。まぁトワの望みなら何を言われても叶える心意気だ。


「お願いか。いいよ。何でも言いな」


「はい。1人でダンジョンに行ってきてもいいですか?」


 あー、はいはいダンジョンにね。ん? ダンジョン!? ちょっとこれは詳しく話を聞く必要がありそうだな。何でも言えって言ったけど待て、落ち着いて話し合いをしよう。


「きゅ、きゅきゅ急にどうした!?」


「そんなに動揺されるとは思いませんでした」


 そんな急にどこかの(レベキチ)みたいなこと言い出したらそりゃ動揺するだろ! え、寝ないでレベル上げすんの? マジでやめとけ? 実体験に基づいたアドバイスだけどあれは人間のやる所業じゃないよ。


「で、どうした?」


「はい、父の病気を治したいんです」


「病気? そんなに悪いのか?」


 というか、トワの父親ってまだ40かそこらじゃないか? それにトワの父親ってことはつまりは国王様なわけで、それなら宮廷医とかがいるんじゃないのか? 


「医師が言うには不治の病だそうです。すぐに死ぬことはないそうですが、確実に病魔は進行していくと宣告されています」


「そうか」


 あー、第一王子と第二王子が後継者争いをしていたのはそのせいか。国が好き放題されるくらいには発言力も低下してるんだな。


「今日テンマ様の剣神のスキルを見させていただいて思ったのです。白魔道士の最上級職であれば、不治の病も治せるのではないでしょうか?」


 なるほど。たしかにそれくらいなら出来そうだ。なんせ最上級職は神の領域に至った世界の理すら超越する力だからな。最悪の場合は死者蘇生すらあり得る。


「だからレベルをあげたいと?」


「はい。すみません……王国を捨てたつもりでしたが、父が助かる希望があるのならば試したいとそう思ってしまいました……」


 ん? 王国を捨てた!? そんな覚悟で俺と一緒にいたの!?


「別に王国のことを忘れる必要ないよ。それにトワの父親ならいつかは挨拶に行かなきゃだしな」


「あ、ありがとうございます」


 まぁトワにも強くなってもらうつもりでいたから本人にその意思があるのは良かった。けど、お礼を言うのはまだ早いかな。


「まぁダンジョンに行きたい理由は分かった。だけど1人でダンジョンに行くのは認めない」


「そんな……」


「ダンジョンに行くときは俺かミーナかフィーの誰かと同伴だ。そうだな……150レベルになって『黒魔道士』もレベル30にしてゴーレムに対する攻撃手段が出来たら30階層までだったら1人で行っていいぞ」


 ちょっと過保護すぎるか? 今の俺、彼女の行動を束縛するモラハラ彼氏みたいになってないか? いやでも危険だからな。うん、これくらいは当然だ。


「とりあえず今日は俺がついて行ってやるから」


「ご迷惑ではないですか?」


「俺もレベル上げしたいんだよ」


 トワの300レベルを待つよりも俺が先に『白魔道士』の最上級職になるって手もある。というか病気なら早く治した方が良いからそうした方が良いかもな。

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